鯉のぼりは「燃えよドラゴン」
もう少しで梅雨が始まるらしいと言われ始めた頃に、魔都よろしく「道」の街、成都へ行くことに決めた。
季節感も土地勘も分からぬ成都に想いを馳せて、令和時代の幕開けにふさわしいような長ったらしい梅雨をやり過ごし灼熱の夏東京を迎えた俺は仲間や兄弟、家族に別れを伝えて未練を断ち切りいざ成都へ!の段で「その前に沖縄に行っておこう、夏らしい夏を日本で過ごしていない!よし8月いっぱいは沖縄を巡ろう!」という不思議な成都行きを決めた。
旅立ちの前々日。
結婚2年、たまりにたまっていた奥さんが突如激昂し、号泣の波乱が起きた。
男はつらいよと寅さんにお墨付きをもらった我々男性のたまにやってくる現実との対面は久々に心の奥に溜まった膿を掻き出し、新たな境地へと導く。
旅立ちや、別れに凝縮された自身の過去が生きる実感へと結びつける。とにかく前へ進むしかない。
成熟とは程遠い青さと熟れが曖昧に在る、自身の人生の岐路を意識している東京で育まれたいわばサイコパス的な優しさを持ち、死への恐怖を未だ拭い去れぬ30歳の男である。
右腕に入った鯉は川を登り龍へと生まれ変われるか。
はたまた濁った池に辿り着き、鯉の小さな頭で龍になり空を駆ける自分を夢見るのか。
Enter the Dragon - 龍爭虎鬥
自ら望む始めての旅、明日はどっちだ。
2019.8.1