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週末終わり、最後の憩い UTYOASOBIライブ

 「私」が筆者なのか創作の中の住民なのかは、皆さんのご想像におまかせ。

*  *  *

 また今週も、休日が終わってしまう。

 今日は雨だったからずっと家にいた。ただSNSをいじったり、ゲームをしたりとダラダラと過ごした。やらなきゃいけないことは山のようにある。金曜日、帰り際に上司に追及された資格試験の勉強だって手つかずだ。でも何もしたくなかった。やる気が起きなかった。

 特段何もせずに終わる一日は罪悪感が酷い。特に最近は土日とも、家を出ていることが多いから余計に。そんな自分を誤魔化して、私はパソコンを開いた。――もうすぐ19時だ。


『SING YOUR WORLD』

 会場となる場所まで、飛ぶように滑らかに移動する映像。その道中、今回のライブのタイトルが目に入る。

――あなたの世界を歌え、か……

 私の世界って何だろうと思いながら、ぼんやり画面を見つめる。私は時々自分がわからなくなるから、余計考え込んでしまった。


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 いよいよ始まったライブ。私はそんな物思いも遠くに放り投げ、画面に食いつく。

 最初は「三原色」。本の飾られた素敵な空間に「赤」「青」「緑」の3色の光が灯される。いきなり配信間もない曲からのスタートに一気にテンションが上がる。

 この曲はたしか3人の幼馴染の曲だ。15年ぶりに再会。変わらない人と人との絆。

――私にはそんな幼馴染みいただろうか。

 実はいないこともないのだが、私は頭から追い払った。自分の弱さを忘れたくて。

 でも次の曲にドキリとした。――『ハルジオン』。変わらないと思ってたのに、卒業してから離ればなれになった2人。忘れられない恋人への想いが切ない歌詞が心に残る。

『過ぎてゆく時間の中 あなたを思い出す
 物憂げに眺める画面に映った二人 笑っていた』

『戻れない日々の欠片とあなたの気配を 今でも探してしまうよ
 まだあの日の二人に手を伸ばしてる』

 見覚えのありすぎる感覚。ikuraちゃんの歌唱にもつられ、ますますYOASOBIワールドに引き込まれる。

 でもあの人と私は、恋人ですらなかった。関係も幼馴染と言えるのかわからない。保育園で出会い、卒園で別れた。中学に入り12で再会、15で離れた。それから20の成人式でまた出会い、22歳のとき連絡を絶った。――それも私から。

 理由は今でもわからない。就職も何とか志望していたところに決まり、これから楽しくなるという時期だった。でも突然何もかもが嫌になってしまった。夢中だったはずのゼミの研究も、友達との卒業旅行の計画も苦痛だった。それから毎日胸躍っていたあの人とのやり取りも、口下手な自分が反吐が出るほど嫌すぎて苦行だった。

 それでも戻れないあの日の写真を振り返ってしまう私は、酷く自分勝手で醜い。


 ライブはここで今回の舞台と『SING YOUR WORLD』について。今回は有明のユニクロのオフィスでのライブとのこと。

 ……ユニクロさん、お洒落過ぎる。そしてYOASOBIさん、毎度「どこよ、ここ」という場所から演奏してくれる。

それと今回のライブタイトルは、ユニクロのスローガン『WEAR YUOR WORLD』から来ているとのこと。「自分の好きを歌う」、素敵な言葉。それから私はふと気づいた。

――やっぱり好きだったんだな、あの人のこと。

 当時は気付けなかった自分の気持ち。こんなときに気づくのなんて私くらいだろう。

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  「もう少しだけ」。明るい曲調に、ちょっぴり湿っぽくなった私も復活。何せ前回の「KEEP OUT THEATER」のときにはまだなかった曲。ライブで聞くのは初めてだから、テンションが上がらないわけがない。

 これは占いをきっかけとした3人の循環する幸せのお話。朝の曲のイメージだが、こんなライブラリー風な場所での歌唱もまた趣がある。

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 続いては『たぶん』。UTがたくさん吊るされた空間は非日常的なのに、どこか日常感も感じる。『二人過ごした日々』なんて歌詞からか、恋人が出ていったあと一人ぼっちの部屋を連想してしまった。どこか切なく感じるikuraちゃんの顔が胸に響く。

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 今度は「ザ・オフィス」感満載のお部屋へ。この色合いは前回のライブからして、導き出されるのは1曲。

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 そう、『怪物』。カッコよさと怪しさ満点のオフィスは、ちょっとした異空間だ。最後の『僕の中の僕を超える』。何度聞いてもそのカッコよさは、以前を超えてゆく。

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 続いてEpilogueからのアンコール。照明は白っぽくなり、オフィス感が戻る。とは言ってもそこで演奏しているのだから非日常感は変わらない。

 もし「明日世界が終わるんだって」なら、私はもう少し素直になれるのかな。そんな柄でもないことをひっそり思ってしまった。

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 続いては『夜にかける』。青いライトに照らされ、夜中の雰囲気に。……もしかしてこの中に「死神さん」がいたり、なんてね。

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 「本当にライブなんだよ」という言葉と共にコメントコーナー。今回は「Wi-Fiが……」なんてことも起きず、まったりと。ikuraちゃんのヘアスタイルずっと気になってたけど、「恐竜みたい」という言葉にクスリ。前回の「ぬくぬく」といい、ワードセンスが好きだなと思った。Ayaseさんの「おれは?おれは?」も思わず笑ってしまった。

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 場所移動して、『ハルカ』。172名の大阪桐蔭の吹奏楽部部員の皆さんと。

 まさに圧巻。その一言に限る。

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 ラストを飾ったのは『群青』。ドローンのスピード感と画面越しでも伝わる会場の一体感。紙吹雪で青く染まっていく空間。「青春」という文字が脳裏に浮かんだ。

『好きなものを好きだと言う 本当に怖くて仕方ないけど

本当の自分 出会えた気がしたんだ』

 1番好きな歌。それが最後に聞けたことが嬉しかった。だがそれだけでなく、『SING YOUR WORLD』というテーマにも凄く合っていると思った。

――自分らしくありたいな。

 肩の力を抜いて。自分の好きなものに正直になりたい。そうすればもっと前に進める気がした。

 そんなことを思いながら、私は数年前で止まったチャットをタップした。


***

長々と書いてしまいました!

最後になりますが、本当にサイコーでした!!

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