地域課題解決のアプリは自分たちで作る ~ 地域活性化、自治体関連ニュースピックアップ ~
今回は「ノーコードツールを活用したアプリ開発」がテーマです。
毎週 1,000本 近く配信される地域活性化、自治体関連のニュースに目を通し、個人的に「これは!」と思ったニュースを要約&解説しています。日々多忙な地域、自治体に関わる皆様の情報収集や施策のヒントになれば幸いです。
今週は以下のニュースに注目。
■非効率だったワクチン配送を、つくば市が変えられたワケ
コロナウイルスのワクチン接種が3回となり、各自治体が接種や廃雄体制の構築作業に追われる中、つくば市は現場のニーズに合わせて正確な情報を確認できるシステムを内製化しました。
従来ワクチン接種や配送に関しては政府が用意しているシステムがありますが、現場の細やかなニーズに対応するには各自治体で独自に管理する必要があるそうです。このような情報管理の際には電話や FAX でやり取りした情報を、Excelで管理することがほとんどです。
今回のつくば市の令でも当初は上記のように管理していたようですが、100を超える複数の医療機関や配送業者と情報をやり取りし、Excelに入力する方法ではやはり限界があり、下記のような課題が発生していました。
これらの課題を解決するため、つくば市は当該業務に「AppSuite」を導入。AppSuiteとは テンプレートから簡単に欲しい機能を備えたアプリを自由なレイアウトで開発できるのが特徴のノーコードツールの一種。プログラムが書けなくてもExcelやPowerPointを作るような形で短時間でアプリを開発することができます。
2か月で「配送システム」と「ワクチン数量管理」の2つのアプリを開発。医療機関が希望するワクチン数や在庫量をアプリ上で関係者がリアルタイムに確認することが可能になりました。結果、別の担当者が ”つきっきり” で作業をしていた業務が1週間に数時間で済むようになったといいます。
■ノーコードとは
つくば市が突発的な業務に対して必要なシステムを迅速に構築できたのはノーコードをうまく活用したからです。ノーコードとはその名の通り、プログラミングをせずにwebサービスやアプリを開発するツールやサービスのことです。
ノーコードでは、すでに用意されている「機能」や「テンプレート」をブロックのように組み合わせることでシステムやアプリを構築します。パワーポイントやエクセルを日常的に使っている方であれば驚くほど簡単に開発が可能です。
以下のように作成できるアプリやシステムの種類にも幅があり、基本機能であればプログラミング不要で開発可能です。またツール同士を連携させることで複雑なシステムも開発することができます。
■地方こそノーコードに注目すべき
昨今どんな事業においても必要とされるデジタル化やDXを進める上での課題として一番多いのが「人材不足」。地方は首都圏よりも人材不足の問題が顕著です。周りに頼れるような企業や人がいる場合はいいですが、いない場合は地域外の企業や人材に業務をアウトソースしなければいけません。
ちょっとしたアプリやシステムを作るのに莫大なお金がかかるだけでなく、地域にお金が落ちなくなり、地域のIT人材はさらに減少していくという事態にも繋がります。
もしも自分でアプリを簡単に開発できるとしたらどんなにいいでしょう。ノーコードは「●●がアプリでできれば…」「●●システムがあったらもっと仕事が楽なのに」といったような要望をかなえてくれるツールです。
「非IT人材」でも迅速にシステムやアプリを開発し、業務改善や事業にすぐに活かすことができます(しかし、そもそも自分がやっている業務の課題に気付けるかは別の問題)
■もしもノーコードが利用できたら
とはいうものの、ITと無縁だった方々にとっては「プログラミング」をせずにアプリを開発できると言われてもどのように活用できるか、どんな成果をもたらしてくれるか想像できない場合が多いのではないでしょうか。
以下に様々な業種でノーコードを活用した例を紹介してみます。
ご自身の業種に近しいところで、気になる取り組みはありましたでしょうか。これらのシステムやアプリが自分で作れるとなるとわくわくしませんか?
