私の作りたい世界について
「世界を作りたい」って壮大で面白い響きですよね。
響きの壮大さとは関係なく、この記事では、私が何を求めて VRChat でワールドを作っているのか、試しに語ってみます。
いきなり本題から入っても良いのですが、今回は、私がこの記事を書こうと思うに至った経緯から順番にゆっくり語っていきましょう。
チームで作るには伝える必要があった
VRChat で長い間生活していると不思議なこともありまして、 SANRIO Virtual Festival 2023 に出演? することになりました。宣伝ですが、ぜひ見に来てくださいませ。
さて、最近の私は、このイベントに向けて何かを制作していたのですけど、 これが初めての VRChat でのチーム制作でした。とても楽しかったですね。(これについてはまた別の機会に記事を書いてみたいなと思っています。)
チームで作るということは、当然ながら私の作りたいものを色んな手段でチームの人達に伝える必要があります。
制作の間、私の作りたい世界について、世界の物語について、詳細を語らなければならない機会に晒されました。子供の頃に書いた妄想の物語を他人にバラすような恥ずかしい気分を何度も楽しめましたね。
そんな機会を得て、作りたい世界について言葉を用意することができたので、一度、文章にして整理してみようかと思ったのです。
綺麗な世界を作りたかった
綺麗な世界を作りたい。
きっと VRChatで ワールドを作る何割かの人は同じことを求めていますよね。
あえて語るほどのものではないような気がしますが、綺麗なワールドを求めて1つ2つと作っていく間に気づくことがあります。
具体的に作り始めると単に綺麗な世界という言葉で括って終わらせることができないのです。
何を綺麗だと感じるのか知りたくなった
人には好みに差があります。 VRChat のワールドを作っていると、ワールドによって、表現しようとしているものや、提供したいものが違うことに気づくようになってきました。何をもって綺麗な世界と感じるかは人によって、状況によって、捉え方によっても変わるのですよね。
そして、私自身は、何を綺麗だと感じ、何に価値を感じるのかについて、手探り状態で作っています。
目指したい作品や作家がはっきりあるわけでもなく、全体を通してみた場合に、傾向はあるものの、作りたい世界について明確なイメージがあるわけではないです。
この、「作りたいワールドの方向性を手探り状態で探している」という状態は、悲観的に捉えることもできますが、私個人としては、ちょっとずつ自分の好みを知っていくという意味で、楽しむ要素になっています。
今までの私はビジュアルについてのデザインとかアートみたいな世界と無縁すぎたので、「アートは対話なのだ」的な話は理解の範囲を超えているし、興味の範囲にも入っていなかったのですけど、VRChat のワールドを作ってみて意味をちょっとだけ理解できた気がしましたね。
綺麗な世界を妄想するだけでは足りなくて、作ってみて、眺めてみて、「このワールドどう?」と自分に問うてみて、やっとそれが、欲しかったものなのか、違うのか、それとも超えているのかが分かる。これが楽しい。
さらに、仮想空間のワールドの 「自分がその世界に居る」という状態は、スクリーンショットやモデリングソフト、 Unity 上では得られない感覚がたくさんあります。これを発見しつつ、自分の求めるものを探していくのも、活動を楽しくする要素の一つになっている気がしますね。
そんな背景があり、私の作りたい世界というのは、自分に対する問いや実験になっている側面があります。
穏やかに景色を眺めて過ごせる空間が欲しい
私は、一日の終わりに、ワールドに入って、ふらふらと歩いて回りながら、ぼーっと景色を眺める時間が好きだったりします。
私自信がワールドを作っている間も、何度も入って確認しますし、VRChat のホームワールドに設定して、VRChat で遊ぶたびに自分の作った景色を眺めることになります。しかも、これをやっているのは、寝支度を一通り済ませた後の夜です。
そうすると、自然と静かに穏やかに過ごせる、できれば暗めの空間を望むようになる気がしていますが、皆様はいかがでしょうか。
