サークルの冷遇とバイト先の厚遇
僕は大学生の頃、雑誌サークルに所属していた。部室で新入生の女性と話していると、最寄り駅が同じだと判明。その流れで、駅周辺のどのエリアなのかを尋ねたところ、その人は「いや、ちょっと・・・」と口ごもった。ローカルトークで盛り上がりたいという一心だったのだが、「コイツに家の場所をバラしたくない」と思われてしまった。
旅行サークルにも所属していた。そこで知り合った女性AからLINEが届いた。「プライベートで飲みに行きたいです」。蓋を開けてみると、Aの女友達Bと男2人(C、D)が参加する飲み会だった。開催された理由は、BがCに好意を持っていたから。「男女2対2だと合コン感が強い」と判断した女性陣が、それを消すカモフラージュのために僕を呼んだのだ。4人は全員1年生。当時の僕は4年生。自分だけ完全に浮いていた。女性2人に「あのチョロい先輩なら盛り上げ要員として誘えるわ」とナメられたのだった。
一方で、バイト先のドラッグストアは愛のある環境だった。その証拠の一つは僕のあだ名。親しいバイト仲間からは「王子」と呼ばれていた。小学生の頃、顔の渋さゆえに「男梅」と呼ばれていたのが噓のようである。プリンスこと僕は、ドラッグストア店内という小さな領土で、プリンセスたちと良好な関係を築くことができたのだ。
ある日、バイトを終え、リア充感満載の女性従業員と一緒に帰っていた。僕が旅行の予定について話していると、そのリア充さんは「カノジョさんと行くんですか?」と聞いてきた。僕にカノジョはいない。誰と行くのかが気になった場合、「どなたと~」と聞くのが安全だろう。しかし、彼氏がいて当たり前のリア充にとって、「旅行はカップルで行くものだ」という認識になっているのだ。リア充からそんな質問を喰らったらイラッとする独身男もいるだろうが、心の広い僕は違う。「カノジョがいておかしくない男性」に見えていることが分かり、感謝の気持ちが湧いた。
また、ある日の帰りは急に雨が降ってきた。そのリア充さんを傘に入れてあげようとした瞬間、ある疑問が生じた。
相合傘ってどうやるの?
経験不足を隠すように、すまし顔で傘をシェア。僕の折りたたみ傘はとても小さかったので、相手の温もりが密に感じられた。こちらの緊張も向こうに伝わっていただろう。
僕は体のいろんな部分を硬直させながら、ぎこちなく歩調を合わせていた。