TUGUMI 吉本ばなな
ある日、「つぐみ 吉本ばなな」という走り書きを見つけた
いつか誰かにおすすめしてもらったらしいのだが、私の友人は吉本ばななだけは全員好きなので心当たりがなさすぎる、いやありすぎて最早ない
皆好きな作家やジャンルが違うのに、吉本ばななは私の周りの人達の唯一の共通点になっている
なぜ吉本ばななはこんなにも人気があるのだろうか
いつも不思議に思うけれど、読んでみると「そうだったね」となる
例えば、眠れない夜に書き出した、ポエムを完成させてくれるところ
あの瞬間、言葉にしたかったものを言葉にしてくれるから皆が好きなんだと思う
その表現力を前に、私はそれを具体的に表現できないけれども
つぐみの
根底にある淡い別れの予感
過ぎゆく夏の切ない気持ち
秋の別れはより一層切ない
蝉の声が鈴虫に変わるだけで胸がキュッとする
まだ夏をこの体で感じていないまま、秋を迎えるわけにはいかないので、そういう人にはこの物語はぴったりだと思う
別れは負の感情だと思っていた
けれど、別れのあのもどかしさや切なさがあるから生きなければならないと思うこともある
生きて生きて生きて生きて、そしていつかこの別れを懐かしく思える時が来る
だから生きなきゃいけない
でもそれは、ほんの小さな別れに言えることなのかもしれない
例えば、少女時代に別れを告げるとか、あの夏に別れを告げるとか、本当に胸が少しだけキュッとするようなこと
吉本ばななの物語にはそれらが散りばめられていて、初秋のセンチメンタルな私にグッと刺さった