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立派な大人への道のりは長い。

居酒屋の時短営業が終わった。

時短営業といえども、夜の8時までの営業というのはほとんど閉店しているのと同義だと僕は思っている。飲み会は夜の10時からが本当のスタートだ。それなのに、その遥か二時間前に閉店されてしまっては、それはもう飲み会ではない。ご飯会だ。

まあ、そんな僕の若干の酒癖の悪さはどうでも良いとして、先日、久々に友人達と居酒屋に赴いた。
普段はできるだけ静かな場所が良いので、安い!早い!静か!を求め街を彷徨うのだが、居酒屋というものがあまりにも久しぶりだった為、テンションの上がりすぎてしまった僕たちは、人の多くてうるさい大衆居酒屋に行くことに満場一致(3人)で可決したのだった。


繁華街のど真ん中、チェーン店なのかそうでないのか、それすらもよくわからないような店の扉を僕は開けた。すると店の中から、まずは大きな笑い声、次にムッとした空気とタバコの匂い、そして最後に店員さんの「ラッシャイやセーー!!!」というとてつもなく大きな声が、蝗害のように猛烈に押し寄せてきた。それは僕の生命力と「しこたま酒を飲むんだ!」という気概をものの3秒もかからない間に食い荒らしていってしまった。
だが、背後にはウキウキワクワクしている友人が二人。すでに後に引けるような状況ではなかったことを僕は思い出した。

腹に力を入れて居酒屋に入り、手前の席に通される。灰皿を机の真ん中に置き、ひとまず煙草に火をつけた。

一息ついたのもつかの間、次の瞬間には店員さんがすでに机の横に立っていて、ハンディー片手に一杯目の注文を待っていた。
少しだけ不意をつかれたが、僕は一杯目をビールと決めている。サラリーマンの如き正確さと速さで、僕は生ビールを注文した。そして友人二人は、ビールとハイボールをそれぞれ注文していた。
彼ら二人はなぜかとても友達が多い根明人間たちなので、僕のようにペースを乱されることもなく、楽しそうにしていた。

久々の居酒屋の雰囲気に初めは飲まれそうになったものの、僕は次第に自分のペースを取り戻し、上がったテンションそのまま徐々に酔っ払っていった。


そして気がつくと店を出ていて、酎ハイ片手に外でベロベロになっていた。

翌日のバイトは朝の10時から。家から1時間半もかかる場所。頭の片隅に置いていたはずの情報が、いつの間にか神隠しにでもあったかのようにして消え失せてしまっていた。

僕はその日、終電まで全力でお酒を飲み、大学生活を謳歌するダサ人間へとその姿を変えた。いや、かつての姿を取り戻したと言った方が正しいのかもしれない。

久々の感覚に千鳥になってしまった僕の足たちは、心なしかとても嬉しそうに見えた。


翌日の朝、7時半。起床。
吐き気、眠気、倦怠感。トリプルコンボに見舞われながらもシャワーを浴び、8時過ぎの電車に乗り込み、バイトに向かった。

電車の中では、「気をぬくな。倒れるぞ。」と1時間半立ちながら心で唱え続けた。

倒れなかった。

僕はまだやれるようだ。

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