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50円玉7枚で思いに耽る【銀行の待ち時間って長いよね】
先日、銀行に行った。
ニートゆえに平日の昼に行けるのだが、なんやかんやで銀行についた時には14時を回っていた。出不精がこじれるとこうなる。
番号札を持って椅子へ。
スマートフォンをいじってもよいが、せっかくの外出。
家で出来ることを外でするのはやめよう。
たかが銀行への諸用ですらイベントにしてしまうのがニートの醍醐味だ。
考え方次第でイベントになるので、やるだけ得。
さて、銀行に来た理由は「残家賃」を払うためだ。
「残家賃」なんて聞き慣れない言葉だと思うので、説明する。
私は家賃を一年単位での先払いをしている。
少しだけ安くなるとかいう制度があるし、どうせ払うんなら仕事をしていてお金のあるうちに払ってしまおうと昨年の自分は考えたようだ。
ニートの今、過去の自分には多大な感謝を伝えたい。
だが先日、管理会社からこんな手紙が届いた。
「家賃の値上がりにより昨年はらった金額じゃ足らないので残りを銀行で払えこんちくしょう」
それは仕方がない。
情勢がそうなのだから、私が何かを喚いたって何も変わらない。
でもそれならコンビニで払えたり、スマホ決済出来るQRコードを載っけた紙を送ってくれたほうがありがたかったんだけど。
閑話休題。
さて、値上がりといっても些細な金額だ。
令和風に言うと北里柴三郎を数人程度。
待ち時間の暇つぶしを考えていた私は、リュックの中から財布を取り出した。
まさか財布にその金額が無いわけ無いだろうと中身を覗いてみると、私の心配を他所に野口さん数人のほか樋口さんもいらっしゃった。
安心だ。
私はなんとなしに小銭入れも覗いてみた。
開けづらいジッパ。
昔の彼女から貰った使いづらい革の長財布にはもうとっくに慣れた。
そこには、50円玉が7枚入っていた。
50円玉が7枚。
レア硬化である50円玉が7枚も。
なぜこんなことに。
一瞬の疑問は一瞬で解決する。
「彼らは残るべくして残ったんだ」
私は記憶を巡らせた。
私は「持たない人間」にあこがれているフシがある。
物理的に多くの物を持ち外に出たくないのだ。
単純に重いし管理がしづらいし、何かとよく無くしたりするからだ。
そのフシのおかげでか、今はスマートフォンがあれば、クレジットカードタッチ払い、Suica払い、QR決済(3種類)が可能になっている。
家の鍵も自転車の鍵もスマホで開くので、本当にスマホ一台あれば外に出れる状態になる。
スマホを落としたらとんでもないことになるのは理解している。
このご時世、様々な店で様々な支払い方法が使えるのは皆様もご存知だろう。
スーパーでもQR決済が出来る。
月に数度通っている歯医者でもカードのタッチ払いが出来る。
ファミレスや回転寿司なんて入店から退店まで店員さんに会わずに事を済ませられる。
何度かの説得を行い、友人との飲み屋での割り勘もなんとかペイで出来るようにした。
そんな人間なので、現金を使う機会が本当に限られる。
恐らくいちばん最近使った現金の使い所は甥っ子と行ったゲームセンターだ。
ようしオジサン腕を見せちゃうぞ、とクレーンゲームの中で口を開けて待っているポケモンのなにやらのぬいぐるみを取るのにつかったのだ。
甥っ子には大いに喜ばれた。
オジサンは満足である。
そしてその前。
その前は父親と食事に行った時だ。
色々とあって、その日の食事代は父親に奢ってもらうこととなった。
父親はアナログな人間なので、安心安定の現金払いだ。
その際に「端数ある?」と言われ1円玉と10円玉をいくらか渡した記憶がある。
そしてその更に前。
もうこれは正月のことだ。
「年下のいとこの子供」が既に立って歩き回り、「お年玉頂戴」とせびってくるのに驚きながら、用意していた500円玉を入れたポチ袋を上げた記憶がある。
きっとその500円玉はお母さんの財布の中へ行き、今は野に離れただろう。
そうして残されたのが50円玉7枚なのだ。
彼らは出番を迎えること無く、私の財布の中でいざという時の出番を待っているのが現状なのだ。
しかし、しかしだ。
その時は来るのだろうか。
7枚もあるということは、現金を使う機会が過去7回あったが、そのチャンスを全てのがしているということになる。
しかも私のような小賢しい人間だ。
例えば「200円の会計」の際に、財布を覗いて50円玉が複数あったらこちらを優先的に使うに決まっている。
つまり本当に50円玉を使う機会がないのだ。
頑張って使ってあげない限り、彼らの出番は、もうあるかはわからないのだ。
そんな事を考えていたら、私の番号札が呼ばれた。
そうだ、私は今日現金を使いに来たんだ。
もしかしたら彼らの出番は今日やってくるかもしれない。
そんな淡い希望は「3900円」という金額の前にボロボロと崩れ去る結果となった。
どうやっても50円玉7枚は使えない。
彼らはまだ、私の財布の中で眠っている。
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