天才クール美少女とヒロインの属性について
この記事はデジクリ Advent Calender 2022 12日目の記事となっております。
デジクリについてはこちらのサイトを御覧ください。
昨日 (11日) の記事は14th bayashiさんの「JUCEでエフェクターを作って遊ぼう:02」です。
はじめに
どうも、自称文字書き班の18thイカ爆弾と申します。2日目にもアドカレを投稿しているので、もしよければそちらもどうぞ。「イカ・ゲーミングメモ」なる記事で自分が面白いと思うゲームの要素を適当に考察しています。
天ク美・ツンデレ・エトセトラ
さて、さっそく本題に入っていきましょう。私も文字書きを自称しているからにはなんか小説を書いているわけなのですが、直近で書いたやつはヒロインとして天才クール美少女を描きたくて書いたもので、そのぐらい私は天才クール美少女という属性を好んでいます。いちいち天才クール美少女と書くとかったるいので以下天ク美と略していきます。天ク美の具体例には雪ノ下雪乃 (やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。) 、長門有希 (涼宮ハルヒの憂鬱) 、タバサ (ゼロの使い魔) あたりが挙げられます。
一方で、(当然ながら) 世には天ク美以外のヒロイン / ヒロイン属性が存在し、その間に貴賤は無いのですが、好みの差はあります。なので、一次創作においてはひとがどのようなヒロインにどのような属性をラベリングして形成してもまあ気にするところではない……のですが、ちょっと気に食わない部分がありまして。
それは、「ヒロインの属性、みんなデレの添え物として扱われすぎだろ」という点です。
ツンデレ ←これなに
苦言を呈したからには「お前のツンデレなんてツンデレじゃねえ! 俺とツンデレバトルで勝負だ!」と血気盛んに行きたいところなのですが、ここまでの雑文には致命的に欠けている部分があります。そう、それはツンデレの定義です。
では定義しましょう。ツンデレとはツンツンしつつもそのうちデレるやつです。ゼロの使い魔ではメインヒロインのルイズが10巻かけてやっとデレて、ここからツンデレの黄金比は9:1だと言われていますね。いやそんなことある? 流石に1巻発売が2004年のいにしえのラノベを論拠にするのは無理です。第一、ルイズはツンデレというよりは暴力系ヒロインとして解釈したほうが現代的文脈では早いし。
しかし困りました。いまよく見られる (自称) ツンデレを見ると「俺ツ勝負!」になってしまうのでまっとうで水平的なツンデレ理解はできそうにありません。もっと理解しやすくてそこから類推できそうなヒロイン属性があればいいのに……そんな都合のいいヒロイン属性なんか……
そう、天才クール美少女を考えればいいんですね! (我田引水)
天才クール美少女分解手引
まず「天才クール美少女」という字面からわかることを述べてみましょう。天才クール美少女は天才かつクールかつ美少女の属性と言えます。では、天才とは? クールとは? 美少女とは? それらを深掘りしていきましょう。
注意点として、天ク美は天才とクールと美少女の3要件を要求しますが、これは3属性と相性の良い他の属性の付与を強制するものでも他の属性の付与を阻害するものでもない、という点があります。たとえば黒髪ロング天才クール美少女はすぐそこに見えそうなぐらい実現性の高い組み合わせですが、これはすべての天ク美が黒髪ロングであることを要求しません。同様に、属性を付与することに限って言えば、すなわち描写をまったく考えない間は、どのような属性でも付与可能です。天才クール薬物中毒患者美少女とか。 (cf. NEEDY GIRL OVERDOSE、薬物中毒患者美少女が高い彩度で描かれています)
天才のクール美少女
まず「天才」について考えてみましょう。天才とは? めちゃめちゃアタマの良いひとのことです。これは流石に自明ですが、ここからキャラクターを表現するにあたって、2つの疑問が出てきます。すなわち、
・どういう行動を取るひとはめちゃめちゃアタマが良いように見えるか?
・めちゃめちゃアタマが良いと、どのような人格が導かれるか?