これは、私がワールドを作りながら望むようになったものでもありますが、 理由を考えた場合には、この私の好み自体が、VRChat の持つシステムの構造やそこから来るプレイスタイルに由来するものではないかなと時々考えています。
家に帰ってきて、寝支度や雑用を一通り済ませた後、PCのモニタやスマホの画面から遮断される HMD を被り、フレンドさんに Join したりされたりして、そこで談笑したり、一人ワールドを探して探索する。そうすると、全体的な好みの傾向の一つとして、変化の激しい空間よりも穏やかな空間を望むことが増えるのではないかという気がしています。
メガネ型のディスプレイが普及して、いつでもどこでも Twitter などでリンクをクリックするだけで入れる世界や、Discord などで特定のグループの人と常時音声チャットを楽しみながら、遊ぶことを前提とした場合は、別のスタイルのワールドの方が良いと感じるのではないかなと、時々妄想します。もう少し身近な例で行くと、私自信は、Youtube で「穏やかな動画」を求めたり Twitter のタイムラインで「穏やかなツイート」を求めている感覚はまったくないんですよね。VRChat で自分が求める、もしくは他の人からも求められるコンテンツの種類は、ある程度、 VRChat 固有のものになると考えています。
もちろん、VRChat には大人数で賑やかに過ごすシーンもたくさんありますけどね。
見たことのない世界を作りたい
ここから、少しずつ私固有の作りたいワールドについての話に入っていきましょう。
私は、見たことのない景色を見たい、自分で作りたいと思いながらワールドを作っています。すでに世の中にあるものは、わざわざ自分で作らなくても良いかなという感覚があるんですよね。
せっかく作るなら今までにない新しいものを作りたいと思っています。贅沢ですね。
気になるのは、「どんな点について、見たことのない世界を作りたいのか」という部分です。例えば、私は「みんなが綺麗なワールド作ろうとしているから汚れたワールドを作りたいぜ」なんて思っていませんし、「みんなが夜のワールドを作っているから朝のワールドを作りたい」なんて思いも無いです。きっと何について見たことがないものを作りたいのか方向性があるはずです。
私は、これを十分に把握しているわけではなく、ワールドを見たり作ったりしながら、試しに作って知ろうとしている途中であるといえます。
私が作る上では避けたいもの
何かを作ろうとしていると、「これは作らなくていいかな」と感じて作るのを頻繁に避ける種類があるということに気づきます。
この私が何となく避けたいと持っている方向を上げてみます。これは、自分が作る場合に対する興味の話であって、ワールドを体験して楽しむ側としての興味や好みの話ではないことにはご注意ください。
私は、現実世界を模倣するような方向のワールドを作ることには興味が無いようです。家具の配置や、間取り、建物の構造が現実のものと少し違う程度では、私には作るという点では差がないと感じてしまうようです。
この影響もあってなのか、現実世界の建築物のディティールとかテクスチャの作り込みとかには興味があまり向かないという傾向があります。結果的に禄にライティングを整えることも、テクスチャを貼ることも無くワールドを作っていることが多いです。いつも楽しく会話していますが、現実感のある綺麗な家のワールドが大好きな Waka さんとは、対極にありそうですね。
技術力を上げるには模倣するというのは良い選択肢だと思うのですけど、私は、この方向で技術を磨くという道は閉ざされているようです。残念です。
あとは、現実世界ではないものの、剣と魔法が登場しそうなファンタジーの世界を作ることにも興味が無いようです。既存の特定の物語に憧れてそれを再現したいという思いも無いらしいんですよね。似たような方向として、サイバー空間や、SF 世界も、自分が作るという意味では興味が薄いようです。見るには好きなのですが。
そして、何らかの技術を見せることが中心のワールドを作ることにも興味は薄かったりします。私は VRChat でワールドを作り始めたときには、この方向に進むものだとばかり信じていたので意外でした。技術を使って何かを作るには好きなのですが、それを中心に据えることには興味が薄いらしいです。
