大根をすりおろすのが苦手だ

大根をすりおろす時、最後のちびた部分になる度怪我をしそうになる。それまで勢いに任せて豪勢にすりおろしていたというのに、残りわずかになった途端に恐る恐ると約二本分の摩り下ろしの間を行き来させる。当然ちびた大根はまるですりおろされてくれるる様子もなく、ようやく細かくなった欠片を押し込んでホッとするのだ。

父や母、祖母のすりおろす姿を見たことがあるが、皆大抵最後まで綺麗にすりおろし、あっという間に欠片となった大根を器に放り込む。食卓に並んだ時、欠片は自分が欠片だったことを忘れてただ大根おろしの中で眠っている。いくら箸で突こうとも彼がまた現れることはない。

僕は今日も指の爪をほんの少し削りかける。なすの揚げ浸しを作りたいだけで、大根はその添え物でしかないはずなのに、なすよりも何よりも大根に苦戦をしている。

奴を完全にすりおろす日が来るまで、僕の揚げ浸しが完璧になることはない。

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