ちょっと変なこと言わないと寂しくて気狂う。
大学生活4年間、外出自粛もあいまって、相当な時間を過ごしたであろう自宅アパートを引き払い、会社の寮に住み始めた。
環境の変化に体がうまく対応できなくて、最初の3日間は夜に目が覚めてしまったり、朝起きて「知らない天井だ・・・」とシンジくんばりのパニックに襲われたりもした。
しかし一週間も経てば、「慣れ」はいつの間にか自分の隣に寄り添って生活に馴染みきっているものだ。もう夜に目が醒める事もなければ、天井を見てパニクる事もない。
苦しい点を一つ挙げるならば、寮なのに一人も友達ができていない点か・・・・・・泣きそう。
そんなこんなで、昨日入社式に行ってきた。
やはり朝早起きをするのは苦しい。早起きは三文の徳というが、僕は体を痛めつけているだけとしか思えない。「早起きは(人によっては)体に悪い説」を今後も提唱していきたい。
今にも閉じてしまいそうな目を擦りながら慣れない駅で慣れない電車に乗り込む。満員電車は高校の時からの慣れっこなので別に構わないのだが、僕がこれから使う路線は如何せん治安が悪いようだった。
足を踏まれたのに舌打ちをされ、つり革に意地でも捕まらないおじさんにタックルされ、華奢な僕は体ごと吹き飛んでしまいそうだった。
電車の中で、スーツを着た気の毒そうな目をしたおじさんを見て、「気の毒そうだなあ」と思っていたのだが、そういえば今日から自分も同じ立場だったと思い直し、自分が気の毒になった。なんだかんだこれが一番きつかった。
しかしなんとか体の形を保ったまま20分間の戦いを終え、目的地に到着。
会社幹部様および社長様のありがたいお言葉を長時間頭に通過させ、閉じてくる瞼をなんとか押し上げながらも入社式を終えた。
僕は家に財布を忘れてしまっていたので、入社式後の「飯行かね?」に参加できず、涙を2リットルほど流しながら寮に帰った。
家についても止まらない涙を拭きもせずに雀魂をしていると、大学の友人からラインが
「飲みに行かね?」
僕は即レスした。
大学時代と代わり映えのない景色。
環境は変わっても、あんま何も変わってないじゃん!
そんなふうに思って、少し嬉しい気持ちで寮に帰った。
帰寮してシャワーを浴び、コーヒーを淹れて本を読んでいると、再びスマホが鳴った。
見ると、後輩からの『楽単教えて』ラインだった。
僕は何が楽単だったかを考えた。授業の名前が思い出せなかったので大学のマイページにログインしようとした。顔認証。それはいつも簡単に開いていたはずだった。
当たり前だが、ログインすることはできなかった。
僕はうろ覚えの授業名を後輩に送信した。
履修登録やっぱめんどくさいですわ〜!
そう言う彼のメッセージを見て、僕は思った。
嗚呼、諸行無常。ピエン。