今週の地域活性化、自治体関連ニュースまとめ(2021/08/09~15)
私がお世話になっている雲仙市では記録的な豪雨による土砂災害により、犠牲者、重傷者、行方不明者が出ており、今も決死の人命救助が続いています。一刻も早い捜索と被害からの回復を願いつつ、自身ができることを模索しております。写真は土砂災害が発生した付近の名湯小地獄温泉。
今週は注目ニュースが多くワーケーション、DMO、地域のコミュニティやファンづくり等、ボリューミーな内容になっております。
■「ワーケーション」が自治体によるアイデア合戦の主戦場に。あの手この手の誘致施策の行方は。
テレワークの定着とともに、旅行先でレジャーを楽しみながら働く新たな働き方として「ワーケーション」への注目が高まっており、各自治体は地域活性化の新たな起爆剤としてアイデア合戦を繰り広げています。この記事では「ワーケーション」で注目を浴びている各地の取り組みをまとめています。下記に各地名と取り組みの要約を書き出しました。
青森市
移住支援の一環としてワーケーションに取り組む。クリエーターやクラフト作家など情報発信力を持つ人々へのアプローチを強め「青森ファンの拡大」にも力をいれている。
京都府舞鶴市
深刻な後継者問題解決の糸口にするため、民間と協力し、農業体験や歴史的建造物での学びを軸にしたワーケーション誘致を進める。ワーケーション支援ための施設の利用者が市内でIT企業を創業したほか、大手製造業などのサテライトオフィス誘致にも成功するなど実績を重ねている。
高知県
自然や食などの資源を生かした県ならではのワーケーション確立に向け、県内9エリアでモデルプランを作成。大手企業等39社にモデルプランを提案している。
鹿児島県錦江町
町全体を実証フィールドとして展開。廃校を活用した施設を拠点に、企業のリモートワークでの利用や、自治体と市民がコミュニケーションをとり、地域課題を明確にする用途で利用されている。
沖縄県
ワーケーション施設の設置を促進する補助制度を展開。21年度は35件を採択し、2次公募を実施中。菓子メーカーの御菓子御殿が恩納村の直営店にワーキングスペースを設ける等この制度を活用が進んでいる。
日々自治体関連のニュースをウォッチしてると、本当に各地で色々なワーケーション施設の整備等が進んでおり、環境が整ってきているのを実感します。
ただこの時、気をつけたいのが成功事例をそのまま真似すること。その地にわざわざ行くための理由がないと「箱根や軽井沢でいいじゃん...」となってしまうでしょう。
大枚はたいてワーケーション施設のような「ハコ」を作り、ほぼすべての地域で同じようなネタを選んでワーケーションに取り組むような横並び行動になってしまうと、中身がスカスカなキャラの 「カワ」 を被って地域をPRするような 「〇〇キャラブーム」 のように息の続かない施策になってしまうかもしれません。
「他ではやっていない。しかし自分達の地域だけでできること」をワーケーション施策のコンテンツとしてきちんと整備していくことが強く求められています。
■観光地域で好循環を生む6つのステージ、カナダの地域観光局(DMO)が実践するカスタマージャーニーの事例から学ぶ
観光カスタマージャーニーの各フェーズでDMOが果たすべき役割について、カナダのキャンベルリバー観光局のソーシャルメディア活用事例が紹介されています。SNS等の情報発信チャネルを持つDMOは要注目です。
カスタマージャーニーとはターゲット顧客の動き(行動・思考・感情)を時系列で見える化したもの。この動きを見える化することで、各フェーズにおける顧客に対する適切な施策やコミュニケーションを実施できるようになります。日本でよく言われる「旅マエ、旅ナカ、旅アト」のようなものです。
カナダは世界トップレベルの観光マーケティングを実施する国として有名で、例えばカナダ観光局のwebサイトを開くとその国や言語に合わせて自国の特色ある観光スポットを紹介してくれたりする他、日本人芸能人を使った日本人目線の観光地の紹介、カナダドルの円との比較レートなど、内容まで日本人向けになっているそう。
