英語で働くのなんて(そんなに)怖くない! 2. 詳細篇
前回の概要篇はこちら
今回は↑で挙げた項目の詳細について書いていきます。自分に向けた覚書の要素が強いので長くなりますがご容赦を。
1. 英語力100点/仕事力70点より、英語力70点/仕事力100点の方がはるかに大事
- 大抵のプロジェクトはそうだと思いますが、最初のアウトライン段階というか、アイディア出しでは色々話し合うことが大事で、スピーキングがつたない僕は発言量も少なくダメダメで、毎回「これだけは言おう!」と準備していく→議論が違う方に進んで何も言えない…という大変さでした。このフェーズではコミュニケーション能力が大事で、英語力が仕事に直結する。しかし後半戦、成果物の内容を固めていく段階に入るとスキルの重要性が相対的に高くなってくる。
- 職種によるけれど、英語でのコミュニケーション能力は結局は「手段」。役立つスキルがあればその欠点はカバーできるうえに、スキルそれ自体がコミュニケーション手段にもなることもある。
- ちょっと極端な例ですが、例えばレストランを経営してて、ホールスタッフを雇おうというとき、新卒日本人大学生と、東南アジアの留学生(日本語はまあまあ話せるけど敬語があやしい)からどっちか選べ、と言われれば誰でも日本人を選ぶと思う。しかしこの留学生、実は故国ではレストランオーナーの息子で、高校生の頃から店を手伝っており、ホールの動きに慣れ、料理の下ごしらえもできる……のだとしたら、今度はかなりの人が彼を選ぶだろう。厨房スタッフ専属ということならなおさら、「実際にやってみせる」=スキルでコミュニケーションが取れる。
- 例えばデザインや絵、特別な知識、プログラム、ソフトウェアの使用スキルなど、「やってみる」「作ってみる」ことがそのままコミュニケーションになるような場合、英語力の足りない部分を、作業や成果そのものがそのままカバーしてくれる。過程においても、例えばデザインなら、参考になりそうな画像を見せて「こういう感じ? それともこっち?」「こっちに寄せて、でも詳細はこっち……」などと「画像でコミュニケーション」することができる。
- というわけで、話は「いかに英語力を高めるか」ではなく、「この仕事で役立つ私のスキルをいかに(限定された英語力で)伝えるか」「そのスキルをいかにコミュニケーションに役立てるか」へとシフトする。巧い方法があるなら、英語力のハードルは下がるし、そこで「やっぱり英語力も必要」となっても、「どんな英語力が?」とカテゴリを絞り込めるはず。
- とはいえこの話、「英語力50点」では厳しい、というのも同時にあると思います。例えば会議で何を言ってるか全く分からなければ仕事が始められない。後述する自動翻訳機能は補助としては良いけれど、完全に頼るのはかなり危ないし、時間が取られるのでパフォーマンスが下がる(重要)この点から考えると、現行の表現重視の日本の英語教育とはずれますが、まず❶リスニング、これに続いて ❷リーディング 能力が「英語で働く」という目的については重要に思います。ライティングは自動翻訳で、スピーキングは上に書いたようにスキルによって補えるからです。Zoomの音声自動翻訳などもありますが、そっちに完全に頼るのはまだ危険という印象。
- それでも、「英語力より仕事力」は今回痛感しました。極論ですが、実感としては、「TOEIC 990点満点で円滑なコミュニケーションはできるけど、特筆するスキル無し」の人よりも、「TOEIC 800点程度だけど、自動翻訳などツールを駆使してコミュニケーションし、特別なスキルを持っている人」を目指す方が遥かに大事だと思います。(TOEICは英語力にはそこまで直結しないので目安ですが)
2. 自分の使えるスキルを伝える
- これは別に英語に限らないと思うんですが、特に新しいチームで仕事をする場合、相手はこっちが何が得意か、何ができるか、というのをよく分かってません。デザイナーとかプログラマーとかで雇われた場合ならまだしも、ふわっとした担当だとなおさら。なので、自分の得意なことを伝えていく……というだけではやっぱりふわっとしてるので、もっと具体的に、「このソフト使える!」というのをアピールしていくのが良さそう。例えばAdobeのソフト、例えばエクセル、例えばプログラム。別にプログラミング仕事でなくても、例えば僕は以前翻訳のお仕事で、簡易誤字チェッカを作って役立てたことがあります。(一般のスペルチェック機能で拾えないような、地名や人名の大文字漏れチェックする特化型)今回のお仕事では、Adobeの各種ソフトの経験が役立ちました。これも「イラレ使える?」と聞かれるのを待つのでなく、「こないだ話してたあれ、ちょっとイラレで作ってみました~」みたいに絡めて出しておくとチャンスを逃さない。
- ただし、これも英語に限りませんが、この方法は諸刃の剣というやつで……これをやった結果、僕は新しい仕事を次々と振られ、長時間労働の超長期連勤へと突入していくのです……ご利用は計画的に。そうなってしまったら、後述する「見える化」を上手く使って仕事量をコントロールしよう。
