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「黒神話:悟空」トロコンしたゲームだけ紹介するコーナー

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前回

Fallout76から始まったコーナー。便宜上トロコンという言葉を使用しているが、正確にはプラチナトロフィーの獲得である。本編リリース後に追加されたトロフィーの獲得を含めていないことはご了承いただきたい。
尚、あくまでトロコンしたゲームの紹介であり、おすすめのゲームを紹介するコーナーではない。

どんなゲームなの?

私を含め日本人のライトゲーマーは海外のゲームといえば「洋ゲー」というように、西洋のゲーム会社が開発したものをイメージしがちである。
日本以外のアジアの国が開発したゲームは、和ゲー洋ゲーのビッグタイトルを遊び尽くしたコアなゲーマーがインディーズを開拓するように手を伸ばすもの、という認識なのが実情だろう。ソーシャルゲーム以外。
そう考えてみると2024年は面白い年であった。
韓国の「Stellar Bladeステラーブレイド」に本作である中国の「黒神話:悟空」と、ゲーマーのアジアに対する認識に変化があった年に思える。

さて、それでは黒神話:悟空について話していこう。
本作は言わずと知れた「西遊記」を舞台にしたアクションRPGであり、エネミー場所ロケーション、用語、思想などは原作の影響を大きく受けている。
では原作に知悉していなければ意味不明なストーリーとなってしまうのかといえば、そうではない。
恐らく多く方は西遊記がどんな話かをざっくりとは知っている。
このゲームのストーリーは「取経の旅の後」の話であり、そこに原作をなぞるだけではない独自性オリジナリティがある。

・本作はアクションに大きな比重を置いたゲームである。戦闘の見た目はソウルライクというよりも「弾きのないSEKIRO」に近い。
武器は棍棒こんぼうで固定であり、新しい武器の入手や強化を行なっても能力や見た目が変わるのみで、動きモーションが変化することはほとんどない。
弱攻撃を軽棍と呼び、敵の攻撃を回避することや軽棍を当てることで「棍勢ゲージ」を溜めることができる。
棍勢ゲージが溜まっている状態の強攻撃(重棍)を当てることで大ダメージが与えられる。
つまり、基本的な戦闘は「避けて」「小突こづいて」「ゲージを溜めて」「殴る」ということの繰り返しだ。
尚、この棍勢ゲージは重棍を当てることに失敗した場合にも消費されるので注意が必要。
強攻撃(重棍)のスタイルは3種類あり、いずれも戦闘中に変更が可能である。
これらのスタイルにはそれぞれ棍勢ゲージの消費によって発動可能な特殊モーションが存在し、使い分けによってかなり戦闘が楽になるので自分に合ったものを知る必要がある。

・西遊記原作にも登場したように、本作には色々な術が存在する。
主人公が使用できる術を簡単に紹介すると、「敵の動きを止める術」「敵から隠れる術」「分身を一定時間召喚して戦わせる術」「一定時間妖怪に変身して戦う術」などがある。
他にも術はあるが、設置スロットが競合するようにできているので、好きな術だけを装備することはできない。
これらの術の使用は変身以外は「法力」を消費し、また連続使用はできず、術ごとに異なるインターバルが必要となる。
また術の使用を妨害された場合、法力の消費はなくともクールタイムだけは存在する。

・序盤は法力の回復手段が乏しく、ダークソウルで言えば「篝火かがりび」、仁王で言えば「やしろ」にあたる「地神の祠」を使用することで回復できる。
これを使用すると倒した敵も復活するのはお馴染みの仕様。
この「祠」間はファストトラベルが可能であり、当然クリア後のステージに戻ってくることもできる。

・NPCイベントも存在しており、その仕様はエルデンリングやダークソウルに似て、気付かなければ普通に見逃してしまう。
本作は周回プレイが可能であるが、周回しなければ取り返しのつかない要素がいくらか存在するので、嫌な方は攻略サイトを参考にした方が良い。

・本作は章ごとに区切られており、章末には大ボスと戦闘することになる。
本作はステージ攻略を本当に丁寧に進めると隠しステージに行き着くようになっており、この隠しステージをクリアすると、大抵は章末のボスに対して有効な「法具」を入手できる。

