出る釘か、あるいは
こんにちは。Natsuです。最近は岡本太郎の「自分の中に毒を持て」を読んでいます。
毒を持て、盾を突け、孤独を抱け、の3部作の1作目です。
病院の待ち時間など利用してちまちま読んでいいますが、なかなか読み終わりません。
本の内容としては、「世間がとうであろうと己の信念に従って生きようね、そうすれば爽やかだよー」ということが著者である岡本太郎の経験を踏まえながら力強い言葉で書かれています。
その中で、「出る釘は打たれる」について書かれている節があります。
考えてみれば、その時代から、今日に至るまでぼくは少しも変わっていない。あらゆる場所、あらゆる状況で、孤独な、「出る釘」であったのだ。
ここでどうしても気になるポイントがあります。それは
釘なのか杭なのか
です。
わたしはこれまで、話し言葉でも書き言葉でも、「出る杭は打たれる」と表現してきました。
高校時代のことを思い出して書いた記事でもこのように書いています。
「君は出る杭だ。出る杭は打たれる。出る杭を打つとき、人は容赦しない」
しかし岡本太郎は「出る釘は打たれる」と書いている訳です。しかも岡本太郎の方は、実際に幼少期にリアル「出る釘」を宿舎で見たというエピソード付きです。
言われてみれば「出る杭は打たれる」と書きながらも、イメージするのは金属の釘です。むむむ。釘なのかしら、杭なのかしら。わたし、気になります。
ググってみました。
《「出る釘は打たれる」とも》
1 才能・手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれる。
2 さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。
[補説]文化庁が発表した平成18年度「国語に関する世論調査」では、「出る杭は打たれる」を使う人が73.1パーセント、「出る釘は打たれる」を使う人が19.0パーセントという結果が出ている。
なるほど、やはり、杭も釘もどっちも使うんですね。そして、釘よりも杭の方が多数派、と。ふむふむ。さすが岡本太郎、少数派を地でいくわけですかー。
ってエエエエエエエエエエエエエエ!?!?
文化庁が発表した「国語に関する世論調査」って何!?!?(面白そうなものを見つけた顔)
調べてみたところ、文化庁HPより、毎年行っている国語に関する世論調査についてみることが出来ます。なお、
・詳しい調査結果は「国語に関する世論調査」の市販本
(出版:株式会社ぎょうせい)を御覧ください。
とのことです。株式会社ぎょうせい!!!かわいすぎる…。(何やら面白くて仕方のない顔)
国語に関する世論調査はいくつかの項目からなり、釘か杭かが議論されたのは恐らく慣用句に関する項目でだったのではないでしょうか。
ちなみに、令和元年度でピックアップされているのは3つ。
手をこまねくの意味は?:(ア)何もせずに傍観している。(イ)準備して待ち構える。
これは(イ)と答える人が多かったようですが、辞書等で本来の意味とされてきたものは(ア)です。
さて次の問題。(クイズ番組みたいになってきました。)
敷居が高いの意味は?:(ア)相手に不義理などをしてしまい、行きにくい。(イ)高級すぎたり、上品すぎたりして、入りにくい。
これも(イ)と答える人が多かったようですが、辞書等で本来の意味とされてきたものは(ア)です。わたしも(イ)の意味でしか使ってないですね…。
最後の問題。
浮足立つの意味は?:(ア)喜びや期待を感じ、落ち着かずそわそわしている。(イ)恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている。
これは(ア)でしょう~~と思う方多いのではないでしょうか。わたしもそうです。しかし、辞書等で主に本来の意味とされてきたものは(イ)恐れや不安を感じ、落ち着かずそわそわしている、の方なんですね。
「いやいや、辞書に書いてあっても実際に使われている意味の方に辞書がアップデートされるべきでしょ」それはその通りです。そのためにもこういった調査があるのでしょうね。そうは言っても、自分の使う言葉が意図と違う意味に捉えられる可能性があるということや、特に注意した方がいいであろう言葉があることを知っておくのは悪いことではないはずです。
