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高校の先生!試験官って眠いですね!気持ちわかりました!

高校生の時、何度も何度も模擬試験を受けた。
無論、大学受験の模試だ。僕は大学受験をしたかったし、それを推奨する学校と親のもとにいたのだから、それは当たり前の話だ。

にもかかわらず、模試を受けるときにはいつも文句を言っていた。
「長い」と。
これは、模試の唯一にして大きな難点だ。

仕方がないのはわかっている。国語、数学、英語、理科、社会。これら全ての試験を1日に押し込んで受験するのだ。1科目100分以上の試験も存在するのだから、総じて長いのは当然だ。しかし、僕たち受験者にとって、それは過酷以外の何物でもなかった。


そして、その過酷を監督する立場に、大学4年生になった今、立つことになった。試験官のバイトを始めたのだ。

高校生や浪人生が真剣な面持ちで試験に臨む姿を、僕はただ黙って見ていた。
椅子に座りながら、自分の過去の思い出に身を委ね、無限にも思える時間を過ごした。

朝早くから起きて試験を受ける受験生たちと共に、眼をこすりながら椅子に座り続ける。

しばらくして、お昼時になった。すると、窓の外、道路の向こう側に位置する洒落たレストランに行列ができ始めた。その様子を、教室の中で試験を受けていない唯一の人間である僕はぼんやりと眺めていた。

一時間ほどその行列を眺めていたら、とある幻覚が見え始めた。
僕の目の前で真剣に試験を受けている受験生たちが、この先進むであろう”道”の幻覚だ。それは突如として具現化し、そこに現れたのだった。

それを見た僕は感情を失った。

道の行く末は、窓の向こう側に見えている行列の最後尾だったのだ。

彼らは模試だけではなく、本試験ももちろん受けるのだろう。そしてその試験にいずれは受かり、大学生になり、そして社会人になる。自由な時間やお金をたくさん手に入れることができるのだ。そのお金や時間を何に使うか。

おそらく、少なくない人数が、窓の外で行列をなす、あの窮屈そうな人々と同じような事柄にそれらを使うのだろう。


彼らは何の為にこんなにも過酷な試験を受けているのだろうか、と思った。

そして、僕は一体何の為に生きているのだろうか、とも。

決して行列に並ぶ為ではない。
決して金を稼ぐ為でもない。
そして、決して生きる為に生きているわけでもない。

それでは何の為に、今与えられた仕事や課題をこなしているのか。


生きる為にはお金を稼がなくてはいけないよ。

そんなことはわかってる。

その為には勉強をして、いい大学に入って、いい企業に就職するべきなんだよ。

うるせえなあ。

だったら何?あんた、自分が好きなことをひたすらに追いかけて、それを食い扶持にしていける自信でもあんの?

い、いや、それは・・・

ないでしょ?だったら勉強して就職するのが一番簡単なんだから、黙ってそのイージールートに乗っかってなさい。それとも死にたいの?

はい・・・いや、その、すみません。


頭の中にいる母親にさえも、僕は言い負かされるのであった。


試験官、暇です。

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