3. 先にちょっと作る
- 個人的には最重要項目。会議での発言が低い+理解がおぼつかないでいると、こっちは間違ったことをしてないか不安、向こうも「あいつちゃんと理解してるのかな?」と不安になる。でも会議の度に「私がやるべきことはこれこれこれですか?」と確認し、「そうそう、これとこれとこれ…」と説明してもらうのは相手の時間を奪うし、そんな時間的余裕が無いことも多い。本当に全く分からないときは聞くべきだけど、ある程度話を理解出来てるなら(おそらくこの辺りが仕事を引き受けられるラインかもしれない)この方法が役に立つ。
- これも仕事の内容によってかなり変わってしまうので、一概には言えないのだけど、例えばホームページのデザインを頼まれてるとしたら、僕はまずお絵かきソフトでも良いし、なんなら手書きでも良いので仮にモックアップというかプロトタイプ的なものを作って持って行く。30分とか1時間とか区切って時間をかけすぎないように、でもポイントを確認できるようなものにしておくのが良い。こうしておくと、「ここは良いけど、こっちはもっとこうして…」など具体的なコメントがもらえるので、相手の時間リソースを割かないし、具体的な指摘になるのでこっちもぐっと理解しやすい。
- こっちの英語力だけの問題ではないんだけど、日本語が「言葉の裏を読む=推測する」言語であるのと同様に、英語でも似たようなことはよくあり、これは勉強で理解するのは中々難しい。今回は、例えば接続詞をちょっと間違えて受け取ったことで、必要のない仕事に数時間費やしたこともあったので反省もこめて。例えばこうした例の場合、相手の書き方が曖昧=暗黙の了解を期待してるため、自動翻訳を使っても避けられない。
4. 自分の仕事の見える化をする
- 最初は割と面倒なんですが、むしろ忙しくなってきた頃ほど、自分のタスクを見える化しておくことは結構大事。僕の場合は自己防衛=仕事を大量に抱えすぎないために大切な方法でした。そんなに難しいものでなくても良くて、❶仕事内容 ❷どれくらい時間かかりそう? ❸現在の状況 とか3列くらいのエクセルで良い。
- まず初期段階では、これまで同様、「(会議では英語でコミットできてませんが)私はちゃんと仕事内容理解してますよ、やってますよ」というのをリーダーに伝えるのに役立つ。リーダーがこっちを気にしてくれると、「この仕事内容はちょっと違うから、こっちをやって」とかアドバイスしてくれる。これも他と同様、英語でのリアルタイムコミュニケーションが苦手という部分をカバーする方法の一つ。
- そして次に忙しくなってきた時、めでたく(?)仕事を沢山振られるようになった場合の防衛策にも使えるのがポイント。「これもやってもらえる?」「えっと、タスク確認しますね……いまAとBとCの仕事を抱えてて、終わるのは早くて明日なので、その後になりますね。こっち優先します?」「もう少し早くならない?」「ちょっとこの表見てください、先週似たような作業したとき一つ4時間かかってるんで、あのクオリティにしたいならこれだけ必要です」などと予防線を張れる。これによって仕事を大量に抱えてクオリティが落ちても、「言いましたよね…」と自分への責任を緩和できるのだ。(立場が弱いときはサバイバルするためにとても大事)
- (なおこれも、職種や仕事場での関係性によってメリットとデメリットは変わります)
- たぶん大規模なチームでの仕事に慣れてるところは、リーダーなりマネージャーなりがこれをやってるはずなんですが、個々人に任されてる場合も多そう、というか僕が今まで受けた仕事は大抵そうでした。
5. 会議での振る舞い方
- 英語の会議に出たことがあるなら経験がある人は多いと思うけど、一対一なら話せるのに、なぜか三人以上になると話に入っていけない。会話の速度が上がって、発言しようと言葉を組み立ててる内に次の話題に移ってしまう。どうにか発言するも、うまく言葉が出てこないのを沢山の人に待たれるのは精神的につらい…など、英語で一番辛いのはここかもしれない。発言は減り、存在感は薄れ、やがて「こいつ本当に分かってるのかな?」と心配されるし仕事への貢献度も低くなる。一つの解決法は、その日話すことを単語・文章ともちゃんと準備していくこと。ただしこれを毎回やるのは時間的にも大変だし、流れによって話せなかったりするとまたツラい。
- 代わりに僕がやってたのは書記。ただし単にメモを取るというよりは、KJ法とかホワイトボードを書く感覚で、マトリクス使ったり表っぽくしたりして、発言内容やトピックをまとめる方法。というか、そもそも会議にどうにかついていくためにメモを取れ。そしてせっかくメモするならそれを活かせ、という考えです。
- 発言を振られたり、なんか話せそうなタイミングがあったら、「これまでの内容を私なりにまとめてみたんだけど」とまとめなり図なりを見せると良い。「こいつちゃんと話聞いてるな」と思わせることもできるし、「A,B,Cについては沢山アイディアが出てるけど、D領域はまだだよね」等と指摘できると好印象。(でも指摘するだけの意識高い系には成っちゃだめですよ?)