国語に関する世論調査、なんだか面白かったので令和元年度をベースに一部をご紹介します。
敬語に関する調査では「先生は講義がお上手ですね」「就職はもうお決まりになったのですか」「誠に申し訳なく、深く反省させていただきます」「規則でそうなってございます」「昼食はもう頂かれましたか」「お客様が参られています」「お歩きやすい靴をご用意ください」「こちらで待たれてください」の8つの文で、【気になる/気にならない/どちらともいえない/わからない】から回答するようになっています。
ちなみに、令和元年度の調査で【気になる】と答えた人が8割を超えたのは「規則でそうなってございます」と「こちらで待たれてください」で、【気にならない】が多かったのは「先生は講義がお上手ですね」と「就職はもうお決まりになったのですか」でした。
どんな表現にどんな人(主に年代と性別)がどのくらい気になるか、をウォッチしているみたいです。面白いですね。
平成22年常用漢字表改訂で追加された漢字の印象についてどう感じるか、の項目もあります。次の熟語について【漢字を使うことで、意味の把握が容易になる/読みにくいので、振り仮名を付けるのが望ましい/読みにくいので、仮名書きが望ましい/わからない】から回答します。令和元年度は
萎縮/語彙/憂鬱/歯牙/楷書/俳諧/火蓋/毀損/錦秋/危惧/右舷/禁錮/憧憬/払拭/凄惨/羨望/詮索/遡上/未曾有/破綻/緻密/進捗/補填/汎用/隠蔽/瑠璃/賄賂/山麓
の27熟語が対象でした。個人的には、全て【漢字を使うことで、意味の把握が容易になる】ですね。振り仮名はあってもいいかもしれないですが、もしも「歯がにもかけない」「い縮する」なんて表記されたらかえって読みにくいです…。
【読みにくいので、仮名書きが望ましい】が多かったのは「語彙」「毀損」「憧憬」などでした。
中学1年生の頃、漢検の広告で初めて「語彙」という単語を知ったのを覚えています(その広告には「語い」と書かれていました)。「語彙」という単語自体、ある程度の語彙がないとたどり着けないようになっていて、面白いなと思いました。中学1年生の時わたしは漢検の3級(中学卒業程度)に受かって、もう漢字の勉強しなくていいやとイキっていましたが、準2級は2回かかってやっと合格だったと思います。10年経って今は目指せ準1級です。
語彙が豊富な人って、少し話すとすぐわかりますよね。わたしの場合は、この人からはいろんな言葉が出てくるなあ、この人の使う言葉の組み合わせは面白いなあ、と思うと大体その人のことが好きになります。笑 そういう人とは、あんまり会ったことないんですけど。
話題性があって面白いのがこちら。「新しい表現に対する印象」。「ガン見」などに使われる「ガン」は気になるという方多いですね。【自分は使わないし、他人が言うのも気になる】のポイント数が群を抜いて大きいです。
ちょっと気になったので、このコーナーにかつてどんな言葉が入ってきていたのか、調べてみました。
<平成29年度>
・ほぼほぼ
・後ろ倒し←言われてみれば「前倒し」ほどメジャーではないかも
・(上から)目線
・タメ(口)
・ガチ
・立ち位置←意外!新しい表現なんですね。
<平成28年度>
・心が折れる
・目が点になる←これも新しい表現なのか…。
・あさっての方を向く
・背筋が凍る←これも!?
・毒を吐く
<平成26年度>
・婚活
・イクメン
・女子力
・デパ地下
・大人買い
・クールビズ
平成26年度の「婚活」「クールビズ」などは令和元年度の調査にも登場しており、当時と比べるとだいぶ市民権を得ているようです。
それにしても、この調査は毎年結構内容が違っていて(手書き文字にフィーチャーしたり、ら抜き言葉にフィーチャーしたり)、いったいどんな人が何を基準に選んでいるのかしら…と想像するだけで面白い気持ちになります。
わたしだったらどんな世論調査をするかな…と想像してみましたが、わたし自身「世論」というものと相性が悪いので、世論調査をつくる側になることはないですね!
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