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親が陥る間違った「期待」のかけ方とは?

5万組以上の親子を見てきた花まる学習会の代表 高濱正伸さんとラグビー界で「コーチのコーチ」として活躍する中竹竜二さんの人育て=子育て論を見ていきます。

■中竹竜二さんの視点
親が陥る間違った「期待」のかけ方とは?

私は、小さいときに先生や親からそんなに期待されていなかったので、周囲からの期待を感じずに育ちました。しかし、世の中にはいろいろな期待を背負ってきた人も少なくないと思います。

「期待」というのは、字面の通りだと「期を待つ」ということです。つまり、待ちの姿勢であるはずなのです。ところが、「期待しているんだから頑張ってよ」などと、どちらかと言うと「待ち」ではなく「攻め」の意識で声をかける人が多いように思います。私はそこが根本的に間違っていると思うのです。

身近な相手であればあるほど、その状況が見えてしまう。それゆえ、「もう少し頑張れないのかな?」と思う。また、そう思うだけならまだしも、身近で自分の声が届く存在であるために言葉もかけやすく、「もっとこうしたら?」とか、「がっかりさせないでよ!」などと、半ば命令であるかのように伝えてしまう。

期を待たず、要望やオーダーをしてしまっていませんか!?


多くの人にとって、期待されるというのは本来嬉しいことのはずなのに、実際にはただの重荷にしか感じられないのは、期待をかける側がその言葉の域を超えて、「要望」や「オーダー」をしてしまっているからだと思います。

コーチや親の立場で考えると、自分のコンプレックスを他者(選手や子ども)に押しつけている場合もあるでしょう。そのコンプレックスが満たされたり解消されたりすることが、自分の内側にある承認欲求を満たすことにつながっている。その手段として、相手への「期待」になっているのではないでしょうか。



子どものうちは、身近な他人が自分に求めるものと、本来自分がやりたいこと、自分が成し遂げたいことの違いがわからない
ため、深く考えることなく言われた通りにしてしまいがちです。すると、段々と考えることをやめてしまい、それが続いた結果、他人軸でしか生きられなくなってしまうことがあるように思います。

よく医者の子が医者になっているけれども、本当は「医者にはなりたくなかった」という話は珍しいことではないでしょう。結局、本人も「自分が本当は何がやりたいのか」を考えることなく、親からの期待に応えるため、あるいはそのプレッシャーから、自分の思いや願望に気づくのが難しくなってしまうのです。

期待の内容は、意外と曖昧

その期待が、親自身のコンプレックスの裏返しになっている場合には、「結果じゃないよ、努力のほうが大切だ。頑張る姿を期待しているよ!」などと最初は言っておきながら、実際に結果が出ないと、「やっぱり結果だよ!結果が出なかったら意味がない」などと言ってしまう。

自身のコンプレックスを他者に投影して、代わりにコンプレックスを克服してもらおうしているわけで、自分では何もできない分、歯痒くて腹立たしくなるのですね。

さらに、期待の内容が「曖昧」な場合にも、行き違いが起こりやすいと言えます。有名大学や有名企業に入ることを期待しているのであれば、仮に生活態度が崩れていても、入学や入社できさえすればそれでいいということになります。

しかし、大抵の場合、有名大学や企業に入るという結果だけでなく、そのプロセス(結果に辿りつくまでの手法)や態度(その結果に辿りつくまでの取り組みの姿勢)も同様に求めているはずです。したがって、たとえ成果を出したとしても、プロセスや態度が自分の求めているものと違う場合には、苦言を呈することになる。

そうなると期待されていた側としては、結果を出したのに文句を言われることになるわけで、それが原因で信頼関係が崩れたり、期待をかけられる側のやる気を喪失させたりすることになりかねません。

このように、「曖昧さ」のせいで勝手に「期待外れ」という烙印を押すことにならないように気をつけたいところです。
 
人が抱く期待というのは、往々にして自分の視点だけで語られることが多いと心得ておくべきだと思います。特に親が子どもに「期待」という言葉をかけるときには、その意味を今一度考えてみる必要があると思います。

■高濱正伸さんの問題提起
親の陥る「期待」という呪縛はいつまでつづくのか。


就職においても親の期待を裏切れない子が多いです。自分の人生なのに、母の期待を背負って医学部とか有名企業とかを受けるんです。根本的に、やはりお母さんが好きで喜ばせたいという意識があるんですね。 

でも、自分のやりたいことで起業できそうだとか、もっと違う道を究めたいという夢があるのだとしたら、そこで「親の期待を裏切れないから」という理由でそのまま就職してしまうなんてすごくもったいない。
子ども自身も期待を跳ね除ける強さを持つことが大事だし、親も期待のかけ方を考えていくことが必要でしょう。
そのほうが親も子もずっと幸せな人生を送ることができると思います。


―『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』より抜粋・編集 ※対談で高濱正伸先生が登場します!

◆『オフ・ザ・フィールドの子育て』の紹介◆
本書では、「多様性」というキーワードに着目し、それを独自に育んできたラグビーに学ぶことで、子どもたちに多様性を身につけてもらえる、子育てをよりよくできるのではないかと考えました。

教えてくれるのは、「コーチのコーチ」をしてきた“教え方のプロ"である中竹竜二氏
さらに、花まる学習会を主宰する高濱正伸先生から、著者の考えに対して、
「子育て」や「学び」の観点から、適宜コメントを入れていただきました。
また、巻末にはお二人の対談を掲載し、ラグビーに学ぶことの意義についてご紹介しています。

改めて「ワンチーム」という言葉の意味や、ラグビーが大事にしてきた「オフ・ザ・フィールド」という考え方を知ることで、わが子の個性をどのように活かしたらよいかを考えるきっかけとし、わが子が実際に輝ける場所を親子で一緒に見つけてほしいと思います。

“サンドウィッチマン推薦! "
ラグビーがなかったら、いまの俺たちはいなかったと思う。
「中竹さん、ラグビーから学んだことは、今に活きています! 」

―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

中竹さん 250

株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

2020年、初の育児書『どんな個性も活きるスポーツ・ラグビーに学ぶ オフ・ザ・フィールドの子育て』を執筆。


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