今週の地域活性化、自治体関連ニュースまとめ(2021/10/18~24)
毎週600~800本に近く配信される地域活性化、自治体関連のニュースに目を通し、個人的に「これは!」と思ったニュースを要約&解説しています。日々多忙な地域、自治体に関わる皆様の情報収集の一助になれば幸いです。
今週は地域におけるファンづくりやアニメを活用した地域活性化における新たなアプローチ等、観光文脈のニュースを多めにピックアップしました。
■観光庁、「第2のふるさとプロジェクト」を始動、関係人口の創出で地域活性化、有識者会議で検討へ
観光庁が地域のファンやリピーター創出を目的とした 「第2のふるさとづくりプロジェクト」 の検討を開始。人材派遣や地域課題解決に参画する滞在型コンテンツの開発、古民家活用や空き家の再生による滞在環境の整備、観光型MaaSやサブスクによる移動の確保などのプログラムを検討するようです。
「第2のふるさと」や「第2市民構想」等は以下のような自治体で独自の取り組みがなされていましたが、地域や地域人材との関係性づくり(=関係人口の創出)に観光庁自体が本腰をいれて取り組むと宣言したのが注目ポイント。
◯黒川温泉 「第二村民」
https://www.kurokawaonsen.or.jp/dainisonmin/
黒川温泉の「上質な里山の温泉地」づくりに参加するメンバーを「黒川温泉第二村民」として募集。登録すると村民証が発行され、イベントや企画のオンライン会議等に参加するごとに宿泊や買い物で割引されるポイントが付与される。
◯加賀市「e―加賀市民制度」
https://www.city.kaga.ishikawa.jp/ijyu/1/7321.html
個人認証技術を活用し、マイナンバーと紐付けた電子市民制度。観光や関係人口をの文脈だけでなく、ビジネス関連でもメリットを提供。
・滞在日数に応じて、加賀市往来時の宿泊費等を支援
・市民のみを対象としていたセミオンデマンドタクシーの利用
・移住体験プログラムの優先提供
・市の施設であるコワーキングスペースや会議室の無償貸出
・移住時における手続きのワンストップ支援
・法人設立時の手続きを市が支援
取り組みの方向性や具体的な内容については今後実施される有識者会議にて決定される予定ですが、本プロジェクトの詳細についてはスライド1枚で説明が合ったので以下PDFをご確認ください。
https://www.mlit.go.jp/common/001428400.pdf
■地方から生まれたアニメプロジェクト『やくならマグカップも』
アニメ作品を活用した「聖地巡礼」による地域活性化は広く認識されていますが、従来とは全く違った方法でアニメ作品による町おこしを企画している自治体があります。それが岐阜県多治見市。
焼きもののまち「多治見」を舞台に、陶芸に魅せられた女子高生たちの姿を描く『やくならマグカップも』というコミック、アニメ作品を活用したまちづくりに取り組んでいます。
アニメの聖地巡礼による地域活性化の可能性については以前以下の投稿でも触れていますが、これを読んだ方は「たまたまその地域がアニメ作品の舞台に選ばれてラッキーだよなぁ......」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。これは確かにその通りであくまで作品ありきのまちおこしが定番でした。
しかし、多治見市の場合は従来のようなアニメ作品やその制作会社主導の取り組みではなく、自治体や地域企業が主体となってアニメ作品を製作、地域活性化につなげるという新しいアプローチをとっています。
アニメ作品を活用した地域活性化の従来例
主導:アニメ作品、アニメ製作会社
たまたまアニメの舞台となった自治体がアニメ作品を活用して地域活性化を図る。すごく悪く言うと「棚ぼた」的取り組みであり、自治体が自発的に動くことができない。
「やくならマグカップも」を活用した多治見市の例
主導:地域企業および自治体
「街を元気にしよう」という多治見市の呼びかけでプロジェクトが発足。「キャラクターとマンガ(物語)を通じて、街や産業を楽しんでもらおう」という提案から地元IT企業が多治見市やその周辺地域の産業である「美濃焼」の産地を舞台としたフリーコミックを製作。自治体や地域の企業が主体となってコミック、アニメ作品を活用した地域活性化に取り組む新しいアプローチ。
このように企画の初期段階からきちんと自治体も参加して制作された例は殆どありません。多治見市の場合は経済部産業観光課が窓口となり「やくも」に関する作品の制作過程、その後の活用事業まで事業全体のマネジメントを実施。制作サイドからの要望に対してあらゆることに協力したといいます。
例えば方言の指導や監修、焼きもの・陶芸に関する情報提供、施設・専門家とのコーディネート、ロケハンの段取り、聖地への看板設置等。また観光誘致施策として都内でアニメ作品のラッピングカーを運行したりという力の入れよう。公用車を痛車仕様にするなどその徹底ぶりには脱帽です。
しかしアニメ作品の内容には一切関わっていません。あくまで外から最大限の支援に徹し、観光誘致を目的にした自治体が前面に出て宣伝のカラーが強くなりすぎた作品にならないような配慮も行っています。
そんな「やくも」は現在2期が放送中。アニメを活用した新たな取り組み方として今後も注目したいと思います。
■移住&ワーケーションポータルサイト「たびすむ」を運営する株式会社BeA、6,000万円の資金調達を実施
国内外の観光促進事業を手掛ける 株式会社BeA が6,000万円の資金調達を実施しました。今回調達した資金は移住先やワーケーションスポットの検索ができるwebサービス 「たびすむ」 の追加開発やPRに利用され地方創生に貢献します。
同サービスには1,200以上の自治体が掲載されており、検索機能の他、質問に答えていくだけでおすすめの移住、ワーケーション先をリコメンドしてくれる機能などが実装されています。基本属性や移住に関する趣味嗜好のデータを蓄積することで、自治体とユーザー、双方のニーズにあったマッチングを実施することが出来ます。
また性格診断に絡めておすすめのエリア情報が表示される他、そのエリアに存在する地域の重要施設(医療機関、公的機関、学校等)や交通情報、物価経済状況も表示されるため移住やワーケーションを検討している方が必ず抑えておきたい情報を探すことができるので便利ですね。
↑ 質問に答えていくだけで性格診断からオススメの移住、ワーケーション先を診断することができる
↑ 各自治体ごとに移住、ワーケーションに必要となる様々な情報が掲示されている
各地で魅力的な取り組みや誘致が盛んに行われている移住、ワーケーション。あなたに合った地域を探してみてはいかがでしょうか。
■神山まるごと高専(仮称)の開校を、徳島県に所縁のある企業10社が支援
2023年4月の開校を目指す私立高等専門学校「神山まるごと高専(仮称・設置構想中)」の開校に向けて地元企業10社が企業版ふるさと納税を用いた寄付を実施しました。
神山まるごと高専は徳島県山間部の神山町に高等専門学校をつくるというプロジェクト。創業者兼代表取締役社長の寺田親弘氏が発起人となり、2023年の開業を目指し、クラウドファンディング等で準備を進めています。
同校は「モノをつくる力で、コトを起こす人」をコンセプトとし、今をリードする企業の起業家が主体となって「日本を変えていく人材」を育てるため、プログラミングを中心とした「テクノロジー」、UI・UXやアートに関する「デザイン」そして起業家精神を3つの柱とする教育を展開。メルカリ、サイボウズなどの有名企業からの寄付が集まる他、星野リゾートやスノーピークといった名だたる企業の代表が講師を務める予定です。
「神山から未来のシリコンバレーが生まれていく」そんな壮大なプロジェクトが始まろうとしています。
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