・フィールドに存在する一部の妖怪は、倒すことでその妖怪の姿を得ることができる(借身の術)。
これは術による一定時間の変身(変化)とは異なり、仁王2の「妖怪技」のように、技を出す瞬間だけその妖怪に変身するものである。

・まとめるとフィールドを探索して「地神の祠」を解放しつつアイテムやNPCイベントの回収をしていき、妖怪を倒すことで妖怪の技や経験値を集めて自身を強化し、隠しステージの攻略によってボス戦を有利にした上でボスに挑む、というのが基本的な遊び方となる。

で、面白いん?

本作を単にアクションRPGとして見る場合、難易度調整には疑問符がつく。私は前項で書いた「法具」や隠しステージに終盤付近で気がついた人間である。
私がプレイしていた頃は攻略サイトも編集中であり、多くのプレイヤーは手探りで攻略していた。
それを踏まえて考えてみると、いわゆるトゥルーエンドのラスボスを除けば攻略に1時間以上を費やしたボスは存在しなかったものの、難易度が高すぎたのではないかと思う。
特に4章のボスを「法具」を知らずに倒した身としては、理不尽を感じた。

・本作では他のソウルライクとは違って死亡時のペナルティが無いので、探索や戦闘が幾分気楽である。
また、経験値によるステータスやスキルの強化はいつでもやり直せるので、そこまで慎重になる必要はない。

・こう言ってしまっては角が立つだろうが、本作の最も特筆すべき点は製作陣の熱意であろうと私は思う。
本作は章を終えると特別なムービーが流れるのだが、中でも6章のものは何度でも見てしまう。本編のネタバレにはならないので少し語ると、西遊記原作の内容を逆に再生したものとなっている。
以下に少々解説しよう。
尚、内容は株式会社平凡社1971年10月20日発行の中国古典文学大系第31、32巻「西遊記 上下(太田辰夫、鳥居久靖 訳)」に準拠する。

取経の帰りに通天河を渡るシーン。詳しくは下巻447〜452p

ちなみに文言から見て前者が「金剛般若経」で後者が「大般若経」。

鳳仙郡ほうせんぐんで日照りを解決するエピソード。下巻339〜346p

比丘びく国におけるエピソード。下巻260〜276p
ちなみにこの国の王をたぶらかしていた美人の正体が白狐だったのは興味深い。

大鵬金翅鵰きんしちょうの正体が分かるエピソード。下巻256〜259p

小西天の後に訪れた駝羅だらにおけるエピソード。下巻152〜161p

九頭駙馬のエピソード。ちなみに駙馬とは皇女など高い地位にある女性の婿のことをいう。
下巻112〜127p

六耳獼猴びこうのエピソード。色々な解釈があって面白いが、個人的には自作自演説は違うと思う。下巻66〜82p

独角兕どっかくじ大王のエピソード。
下巻3〜26p

車遅国におけるエピソード。上巻373〜404p

原作における紅孩児とのエピソード。子供に化けて木に吊されたフリをして助けを求めたりした。上巻338〜366p

白骨夫人のエピソード。上巻235〜242p

人参果のエピソード。上巻211〜234p

沙悟浄を仲間にする際のエピソード。
上巻192〜199p

五行山に封じられた悟空を解放するシーン。
上巻126〜128p

お釈迦様と悟空の賭けのシーン。あまりにも有名。上巻61〜65p

天との戦い。上巻47〜58p

幽冥界でのエピソード。上巻28〜32p

多少独自の解釈はあるが、西遊記への熱意が伝わってくる。
また、5章のムービーで悟空の六根ろっこんを↓のように表していたことに言及したい。

これは山海経せんがいきょうにある并封へいほうであろう。
力及ばず一次資料が見つからなかったのが残念なのだが、「并封は毒を持つから触れてはならない」という話があるらしい。
「触れてはならないモノ」のメタファーとして悟空の六根を表したとも解釈できる(多分)。
一応中国語版の山海経にも目を通してみたら、并封の記述には「ヘイ」とあった。時代よるが中国語の「黑」にはかなり悪い意味があるので、そういうことかな、と勝手に考えている。

