チクワは歩く 第23話「彼の友人」
「まあ何も面白いことがない町だったわけだ。」
「だから腸詰め町からおでん街にやってきたんですね。僕みたいに一人でですか?」
彼の表情が少し曇った。
「いえあの言い辛かったら全然大丈夫ですよ!なんかすみません...」
「今更この程度のこと気にすんな。俺はダチと二人でこの街に来たんだ。」
彼の視線が僕から穴を満たす茶色い液体に移る。
「まあ随分前に溶けちまったけどな...」
彼の視線がパッと僕に移る。
「おい謝んなよ!もう昔の話だしアイツも望んで溶けたんだ。」
「はい...分かりました。でもなんでウィンナーさんやウィンナーさんのお友達は体が溶けてしまうまで浸かってしまったんですか?」
再び彼の視線が茶色い液体に移る。
「説明するよりお前が体験したほうがいいだろ?」
彼は少し意地悪な笑顔で僕にそう言った。
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