【サンホラ考察】複数の地平線が一つの世界に存在する説
※ノンネイティブです。読みづらいところがあれば申し訳ありません。
絵馬やハロ朝を通して思ったことです。地平線がそれぞれの世界に存在するのではなく、複数の地平線が同じ世界に存在し、「こちらの世界」と「地平線の世界」という二つの世界が両立しているのではないか、と。
はじめに
ハロパ初日ラストの石碑に、栗木川くんが【秋津国】出身であることが明かされました。これにより絵馬で匂わせていたけど実証がなかったヴァニスタ関連の話も、より確かなものとなったと思います。
秋津は【似て非なる地平線】にあり、ノエルは秋津生まれであると、これで間違いなく言えるでしょう。
ここでふと思ったのです。
絵馬に出てきた、よだかとも縁のある「Verseine」という地名が、やたらサンホラに登場しているのではないか?と。
繋がれるクロセカ・Roman・ヴァニスタ・Nein・絵馬の世界
「Verseine」は現実には存在しない、サンホラ完全オリジナル地名です。ヴェルサイユの「Versailles」とセーヌ川の「Seine」を組み合わせた造語ではないかと考えられます。初出はクロセカの『聖戦と死神』シリーズで、「Flandre」にある「Verseine宮殿」でした。二度目はNeinの『憎束』にある「Verseine Collection」。三度目は絵馬の『太陽を盗んだ女』にある「VERSEiNE 2024」。
そして『憎束』のカフェ、スタバと似て非なる「StarDucks」の背景に、『よだかの星』が流れていました。
また、「Verseine」がある「Flandre」は、Neinの『涙焔』には「フランドル」と書かれ、イヴェールの両親が生きていた国、つまりイヴェールの祖国でもあります。
さらに、絵馬の『夜駆け』にも出てきた「ブリタニア」はクロセカの『薔薇の騎士団』に「Britannia」と表記され、『聖戦と死神』では「Flandre」と「Verseine宮殿」で休戦協定会談をした国です。
クロセカによって、全部繋がれています。
ここから一つの推測を立てます。
FlandreもVerseineもBritanniaも秋津も、ノエルもイヴェールも黒の予言書に書かれた人物たちも、すべて同じ世界に存在するのではないでしょうか。
すべて一つの「地平線の世界」に属しているのではないでしょうか。その世界は「似て非なる地平線」の命名法に従い、国や街、カフェなどが「こちら」とは似て非なる名前で「似非化」されているのではないでしょうか。
そして今回「こちら」の物語として『ハロ朝』が語られ、「こちらの世界」と「地平線の世界」のさらなる両立ができたと感じました。
こちらが日本で、向こうが秋津。こちらが英国で、向こうがブリタニア。こちらがフランスとパリで、向こうがフランドルとヴェルセーヌ。どちらの世界でも物語が語られています。
こう考えると、本当に多くの、昔から気になっていたことが説明できるようになりました。
以下、説明のため、そしてヴァニスタ用語としての【似て非なる地平線】と混同しないように、「こちらの世界」と「地平線の世界」という仮称を使います。
他の地平線はどちらに属すのか
1. イベリア
『侵略するされ』の前半はレコンキスタの歴史をそのまま語っていましたが、最後の結末だけは史実と大きく異なり、「スペイン王国」が率いるキリスト教勢力の勝利ではなく、「カスティーリャ」を中心とした啓典連合王国の成立でした。「啓典」とはイスラム教における用語です。
歴史上も存在した国ではありますが、「カスティーリャ」はクロセカの『聖戦と死神』にも登場し、スペインの似て非なる存在だと思われます。『侵略するされ』ラストの語りにあるピレネー山脈も『聖戦と死神』に「Pyrénées」と記され、カスティーリャこと「Castilla」の周辺にあるとされています。
今になって思えば、「カスティーリャを中心とした啓典連合王国」が成立したのは、実は「こちらの世界」の歴史ではなく、「地平線の世界」の出来事ではないでしょうか。
聖戦の結末だけが幻想であり、他はすべて「こちらの世界」の現実という可能性もありますが、ここであえてクロセカに登場した地名を使ったことには意味があると思います。
「こちら」の史実と矛盾や分岐があるのも、どちらの世界に属するかの判断材料となるかもしれません。
2. ハロ夜
Neinの時からずっと疑問に思っていました。ヴェルセーヌやフランドルなど、物語に登場する地名は「似非化」される傾向があるのに、なぜアメリカやアイルランド、サンフランシスコはそのままの名前なのかと。
今ならこの仮説で簡単に説明できます。『ハロ夜』は『ハロ朝』と同じ、「こちらの世界」の物語だからです。
語られた史実も年代も、すべてこちらの歴史と対照できるものです。こちらの世界に確かにあった物語だと言えるでしょう。
3. イドイド・メルヒェン
まず前提として、『メルヒェン』は完全に『Das Märchen des Lichts & Dunkels』という本の中に書かれた物語であると解釈しています。その理由に関して考察した方がたくさんいると思いますので、そちらをご参考にし、ここでは割愛します。
とにかくイドイドとメルヒェンは、最初から「本の外側の世界」と「本の中の世界」に分かれていて、メルヒェンの内容のほとんどは童話の虚構であると解釈しています。そのため、考えるべきは「本の外側の世界」、つまりイドイドの物語がどちらの世界に属しているのかという点です。
イドイドに登場する地名や史実・年代を振り返ると、「こちらの世界」のものに準じていると感じました。モデルや詳しい年代については様々な考察があると思いますが、「こちらの世界の歴史で説明できる」のが大きいのだと思います。
