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好きじゃない人と付き合った男の末路

 昨年マッチングした女性とは趣味が一緒だった。それは、野球観戦。球場デートでは、2人で応援していた球団が勝利し、視界の左端から両手が伸びてきた。応援チームが勝って歓喜のハイタッチ。野球観戦デートの醍醐味だろう。喜んでこちらも両手を伸ばすと、その手の主は彼女の左横にいたおっさん。その人はビールを飲みまくったせいで全身の力が抜けていて、指と指が開いた状態かつ僕に体を預けるような体勢で来た。よって絡み合うお互いの指。人生初の恋人繋ぎの相手はそのおっさんとなった。彼女は危険を感じたのか、「私の両手はふさがっています」と言わんばかりに自席での拍手に全力を注いでいた。

 2回の球場デートを経て、3回目のデートは野球場とテーマパークが融合した街・東京ドームシティ。デートが「野球→野球」と続いたなかで、違和感のない場所のチョイスができた。それはさておき、アトラクションを楽しんだのちに告白も成功したのだが、その後あることに気づいてしまう。
僕、この人のことが好きじゃないな。
当時の自分は、出会いのない現状に焦るあまり、時間術の本に書いてあった「恋愛は妥協」というアドバイスを真に受けていた。僕は相手選びを妥協して、「女性とカップルになれた」という偉業の達成に満足していただけだったのだ。

 一方で、彼女も僕のことを好きではなかった。「男」の形をした容器を求めていただけだったのだ。彼女は付き合いたての段階で、男女で行うネットリとした共同作業の意思について尋ねてきた。内心でドン引きしながら後ろ向きな答えを返すと、彼女は次に会ったときに別れを切り出した。最後の別れの日は、カップル席を予約していた花火大会があったので、2人で一応花火を最後まで観て即関係解消。カップルが愛を深めるイベントの代名詞・花火大会が最後のお別れの場所となった。花火が散っていく様子は「この関係も散るんだなあ」と感じさせる趣があった。

 付き合ってから彼女と会ったのはたった4回。交際期間2ヶ月のスピード破局。カップルらしいことをほとんどしていないので、彼女は「元カノ」ではない。この文章を自宅で執筆している今日、外から打ち上げ花火の音が聞こえてきた。「ドン、ドン」と音が響くたびに、当時の苦い思い出がどんどん蘇ってきた。
恋愛は妥協しすぎない方がいい。
ちなみに、彼女とは恋人繋ぎを1回だけやった。球場のおっさんに続いて人生で2回目。
いつか3回目があるといいな。
僕は来世に期待している。

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