もちろんメリット、デメリットはありますが、ノーコードによって、非エンジニアであっても課題解決や価値提供、ビジネスモデル変革の手段としてアプリやシステム導入を以前よりも気軽に検討できるようになってきているのです。
■どれくらい気軽にできるのか
簡単にできるとはいっても色々難しい知識も必要なんでしょ?と思われるかもしれません。確かにいくつかハードルになる部分はありますが、基本的な機能(データの登録、参照、変更、削除)を持つアプリは想像している以上に簡単に作れてしまいます。
例としてノーコードツールの「Glide」で簡単なアプリを作る過程を見てみましょう。避難所状況を一覧化するアプリです。
①元データの用意
GoogleスプレッドシートというExcelとほぼ同等の機能をもつサービスにデータを入れていきます。Excelを普段使っている人からするとこれくらいの作業はなんら問題ないと思います。
②Glideで読み込む
ほとんどのノーコードツールはChrome等のブラウザから操作することができます。Glideにアクセスし、参照するデータを選択する画面で①のスプレッドシートを選択すると….
なんと自動的に列の情報を読み込んでリスト化してくれます!
また①のデータとして「緯度」「経度」も入力しているので、「地図に表示する」ボタンを押すだけで地図へのプロットもしてくれます。
いかがでしょう。データを用意して読み込むだけで、簡単にここまでできてしまいます。心理的なハードルが下がったのではないでしょうか。上記のアプリは下記のURLから体験することができますので気になった方は見てみてください。
■ノーコードの参考情報
概要・ツールの種類
ノーコードのツールについての解説はすでに様々な団体や方々によって記事が書かれていますので紹介は省きますが、私がいつもお世話になっている記事をいくつか貼ります。
コミュニティ
NoCodeCamp
「作る人を全力で応援する」というコンセプトで運営されている日本最大級のノーコードに特化したオンラインサロン。ノーコードは簡単にトライできるといっても躓く部分もあると思います。そういった際に気軽になんでも聞くことができる環境があると効率よく学習できます。
NoCodeCampでは有識者にいつでも気軽に質問や学習ができるので、初めての方でも無理なくノーコード開発を進めることができます。また会員限定の見放題オンライン動画や毎週開催されているイベントで最新技術や情報を得られるなど特典も盛沢山。ノーコードをきちんと勉強してみようかなという人ならば一度入会してみるのがいいと思います。
書籍も出版しており、「基礎から学ぶノーコード開発」は一冊よむだけでGlide,Adalo,Bubbleといった主要ノーコードツールでアプリを開発できるようになります。まずは自分で何かアプリを作ってみたいという方にはおすすめです。
NoCodeNagasaki
「長崎でノーコード開発者をサポートするナレッジベースになる」をミッションに活動しているコミュニティ。普段はネカフェの店長をしながら店舗業務のDXにノーコードを活用する Kotaroさん が主催し、現場や地元の目線で持っている等身大の課題解決をノーコードで実施。ノーコードの最新情報や勉強会、もくもく会等をSlackベースで実施しています。
Kotaroさんは個人事業としてノーコード受託開発やイベント等も手掛ける他、note や Twitter での情報発信も活発で、地域活性化に尽力されている代表例です。
動画
NoCode School
様々なノーコードツールを短時間で分かりやすく解説しているチャンネル。とりあえずノーコードで何ができるか、実際の開発画面や流れがみたいということであれば一度見てみるのがおすすめです。
ノーコード自習室
AppSheet, Glide, Adalo, AirTable, Bubble等、主要なノーコードツールの使い方を解説。このツールを使ってみようというものがあれば「再生リスト」から該当ツールを選んで全てみてみると一通りアプリが開発できるようになっていると思います。
■まとめ
DXがいたるところで叫ばれていますが、何も全員がプログラミングから勉強する必要はありません。ただし、世の中にはどんな技術やサービスが存在していて「何を使えばどんなことができそうか」を知ることが大事だと思っています。
特にお金や人材が首都圏と比較して乏しい地域において、非エンジニアでもwebページやアプリ、システムが簡単に開発できるノーコードツールは課題解決や新たな価値提供のための手段の1つとして大きな可能性を持っていると思います。
地域課題解決のアプリは自分たちで作る。今日から始めてみませんか?
【注意】
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