完全に余談だったので本題に戻ろう。

・戦闘に関してだが、やはりビルドの自由度が高いとは言えない。揃え効果のある防具なども存在するが、ダークソウルなどのようにまるっきり戦法が変化するようなことはないだろう。
先程紹介した基本的な戦闘を踏まえて説明するなら、

まずは「借身の術」によってダメージを与え、再装填を待ちつつ「軽棍(弱攻撃)」で叩いて棍勢ゲージを溜める。
隙をみるか、術などで隙をつくって「重棍(強攻撃)」で殴る。
法力消費量や術のクールタイムを意識しつつ必要に応じて回避や隙づくりのために術や「法具」を使用して殴る。
つまり、「棍勢」を溜めて叩き込むことの繰り返しが本作における戦闘と言っても過言ではない。
ダメージソースとして信頼できるのは棍勢の溜まった「重棍」、亡魂などの「借身」、「変化」によるゴリ押し、「分身」である。
それでもダメならアイテムによる能力強化バフを使用する、というのが最終的な戦い方になるだろう。尚、マルチプレイは無い。

プラチナトロフィーは難しい?

発売当初は海外のサイトやXを利用しなければアイテム収集も難しかったが、今現在ならある程度は整っている。
取り逃がしは周回確定なので、プラチナを取得したいのならばYouTubeなどで必要要素を網羅した動画を参考にすると良いだろう。

・ボスの撃破に関するトロフィーは現状最も低いもので25%となっており、4人に1人が突破している。
全体の中で最も取得率が低いトロフィーは6.8%の「飲食十全」であり、アイテム収集系のトロフィーだ。一部ドロップマラソンを必要とするアイテムもあるが、ダークソウルなどと比較してかなり甘いドロップ率である。
アイテムはともかく戦闘面でのトロコン難易度はさほど高くはないと言える。
最大の敵は取り逃がしによる意気消沈であるので、事前の下調べによってチャートを作成して進めていけば、まずトロコンできるだろう。

ネタバレ感想と遊ぶコツ

・恐らく2章で黄風大聖や虎先鋒と戦うまではボスが弱すぎるように感じるだろうが、難易度はここから大きく上昇する。
虎先鋒の場合適当に回避をしているとワンパンされる。黄風大聖の竜巻はこちらの大技も強制的にキャンセルして打ち上げてくるので、あったまりたくたければ原作の悟空のように霊吉菩薩(定風珠)に頼るべき。
ただ、私が定風珠の存在を知ったのは5章終盤であったので導線には少し不親切さを感じた。

・3章の黄眉では演出上確定でダメージをもらうのが不満であったが、刺繍針無しで挑む4章の百眼魔君よりはマシと言える。
それでもボスの難易度は顕聖二郎真君と小黄龍に偏っていた印象で、死因の大半はこの2体だった。
正直、紅孩児は1、2戦で慣れるし夜叉王は初見でも勝てるくらい弱い。
ラスボス戦は遊び心満載なので初見時は驚かされる。

・回避の距離が短いので、位置取りによって避けるよりも序盤からジャスト(攻撃に当たる直前に)回避することに慣れておいた方が良い。

・盤糸洞の敵はちょっと許されざるデザインだった気がする。

・四天王戦がすごく楽しい。

本作は2024年のGOTYゲームオブザイアーを取り逃がしたことで最近また話題にあがるようになった。
開発陣も納得がいかないようであり、それだけ力作であったことが伺える。
正直なところ気持ちは分からないでもない。
ただ、2024年のGOTYに輝いた「アストロボット 」に比べると、万人ウケするかという点で疑問が残るだろう。もちろん、過去のGOTYを見れば受賞の基準に不信感を持つことも理解できるが。

結局、友人や知人に対して「黒神話:悟空」をおすすめできるかと言われると、「エルデンリング」などのようには紹介できない。
だが熱意も作り込みも素晴らしく、私は黒神話:悟空をプレイしたことがきっかけとなり西遊記を読むことになった。
そして読んでみると所々に小ネタやオマージュなどがあることに気づき、ゲーム自体の面白さだけではなく、宗教や哲学について考える際と同様の面白さも味わえたと思う。

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