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【ETF四方山話】債券ETFにおける債券のバリュエーションと裁定取引
現在は多様な債券ETFが様々な取引所で取引されていますが、、、
それぞれの債券ETFのなかで、個別の債券をどう評価するかについてはばらつきがあり、同じ債券でも、それぞれのETFでは異なる価格で評価されていたりします。(特に流動性の少ない社債などでしょうね)
これが、AP(指定参加者)やMM(マーケットメイカー)の行動に影響しているのではないか?というお話。
https://www.etfstream.com/articles/hidden-costs-for-bond-etf-investors-revealed-in-academic-study
および、これが参照している論文(以下)によると・・・
https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=5046012
「同じ債券の価格を高く評価しているETFのほうがAP/MMが設定するインセンティブがある」ということのようです。
カスタムバスケット(ある程度柔軟に設定バスケットを調整できる仕組み)を、価格が高く評価されている債券のみで構成できたと仮定すると、AP/MMはETFの受益権を多く受け取ることができ、(ETFのセカンダリー市場での価格評価は同じだとすると)得をするのではないかということのようです。
↓ちょっとわかりづらいので、その具体例がこちら。
Comparing ETF A and ETF B, both assign a value of 100 to Bond 2, but ETF A values Bond 1 at 102 while ETF B values Bond 1 higher at 105. Consequently, the NAVs differ, with ETF A’s NAV at 202 and ETF B’s NAV at 205. Suppose an AP uses a custom creation basket containing only Bond 1. By surrendering one unit of Bond 1, the AP can create 0.505 shares of ETF A, whereas with ETF B, the AP would receive 0.512 shares. Given that the underlying composition of the two ETFs is identical, if the market is efficient enough, the secondary market prices for the ETFs would be the same. Thus, by receiving more shares, the AP would prefer to create ETF B over ETF A using Bond 1.
Given the NAV of ETF A is 202 and Bond 1 is valued at 102, the AP could get 102/202=0.505 shares of ETF for each unit of Bond 1. Similarly, AP would receive 105/205=0.512 share
あくまで、「セカンダリー市場でのETFの価格形成は同じ評価」という条件付きではあります。
ただ、このリサーチでは、債券のバリュエーションが高いETFの方が、設定が多いという結果にはなったようです。
債券の価格形成のばらつきからのアプローチですが、要するにNAVと市場価格の乖離からの収益機会の一環という話なのかなとは思います。さらにはカスタムバスケットの利用が可能なことで、価格にばらつきがある債券にフォーカスした収益機会がAP/MM側に存在しているということのようです。
カスタムバスケットはAP/MMの設定交換をやりやすくするための仕組み(設定交換用のバスケットを柔軟にすることができる)で、とくに欧米の債券ETFでは一般的です。一方で、それにより本体のポートフォリオに多少ゆがんだバスケットを受け入れることになるため、その影響をポートフォリオは受けることになります。これが既存のETFの受益者にとってはコストやリスクになるため、カスタムバスケットの利用についてはETF側の受け入れのバランスが重要になってきます。
債券についてはそもそもの評価が難しいこともあって、より気を使う必要があるということでしょうか。