鍋の旅
20代の頃、ある雑誌を見て一目惚れした鍋がある。
南部鉄で作られたかわいい鍋だ。
当日、関東で暮らしていた私は実家の母に頼み、その鍋を探してもらうことにした。
インターネットなどまだ普及していない時代だ。
南部鉄器を売っているお店をあちこちまわってもらったものの、なかなか見つからず諦めかけていたその時、なんと家の近くのお店で見つけたとのこと。
さっそく、買って送ってもらった。
フォルムがたまらなくかわいい。
ただ眺めているだけでも幸せになれる。
休日は朝から、この鍋を使うための料理を考え、買い物に行き、調理する。
そんな日々を送った。
その後、地元に戻ることになり
もちろん、その鍋も一緒に引っ越した。
かれこれ20年以上、連れ添っている。
そして、たくさんの奇跡が重なって
いつの間にか、その鍋を製造している窯元さんと一緒にお仕事もさせてもらえるようになった。
こんな素敵なご縁があるだろうか。
神さまはなんて素敵な計らいをして下さるのだろう。
あの日、あの雑誌を見ていなければ
想像も出来なかった、今。
今度は九州まで連れて行く。
次はどんなふうに繋がっていくのか
楽しみだ。