地域活性化、自治体関連ニュースまとめ(2021/9/13~19)
毎週600~800本に近く配信される地域活性化、自治体関連のニュース(複数メディアから配信される同じ内容のニュース含む)に目を通し、個人的に「これは!」と思ったニュースを要約&解説しています。日々多忙な地域、自治体に関わる皆様の情報収集の一助になれば幸いです。
今週は関係人口や観光関連のニュースを中心にピックアップしました。
■関係人口の可能性をactcoinで見える化
日本のソーシャルアクションを創発する、ソーシャルアクションカンパニーはNTTデータ経営研究所と協働で、関係人口の可視化に取り組む「あなたと地域のつながりプロジェクト」を開始しました。
このプロジェクトでは「地域イベント(オンライン含)への参加」、「SNSでの地域情報の発信」、「地域産品の購入」、「ふるさと納税」等、地域と繋がる日常のアクションに対し actcoin を付与。
地域活性化の重要プレイヤーとして注目される「関係人口」ですが、人によって定義が曖昧(交流以上、定住未満)なところもあり、関係人口とはどんな人たちで、どんな活動をしてくれているのか、今まで見える化されていませんでした。人と地域のつながりの強さを actcoin で評価し、可視化することで地域を取り巻く関係人口のより詳細な実態を把握することができます。
例えば地域への貢献度が高いユーザーに対して、地域の食材や宿泊料金の割引券を送ったり、地域で新たな事業を始める際に、ヒアリングやモニターになってもらったり。今までなんとなくふわっとしたものだった地域におけるファンマーケティングをデータに基づいて効果的に実施したり、関係人口とより強固な関係を築き、保っていくことに活用できるかも知れません。
近いうち、溜まった actcoin は他地域への寄付や活動に利用できるようになるそうです。
■観光DXのカギは「データ利活用」、観光地経営を成功に導くポイント
コロナによる大打撃を受けた観光地業界では、抜本的な経営の転換期を迎えており、各事業者やDMO、観光局の間でDXの重要性が改めて認識されています。その中でも最大のカギであり、第一歩といわれているのが「データの利活用」。世界有数のクラウドサービスを提供する「Salesforce」と地域通貨の発行サービスを手掛ける「pocketchange」が語ったデータの利活用の記事です。
○消耗するプロモーション活動
大々的な広告で集客に成功できるのは知名度の高い観光地です。知名度の低い地域が、なけなしの予算を広告に費やしても埋没してしまうのみ。さらには、無名な観光地は、ネットの検索結果で上位表示もされにくいという状況です。こうした中で無駄に広告やキャンペーンを使ってしまうと、その原資が外部に出ていってしまう一方です。
○変わるプロモーション方法
すでに多くのB2C企業はプロモーションによって強化できる見込み客へのリーチ以上に、消費者の顧客化(ファン化)に圧倒的な力を注ぐようになってきています。つまり、一度顧客になってくれた人をその後のリピーと客にすることにコストをかけているということです。このため、デジタルマーケティング基盤やCRM(Customer Relationship Management:企業と顧客をつなぐ顧客関係性管理ソリューション)の重要性が増してきています。
○CRMとしての地域通貨
こうした背景の中、CRMとして注目されるのが、地域通貨。DMOや自治体が発行した地域通貨やいままで紙で発行していたクーポンをデジタル化することで、様々な取引データを収集。誰が、いつ、どこで、いくら、何に使ったのかを蓄積し、旅行者の行動、購買行動の分析に繋げます。こうした地域通貨の導入や普及に際しては、キャシュバックやクーポン付与等なんらかのインセンティブが必要ですが、それを直接観光客に渡せれば投資が最終的に地域に還元される点もポイントです。
pocketchangeが提供する pokepay はホワイトラベルの地域通貨。地域、施設、イベント、コミュニティー内で使えるオリジナルの地域通貨を発行できます。PayPay等と同じようなQR決済が可能な他、販促機能、会員機能、売上管理、精算機能を備える他、外貨からのチャージや余った地域通貨をSuicaにリチャージできるのも良いですね。
すでに 宮城県塩竈市 や 新潟県佐渡島のDMO で導入されており、佐渡島の例では会員数35,000人を突破し、国内最大級の観光地域通貨およびCRMとして機能しています。
例えばマラソン目的の来訪客に、翌月のイベントや周辺の穴場スポットなどを紹介し、イベント効果を一過性で終わらせない工夫をするなど、イベント起点で参加者に発行した地域通貨を街の商店で使ってもらうことで、イベント参加者による地域貢献度を可視化できる他、ふるさと納税の返礼を地域通貨でおこなったり、訪日客が帰国後に地域通貨を使ったECで日本の物産を購入することも考えられ、可能性は広がるといいます。