聖戦のイベリアとは逆に、クロセカの『聖戦と死神』に存在していたはずの似て非なるドイツ「Preuzehn」が、なぜか一度も使われていませんでした。イベリアのような史実との明白な矛盾も、イドイドには観測されていません。
さらに思い返せば、イドイドの最初の第一声は、歴史を表す「His」(C)の音と、「そして歴史だけが残った」という言葉。 「歴史」と言っています。
これらから推測すると、イドイドは幻想に見えるものの、実際には「こちらの世界」の歴史なのではないかと考えました。
『Das Märchen des Lichts & Dunkels』という、『メルヒェン』の内容が書かれた一冊の童話が歴史に残り、数百年後にグリム兄弟によって拾われ、後にグリム童話となったという、「こちらの世界」の史実に沿った物語だと思います。
合点がいきます。 イドさんが井戸の中のIdで、彼とコルテスが知り合いであるという説を前提にし、『海を渡った征服者達』はイドイドに関連する曲だと思われます。曲の中でコルテスの名前はもちろん、アステカやトルテカといった地名、そして物語の展開や結末にも矛盾や「似非化」は見られません。イベリアにおける最大の分岐点である悪魔の関与とその結末にも、歌詞を見れば一切言及されてません。全て「こちらの世界」の歴史そのものです。
4. Moira
一枚の円盤であるにも関わらず、イドイド・メルヒェンと同様に、Moiraも「本の外側の世界」と「本の中の世界」に分かれています。詩女神達が歌ったのはズヴォリンが持つ叙事詩『Элэфсэйа(エレフセイヤ)』の内容であり、遺跡を発掘する話は本の外側の物語です。
では同じように「本の外側の世界」がどちらにあるのかを考えてみましょう。ここで登場するのは、『入れ子人形』にある「ロシア」、そして謎解きページにある「英国」と「露西亜」です。そのままの「ロシア」、そして「ブリタニア」ではなく「英国」。
遺跡を発掘する側の人々は、「こちらの世界」に位置付けられていると考えられます。
二つの世界の両立と交流
ここからは秋津に話を戻します。
ノエルは実在しています。それは祝賀祭を通じて確認されたことなので間違いないでしょう。
ノエルの周りの人々、市蔵や三人の記者たちも実在しています。【似て非なる地平線】であれ秋津であれ、彼らも「地平線の世界」に生きています。
降臨祭プレミアム配信の前説と音声特典によると、市蔵は祝賀祭の時、「こちらの世界」で赤いバイクを購入し、自分の世界に戻った後、そのバイクを手放すことになりました。その後Revoと通話して前説を頼まれ、神社関係者と会い、前説のために神社に行く時、麓でそのバイクによく似たものを見かけた、とのことです。
そして『西風』では、犬彦のゼファー750は譲り受けたもので、「外国産?」と疑われてました。つまり秋津では知られていない、けれど「こちらの世界」には実在するバイクです。
なお、市蔵が前説をしたのは配信の最終日でしたが、一般配信では降臨祭千秋楽の宮比ルートではなく、犬彦ルートでした。偶然にもプレミアム配信も犬彦ルートが選ばれました。その日に犬彦は神社へ行った、と考えられます。
市蔵が祝賀祭のとき「こちらの世界」で購入した赤いバイクはあのゼファー750であり、秋津に転々とした末に犬彦の愛車になった可能性が非常に高いと思います。
何を言いたいかというと、絵馬本編に描かれていない市蔵の話、そしてノエルのことを通して見ると、秋津を含む「地平線の世界」は「実在」し、「こちらの世界」との交流もあるのだということです。
超デ盤にも収録された、『Nein』劇場版のオープニングに書いてあるように、それは「アナタの住む【地平線】とは異なる平行世界」。こちらの世界と同時に存在する平行世界です。
以上が「複数の地平線は一つの世界にあり、現実世界と両立している」説です。
観測される地平線の世界
絵馬が「誰かによって作られた物語」という仮説とも矛盾しないと思います。友人が絵馬「かわみー戯曲説」を投下したので、少し補足します。
パラレルワールドであっても、秋津は明らかに異質です。大神の影響はともかく、『Nein』コンサートと「屋根裏堂News Letter」によると、ノエルがR.E.V.O.を買い、花屋の前で熱唱したのは2015年2月16日の出来事でした。コンサートは実質上その日の繰り返しであり、我々はそれを観測できています。
ここからさらに仮説を立てます。
「こちらの世界」は「地平線の世界」を観測でき、または絵馬のようにある程度の影響を与えられる、ある意味「地平線の世界」の「上位」に位置しているのではないでしょうか。
そもそもクロセカでは、「Verseine」含む全ての似て非なる地名は黒の予言書に記されているものです。「地平線の世界」は、初めから「ある種の記載を通して観測する世界」だったのかもしれません。
実在していても、「こちらの世界」との交流があっても、「観測される側」である点は変わりません。
もし本当にかわみーによる戯曲だとしたら、その筆を通して観測の窓口を開けてくれた、ということになります。
さらに発展して考えると、ある種のタイムループ、もしくは物語の輪廻が、クロセカにも絵馬にもNeinコンにも観測されています。繰り返すたびに物語が変わる世界でもあります。
「本の世界」という概念の特徴と一致しています。
もしかすると、すべての「本の中の世界」が同じ「地平線の世界」に含まれているのではないでしょうか。例えばズヴォリンが持つ叙事詩、彼自身がこちらの世界の人間であっても、その叙事詩の内容は神話として非常に「似て非なる」感が強いものです。叙事詩の翻訳者は「Хроника(Chronica)」こと、クロニカ様であるという点もあります。
確証はありませんが、可能性はあると思います。