実は、すべてをゼロから構築したワールド、みたいなものも目指してはいないようです。それが何なのかは知りませんが… 曲線をふんだんに使った抽象的な構造物、みたいなタイプは適当に作ると作られている時があるのですが、好みではないようです。ある程度、知っているものや世界に似たところから少しだけ外れている程度を好むようです。
贅沢なものです。
ちょっと変わった背景を持つ世界を作りたい
否定的な話はこのくらいにして作りたいものを語っていきましょう。
世界を存在させるなら、それがどんな背景を持った世界なのか、垣間見える世界を作りたいというのがあります。
そこはどんな出来事があって眼の前の景色が広がっているのか、これからこの世界はどうなっていくのか、想像するのが楽しいし、想像するのに必要な材料は置いておきたいと思っています。
そして、その設定は少し変わった、他には無いものであってほしいというのがあります。
形容しにくい感覚を得られる世界を作りたい
私のワールド作りは、大まかに作りたい中心を定めた後、色々試しながら作っていくことが多いです。
作っていると「これ、いいなぁ」と感じるものが時々生まれて、一つずつ採用して、じゃまになったものは外したり直したりしていく、という作業を何度か繰り返しています。
この良いと感じるものには傾向があって、良いと感じるけど、良さを具体的に言葉で説明するのが難しいものをより良いと感じるようです。きっと、適切な言葉を知らない程度に「新しいものだ」と感じられるからなのでしょう。
特に Unity 上の画面からは伝わらない、 VR 空間で入って景色が広がったときに、呆然と眺めたくなるような、VRで入ったときにだけ感じる不思議なムードが含まれていると、「おぉ…いいものが出来てきたじゃん」という気分になってテンションが上がります。
素朴なところだと、実はワールドに配置しているオブジェクトの色選びとかにも反映されています。青色と紫色の間で、ひたすら自分の感覚で、どっち寄りと言いにくい境界線を無駄に追い求めていたりします。
人を介さない世界の物語を作ってみたい
私の作るワールドの多くは、メインのオブジェクトに人が関わってなさそうな気配が強い作りになっています。
人が居ても居なくても関係ない、その世界は勝手に動いて変化していく。 VRChatter がワールドに入る都合上、場所や鏡は用意されているけど、その景色に人が入る必要はない…そんなムードを好むようです。
手元には、適当に書き殴られたワールドの設定メモがあるのですが、そんな世界の設定が作れるとテンションが上がって、色々書き連ねています。
普通の物語には当然のように登場人物が居て、彼らの葛藤や成長が書かれたりします。ですが、VRChat でのワールドの表現にはそんなものは無くても大丈夫です。
そんな人の居ない世界の営みや変化だけが表現された不思議な空間を作ってみたいと思っているようです。
私のワールドをご覧になったことがある方に、このムードは伝わっているのか気になりますね。いかがでしょうか?
そして、なぜそんな世界を望むのか…とか考えると面白そうですね。
おわりに
適当に書き連ねていたら、グダグダとした長文になってしまいました。
ワールドを作った後に後付で作りたいものを考えてみたものなので、当時の思いを正確に反映しているわけではありませんし、きっと今後作るワールドも、ここに書いている内容から外れていくこともあるでしょう。
同じアドベントカレンダーで記事を書いている Wata さんが山登りに例えて、自分の作りたいものと他の人が作りたいものの差について語っています。私は、色んな考え方で色んなものが作られている、VRChat の世界がかなり好きです。
そういった話を聞くのも好きで、ワールド制作雑談会というイベントを開いています。
聞くのが好きなら自分も語っておけよ、という意味でもこの記事を書いてみました。どんな考え方で VRChat のワールドを作っているのか、みたいな話が好きな方がこの記事を楽しんでもらえたら良いなと思います。
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