○データを集めた後のアクション
蓄積した観光データを活用できていない地域も少なくない。特に、多くの出向者に支えられ、定期的に人員が入れ替わるDMOは、知見もデータも蓄積しづらい傾向にあるようです。データを収集した後は以下が重要。
①データを集めるだけでなく、そこから洞察を見出し、意思決定する
②アクションを実行し、ビジネスとしての結果を確認する
③上記の結果をもとに改善し、さらに精度の良いデータを集める
また導入の際のポイントとして、スモールスタートしてみるのが有効とのこと。大きく構えるとステークホルダーの合意形成が難しくなるので、個別のイベントだけでも地域通貨を導入してみるといったことも pokepay なら可能です。
両社は 10月14日(木)にライブイベント「トラベルボイスLIVE ―観光地経営を成功に導く観光DX、カギはデータ活用」を開催します。詳細は以下から
■おてつたび、尾道市瀬戸田における農繁期の人手不足と観光の閑散期を“若者のお手伝い”で解決
地域の季節的・短期的な人手不足をキッカケに地域の関係人口を創出するマッチングサイト「おてつたび」が、「せとうちファンづくりプロジェクト」と連携し、尾道市瀬戸田地域にて、農業や観光業双方の地域課題を解決するモデルに取り組みます。
おてつたびの利用者は旅行先で地域のお手伝いをし、受け入れ先は報酬や食事、寝床を提供します。サービス利用者は 「交通費&宿泊費の削減、スキル活用、地域との交流の機会」 が得られ、受け入れ先は 「人手不足解消や関係人口増加、地域の魅力の再発見」 に繋がります。先月には受け入れ先が全国47都道府県に拡大する等、今注目のサービスです。リゾートバイトの受け入れ先が豊富になったようなイメージでしょうか。収穫時期や梱包、配送作業等、季節変動性が高く一時的な雇用ニーズが強い、一次産業、観光業の登録が多いです。
おてつたび利用者の9割以上が 「参加地域への印象が良くなった」 と回答しており、これが「せとうちファンづくりプロジェクト」がファン作り施策の1つとしておてつたびに注力している理由かと思います。このプロジェクトは関係人口づくりを掲げ、JR西日本 ✕ 瀬戸内3市によって取り組まれており、内閣府の「関係人口モデル事業」にも採択されています。
今回は瀬戸田地域の柑橘農家が人手不足となる農繁期の11月~2月を支えるため、おてつたびのサービスを活用。参加者はゲストハウスに長期滞在することにより、近隣の土産物屋、飲食店など地域経済の活性化に繋げるようです。今後は実施したモデルを他エリアにも横展開し、せとうち地域のファンづくりを進めると同時に、農繁期の人手不足に対してお手伝いで人が訪れることが常態化していくことを目指していきます。
■渋谷区が、災害情報等の一斉発信を可能にするクラウド自動電話サービス「telmeeもしもし」を導入
東京都渋谷区が、住民向け災害情報通知手段として、クラウド自動電話サービスの「telmeeもしもし」を導入しました。同サービスはPCから入力したテキストデータを送信するだけで、テキスト内容をAIが自動で音声に変換し、指定した電話番号へ一斉送信が可能。また安否確認等、簡単な質問に対する回答を得ることもできます。
少々ややこしい話になりますが、APIで外部サービスと連携も可能で、webサイトに記載されている内容を定期的にチェックして自動発信したり、メールの情報を自動取得して発信するといったことも可能です。
インターネットを使わない層にも「確実に情報を伝える」という目的が大きかったようですが、以下のような住民、職員側双方の課題を解決できます。
【住民側】
・ SNSやwebでの発信では情報を届けられないような人たちがいる
・ メールでの通知は開封率が低い
・ 豪雨や台風等の災害時、外の防災無線が聞こえづらい
【職員側】
・ 職員の電話対応コストが増大している
・ 電話対応している際は、受信対応ができない
既に神戸市や品川区で導入がすすんでおり、以下のような効果があったようです。
・ 1日がかりで対応していた業務が約20分まで短縮!
・ 電話による自動通知で、高齢者にもしっかりと情報を通知
・ 専用電話回線を保有する必要がなくなり、コストを大幅に削減
・ メール配信システムと連携統合し、メールと電話の同時配信も可能に!
最近、災害情報の発信はLINE等のSNSやHPでの発信が増えてきていますが、デジタル庁が掲げる「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」の実現に向けて情報弱者やデジタルデバイドの解消に繋がる丁寧な取り組みも大切ですね。
【注意】
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