ジョーン・バエズとの出会い

高三の時、ジョーン・バエズに出会った

晴れた日の午前中
オーケストラ部が遠征だったので、残った合唱部は泣く泣く授業を受けていた

演奏法、という担任の先生が様々な(おそらく自分好みな)音楽を垂れ流す時間
センスの良かった先生のおかげで、私はこの授業でたくさんの音楽に触れ、涙を流した
大袈裟でなく

ジョーン・バエズ
アメリカ
フォークシンガー
カントリー
反戦活動家
ドナドナ

あの日、授業で聴こえてきたのは
『思い出のグリーングラス(Green Green Grass of Home)』

死刑囚が最後の朝に見た故郷の夢

汽車を降りると父と母、
そして恋人が出迎えてくれる
何も変わらない故郷の町
古い家、少しペンキが剥げてきているけど
昔よく遊んだ大きな木もまだそこに
家の前の芝生もすべて
あの頃のまま
僕は故郷に帰ってきたんだなぁ

目が覚めるとコンクリートの壁に囲まれていた
頬を伝う涙
ようやく自分が夢を見ていることに気がついて
悲しそうな看守と牧師が僕を連れて行く
今日僕は死ぬのだから

あの大きな木の木陰で
僕たちは一緒になる
芝生の下でまた会う時に

意訳をするとこんな感じでしょうか

先生は聴かせる前に少しだけ説明を入れて
オーディオのボタンを押した
穏やかなウェスタンバイオリンの音色に続いてジョーン・バエズの透き通る声が聞こえてくる

英語は得意ではなかったけど、3番に差し掛かって夢から覚めるところで涙が止まらなかった

授業の後に先生にCDを借りて
当時はスマホで音楽を聴くという時代ではなかったので、家でウォークマンに取り込んで、通学中ずっとそれを聴いていた

ウォークマン
懐かしいすぎる
いつからスマホで音楽を聴くようになったんだろう
それはまた今度考えよう

もし私がオーケストラ部だったら
ジョーン・バエズに出会うことはなかった

音楽との出会いは一期一会
次の瞬間に人生で忘れられない音に出会うかもしれない

そう考えてみると
人生の楽しみが少し増える気がする

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