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天界のティラノサウルス
こんにちは 今回は初めて物語を作ってみました。ドキドキの投稿ですがご一読下さいませ。。
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「ティラノサウルスは宇宙で一番優しい存在なのに、この映画は間違ってる。。」
珍しくティラが怒っている。ティラが観ているのは昔地球で流行っていた、蚊の血液から甦った恐竜たちの映画。ティラは6才くらいの人間の子供に見えるけど、本当はティラノサウルス。何かに夢中になると牙と尻尾が出てくる。可愛らしいけど気を付けないと。
私はアル。古代地質学者。大学でも教えている。
ティラと初めて会ったのは今から三年くらい前。私がいつものように散歩をしていると道の真ん中に光るものを見つけた。雫型の石、のような、少し黄色っぽいペリドットみたいな緑、光にかざすとルビーのような深い赤やサファイアのような青も見える。少し柔らかく温かい。私はこれでも地質学が専門なのだ。地球のものではないことはすぐに分かった。
早速自宅に戻り、調べようとすると私の部屋に子供がいた。不思議な目の色をしている。さっきの石のような、、石が無い。。
君はどこからきたの、どうやって家に入ったのと聞いてもなにも答えない。上を指差し少し笑った。私が困惑していると、大丈夫、と聞こえたが、声はしない。何か心に直接入って来る感じがした。おとぎ話のような展開を信じたくはなかったけど認めなくては。
なんとなく隠し事はできない気がしたのでいろいろ質問をしてみたが、その時に分かったのは私に会いに来たということだけだった。私が、そう、と答えると、とても嬉しそうに、うんっ、て大きく頷いた。その笑顔を見ると理由などどうでもいいと思った。
それから3年、ティラはなにも食べず、ほとんど話すこともなく、ここで過ごしている。何となく不便なので名前は私が付けた。自分はティラノサウルスだと教えてくれたのでティラ。
あと、分かったことは恐竜たちは隕石の衝突で絶滅しなかった、地球を脱出したこと、メッセージを残すために地球に留まったものたちの骨が博物館に保管されているが、今の人間にはそのメッセージが理解できないこと、ダメージを受けた地球を修復するために宇宙のあちこちから集まったものたちの何人かが地球に残って人間として暮らすようになったこと、ティラは人間のように食事をとる代わりに素粒子をエネルギーにしているから、宇宙でも生きられること、そしてティラの世界はとても美しいということ。
ある日、ティラに地球に伝わるかぐや姫の話をしたとき、なぜがとても神妙な表情をした。かぐや姫の主人公のようにティラも何処かへ帰るのかもしれないと予感した。その翌日、アル、一緒に行こう、とティラが初めて私の名前を呼び、手を取って言った。その日は大学の講義がある日だったが、もうどうでもよかった。
いつのまにか、私にとってティラはかけがえのない存在になっていた。
ここは天界、天国にちがいない。ティラの世界か。ひときわ美しい虹を纏っているようなティラノサウルス、一目でティラだとわかった。頭上には羽のあるイルカのようなものが飛んでいる。真っ白でフワフワしているのも恐竜なのだろうか。甘い香りが漂い暖かく心地良い。
ただ、私はこの何もかも美しく穏やかで平和な世界にいつまでも耐えられるのだろうか。
そう思った瞬間、闇に包まれ意識が途切れてしまった。気がつくと大学の医務室のベッドの上だった。講義中に倒れたらしい。帰って休めといわれたのでそうすることにした。ティラはどこだろう。あれは夢なのか。
意識を失う瞬間、またすぐに会える、とティラの声が届いた。ティラのすぐは私にとってどのくらいなのだろう。一年、十年、それとも百年か。
しばらくして、博物館にある恐竜の骨を見に行くことにした。どんなメッセージなのだろう。人間もティラたちのような優しい世界で暮らせるようになる方法か、何かあった時に地球から脱出する方法だろうか。今は想像もつかないけれど、自分が古代地質学者になった理由が分かった気がする。メッセージを理解したときに、またティラに会えるのかもしれない。
早く、ティラに、会い、たい。
そう願いながら骨に触れるとティラの笑顔が見えたような気がした。
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いつもは皆さんの作品を読んでいるだけでしたが、こうして自分で作るとその難しさを実感しました。でも、異世界へ行ったようで楽しかったです。普段は眠っている脳の一部が活性されました。
私は恐竜とか化石も好きで、博物館にも出かけます。ティラノサウルスはカッコいいと思うと同時に、狂暴な恐竜というイメージに違和感も持っています。狂暴という言葉は人間社会だけのもの。自然界に狂暴なものは無いと私は思っています。そして、人間は地球由来の生き物ではないかも、って時々思うのでこんな物語になりました。
拙い出来ですが読んでくださってありがとうございます。
また、このきっかけを会えてくれた静馬さんに心から感謝いたします。
こちらは最近の静馬さんの投稿で特に好きな作品のひとつです。
感謝と共に。
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