- というか経験から言うと、会議は話してる内容をまとめて客観的に見るだけで結構パフォーマンスが上がる。話が盛り上がってるときほど俯瞰的な視点が失われてるような覚え、ありませんか?
6. コミュニケーションの省力化
- DeepLという機械翻訳サービスが昨年日本語に対応したのは驚愕でした。Google翻訳とはくらべものにならないほどの自然なニュアンスの翻訳。言語を学ばなくても自動翻訳だけで生活さえできる未来が垣間見える。実際、これ無しだと仕事の速度がかなり遅くなるので必須とも言える。超すごい。超すごいのだけれど、人間の言語運用能力の方がもっとすごいせいで、完全に信用もできない。そこでむしろ機械翻訳をサポートとして使うテクニックが大事になる。
- まずは長文の英語をよまなければならないときに、ざっと内容を確認して、どこを読めばよいかをつかむ。例えばアメリカのラーメン店についての英語長文ブログをざっくりまとめる仕事があるとき、まずDeepLに突っ込んでみる。すると、「ここはどの州のどこに店があるかまとめたものだな」とか「これはある店の店主のインタビュー」とか、正確性はともあれ、だいたい何が書いてあるか、という内容は大づかみにできる。⇒まとめればよいなら、各店舗の個別の内容とかはいらないので、全体について書いてあるところだけちゃんと読む。みたいな時短に役立つ。
- メールなりを打つ際にも、一度日本語で打ってDeepLに入れ、それを調整する、という方法で時短が使える。これ個人的な経験談ですが、イチから書くよりもたたき台的な文章が会った方がぐっと速度が早まる気がします。
- DeepLを使う際のちょっとしたテクニックがあります。まず大文字やピリオド、スペースをしっかり打たないとDeepLは文章をまるごと弾いてしまうことがあるので注意。ちゃんと大文字で初めてピリオドを忘れないようにすること。
- 慣れてくると、「DeepLがうまく訳してくれそうな文章」を日本語で打てるようになる。簡単に言えば、全ての文章に主語を入れること。ちょっと冗長気味に書くこと。複数の表現で書いてみて、より自然に見える方を選ぶ、などなど、こうしたテクニックを使うとより時短になります。
- ここのポイントはまさに時短・省力化。もし時間をかければ良い英文がかけたとしても、グループチャットなど「すぐに反応する」ことが重要な場面はかなりある。こういうときに補助的にツールを使えると良いと思います。ただし繰り返しになりますが、くれぐれも盲信しないように。人間の会話には暗黙の了解や、文脈によって意味が変わるものが大量にあり、これは自動翻訳には判別しようがありません。基本は英語の底力。
7. 追記:仕事においては「シンプルでこなれた英語」よりも「誤解を生みにくい英語」を心がける。
- 多国籍チームの場合は特に。
- 普段のコミュニケーションにおいては「こなれた表現」は大事で、ジョーク含めて感情を伝えるのにも必要です。ただ、そこにこだわると、結局ミスコミュニケーションが起きやすいので、多少冗長・カタコトっぽくなっても間違って伝わらない、確実に内容を伝えるような書き方の方が結局時間とリソースの節約になる場合が多いです(経験談)具体的には、箇条書きとか羅列を使ったり、語の省略を減らすなど。
- もう一つ、これは特に多国籍チーム、つまり「英語が母語でない国の人が各地から参加してる」場合、むしろ「こなれた表現」が足かせになる場合があるということ。具体的には Look up to (尊敬する)よりも Respectを使った方が全体にパッと通じる、という話。最近話題になってた岩波新書の『伝わる英語表現法』とはおおよそ逆のことが書いてあるのですが、むしろその通りだからこそというか、第二言語として英語を学んでいる人々はやっぱり「単語」ベースで英語を学んでいるように思うため、表現としてこなれてなくても、瞬間的に大意が伝わりやすい。国によっても(たぶん英語圏の国や地域によっても)表現は異なったりするので、チームメンバーの背景が多様であるほどこれが大事に感じます。
- これ、「英語圏で使われてる言語としての英語」と、「共通語としての英語」の違い、という話かもしれません。
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