つぶやくには長い①〈コンビニ小話〉
まだまだコロナなど影も形もなく、平和に働いていた時の話だ。私は都内に勤務しており、会社の近くに複数の専門学校があった。その中の一つにそこそこ有名なアニメ、声優系の専門学校があり、おそらくそこに通っている青年が、私が毎日会社で飲むためのお茶などを購入するコンビニで働いていた。
別に細かい世間話をしたわけではない。毎日一分足らずの接客を受けるだけであった。しかし、近くに声優の学校があることと、彼の勤務態度を見るに「ああ、声優を目指しているんだな」と感じていた。
なぜならば異常に発声が良いのだ。イケボと言って差し支えなく、なおかつ聞き取りやすい。これはもう声優を目指している子なのだろう。そう勝手に考えていた。そして聞く度にその声を「いいなぁ、素敵だなぁ」と勝手に楽しんでいた。
あれから2年以上経つ。仕事は変えてないが配属と勤務地が変わったしテレワークばかりになったのでその辺には全く寄り付いていない。
当時、彼のカッコいい声が一日の始まりのちょっとした清涼剤になっていたことはある種の事実で、今もたまに思い出す。しかし具体的に「どういう声」だったのかという記憶はかなり薄れてしまった。彼が声優としてデビューしたとして私がアニメを見ていて彼だと気がつけるのだろうか?場合によってはデビューしてるのかもしれない。
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