詳細は記事を確認いただくとして各フェーズにおける施策の要約は以下の通りです(実際の画像等が掲載されているので、元記事がわかりやすいかと思います)※要約には一部個人的解釈が含まれます
1.認知(想像):旅行先について知るフェーズ
観光地の魅力や認知度を高めてくれるようなSNSの投稿やブログ、メディアに対しては必ずDMOとして反応(コメントやいいね)し、対話が生まれるようにする。クオリティの高いものについては利用許諾を得て、DMO直営のチャネルからも発信し、認知を高める。
2.検討(想像):具体的な旅行先として検討するフェーズ
前フェーズで旅行者に有力な旅行先として認知された場合、次に必要となるのは旅行先で体験できる具体的な情報を画像や動画を通してきちんと伝えること。現地で楽しめる体験の具体的なインスピレーションを与え、選択してもらう。
3.意図(計画):スケジュール、予算を検討するフェーズ
DMOとして取り組むべき主要なフェーズ。主に旅行者の教育を目的として、旅の日程や宿泊地、現地の見どころ、行き方など、最高の滞在を実現するために必要なことなら何でも情報提供する。
大自然に包まれた小さな町であるキャンベルリバーの場合は車の利用が必須のためInstagram上で行き方や来る途中までの見どころを紹介したストーリーを作成。その他、主要なルートのドライブ時間等を掲載。これは旅行者の利便性向上だけでなく、地名度が低いエリアへの誘導や混雑期における旅行先の分散にも役立つ。
4.購買(予約):航空券、ホテル、レストラン、アクティビティ等を予約&購入するフェーズ
DMO直営のチャネル等で地元の事業者(レストランやホテル、ツアーやアクティビティ会社)をタグ付けした投稿をすることで地域の観光事業をオンラインでサポート。
5.訪問(体験):旅行地を訪れ、アクティビティ等を体験するフェーズ
現地での体験をできる限りベストなものにし、地域をずっと推してくれるファンを創出するための施策を展開。キャンベルリバーの場合は、オンライン経由で旅行者の話を聞いたり、質問に答えたり、普段よりも少し丁寧に対応することでコアなファンを獲得。また現地で直接旅行者のニーズを聞けるよう担当(観光局や案内所等)とソーシャルメディア対応が意見交換しながら訪問客のニーズに細かく対応することも重要。
6.追体験(シェア):旅行での思い出をSNSでシェアしたり、余韻に浸る、思い出すフェーズ
友人や家族にお土産話をするように「楽しかった旅の話をもっとしたい」という衝動は、人々をつなぐだけでなく、観光地を支えてくれる強力な支持を生み出す。訪問客がソーシャルメディアに投稿したストーリーや投稿の中で良いものがあれば拡散する(このようにシェアした投稿が再び誰かの「認知」へと繋がっていく)
まとめとして、キャンベルリバーがソーシャルメディア戦略で重視しているのは以下のようなことです。
・活気にあふれた地域コミュニティらしさを打ち出すこと
・人々がシェアしたり、お互いに交流する場を作りフレンドリーであること
・訪問客を歓迎し、旅行に関することなら何でも答え、お手伝いすること
・地域事業者を知ること
結局DMOにとって重要なことは、旅行客との関係性を強固なものにしつつ、自分たちの観光地のストーリーを語っていくことであると言えます。
■旅人ワーカーマッチングサイト『SAGOJO』が「秩父ファンクラブ」を開始
課題を持つ企業や自治体とスキルのある旅人をマッチングするWebサービス、旅人ワーカー求人サイト『SAGOJO』。旅行者は旅先で「シゴト」をすることで、クライアント(企業・地域)から「リターン」を受け取りながら旅することができます。
仕事内容は、記事執筆や写真・動画撮影、営業代行、SNSプロモーション、現地調査など様々。2021年6月現在、約21,000名の旅人が登録しており、企業や自治体の課題に合わせ、最適な企画とスキルのある旅人のマッチングを行っています。
登録している旅人自体も個性的で「メディアで1000万PV、Youtubeチャンネル登録者数10万人」といったインフルエンサー的な人材や、編集長経験があったり、海外政府とのパイプを構築している人材等、優秀なビジネススキルを持った人材も多く登録しています。利用企業としてはじゃらん、HIS、asoview、ことりっぷ等有名企業が並びます。
さながらスポット利用できる地域おこし協力隊のような仕組みでしょうか。企画や組織の立ち上げ時に特定のスキルを持った人材が必要な時や、コンサル、営業、販路開拓等、自治体でもこういった人材をうまく活用できれば大きな成果に繋がりそうです。
さてそんなSAGOJOと秩父市移住相談センターが共同で立ち上げた「秩父ファンクラブ」は、『秩父市が大好き!』『秩父市に興味がある!』『移住や多拠点居住を考えている』という人々が県内外問わず集まり、関係人口としての縁を継続的に深めるために、定期的な交流イベントを開催して地元民との”繋がり”を築いていくプロジェクト。
このプロジェクトの中でファンたちによる「新しい秩父グルメメニューの開発」「秩父移住パンフレットの作成」「SNSでの発信」「秩父の暮らしを体感する現地イベントの開催」等が実現しています。活動の様子は、旅 × シゴトの未来を考える「すごい旅研究所」で公開されています。
地域との継続的な関係性を強めるためには地域の「ファン」になってもらうことが重要です。継続的な交流を促したり、些細なことでも「自分が地域に関わっている感」を醸成することができれば「秩父ファンクラブ」で実現された施策のように、自発的に地域をよりよくしていこうという取り組みが生まれていくでしょう。
ファンマーケティングに関しては先週の私の記事でも触れているので是非お目通しください。
■シェアビレッジ株式会社、コミュニティ立ち上げ期の負荷を減らす「#Share Villageはじめてキャンペーン」を開始
コミュニティの立ち上げ~運用の支援サービスを展開する「Share Village」がコミュニティの立ち上げサポートの為、企画ブレスト、メンバー募集ページ作成代行、コミュニティ広報支援・運営支援を専門チームが無料提供する「#Share Villageはじめてキャンペーン」を開始しました。実施期間は2021年12月末まで。
「Share Village」ではコミュニティ企画~運営の各フェーズをサポートする以下のようなサービスを提供しています。
1.コミュニティをつくる
・ コミュニティのランディングページ作成
・ メンバーの募集・管理
・ 継続課金による会員制コミュニティを作成可能な決済機能
・ コミュニティコインの発行
2.コミュニティに参加・運営する
・ 集めたお金の収支を透明化する「コミュニティウォレット」
・ コインの利用、贈与
・ コミュニティメンバーが交流できるスレッド
3.コミュニティ同士での交流を広げる(他コミュニティと繋がる)
・ コミュニティ間交流スレッド
・ コミュニティ間でのコイン利用、贈与
・ 姉妹コミュニティ提携
例えば秋田県五城目町で展開するコミュニティ 「aeru satoyama」 の場合、 「楽しく伝統が次世代につながる里山」を作ることを掲げ、里山を中心とした活動を実施していくためにShare Villageを活用。
コミュニティメンバーは 「山守会員」 として、里山づくりや、里山の恵みを活用した商品、アクティビティ開発等で共創します。また山守の特典として、月1回山菜、日本酒、野菜やお米が届けられる他、古民家を改装した民泊施設の宿泊権利、アクティビティへの参加や会員証等が得られます。月額15,000円の会員費用は里山の維持管理、特典配布費等に利用されるそう。
世界中が繋がる大きな社会の中で、より共感でき、自分らしく生きられる小さなコミュニティが注目されています。本サービスの具体的な利用例は Share Village のページトップから各コミュニティを覗いてもらうとわかりやすいかと思います。
印象としてはより蜜に関わることのできるクラウドファンディングのようなイメージ。クラウドファンディングで資金を集めた後、熱心な人をこのようなコミュニティプラットフォームに参加させ、コミュニティや事業を盛り上げていくといった使い方もできそうです。
さらなるコミュニティの増加を目的にコミュニティ立ち上げ~運用支援を無料で実施するこのキャンペーン。自身のコミュニティや地域のファンクラブを作りたい方は要注目です。