の2点です。
この2点はあきらかに相互に連関するものですが、簡単のために外から入っていくものと内から発するものに大別して話を進めていきます。
天才① - 外面的天才性
まず1点目、どういう行動が天才っぽく見えるか。これは明快でしょう。人よりも能力が傑出していて、かつそれが他人よりも明らかに少ない努力で手に入れられたものであるか、そうでなければ努力したそぶりが見られないか、あたりです。
ここから能力の傑出の仕方を外面的に観測したもの、すなわち外面的天才性で3種類に分類ができるでしょう。1つ目に能力の傑出がごく一部分だけであって他はボロボロであったりするタイプ (サヴァン型とします) 、2つ目に多くの分野が優秀程度ながらも特定分野だけは圧倒的なタイプ (秀才型) 、そして最後に全てもしくはほとんど全ての分野で圧倒しているタイプ (完全無欠型) 。この3種類で外から見て天才っぽく見えるムーブは記述しきれているものと思います。
但し、ここで言うボロボロとか圧倒とかはあくまで相対評価であって、記述次第でわりと簡単に立場を変容させうるものであるという点に注意してください。俺ガイルで言えば雪ノ下雪乃は秀才型ですが、雪ノ下雪乃は雪ノ下陽乃の前ではその立場を維持できず凡人になる、など。
天才② - コミュニケーション能力
次に2点目、傑出したアタマの良さからどのような人格が導かれるか。これは外見からはわからないので、エピソードを考えて導いていくことになります。
「天才」たることの十分条件は、上述の議論に則れば「少なくとも1分野で他を圧倒する能力を持つ」あたりに定めることができるでしょう。これは天才でない他者と比較されたとき、埋めがたい差異と言えます。
であれば、この異質性を起因としてコミュニケーション不全が起こりやすかろうと思えます。また、物語は他者との連関を注目することからも、コミュニケーション能力別にこれを4種類に大別することが可能ではないかと思います。
以下、コミュニケーション能力の低い順に並べてみます。1つ目はコミュニケーションをする気が全く無く、天才性で他者をぶん殴りつつ何らかの点で劣位を覚えるために「凡人」に対して高い攻撃性を持つタイプ (鬱屈型) 、2つ目に他者に対するコミュニケーションを断って自分内の天才性空間に閉じこもるタイプ (無関心型) 、3つ目にコミュニケーションをある程度行うものの基本的に自分の天才性をぶん回して殴り周り、この優位をまったく疑わないタイプ (エリート主義型) 、最後にコミュニケーション能力は完璧なタイプ (聖人型) 。概ねこれで分類しきれているでしょう。
但し、鬱屈性などは対人コミュニケーションで育まれるものの、コミュニケーションの対象は人間とは限らないこと、例えば「世界」や金閣寺などでもあり得るということに注意してください。その生い立ちと作劇上見せたい部分はしばしば関連が薄いものとなります。
以上の外面的天才性3分類とコミュニケーション4分類の計3×4=12分類により、概ね天才キャラは記述しきれるものかと思います。無論、どの分類についてもかっちりこの型にはめられるというよりはスペクトラム的性質を持つものですから、そこはうまいことやってください。
天才③ - 実例
実例を考えてみましょう。DEATH NOTEより、夜神月およびLを例にとって考えてみます。多少のネタバレを含むおそれがありますが、ご容赦ください。もしくは次のセクションまで飛んでください。
夜神月は、デスノートという極めて容易に殺人することができる道具を偶然に手にした天才青年です。さっそく「世直し」に目覚め、顔と本名がわかる限り (デスノートによって殺人を行うための要件) の受刑者などに対する大量殺人を開始します。その「正義」のために実父を殺めるなど、極めて社会に対して敵対的です。コミュニケーションについては、ここから鬱屈型とできるでしょう。外面的天才性については、これといった弱点の描写は倫理観が0点であることを除けば無く、しかしながらあらゆる分野で圧倒的かと問われれば同じく天才としてのLとの対比からそうでもないような作劇がなされています。以上から秀才型とするのが妥当でしょう。従って、夜神月は秀才-鬱屈型の天才キャラとすることができました。
続いてLについて、彼は夜神月が引き起こした大量殺人事件を追い、犯人たるキラ=夜神月を逮捕せしめんとする側の天才男です。東大っぽい大学の入試で全教科満点など、頭脳はどのキャラも圧倒するようなものとして描かれています。一方で、振る舞いについては控えめに言って奇人であり、一人で生存する能力があるのかにも疑問符が付きます。無理難題により障碍を生み出してくる上位存在というよりはバトルして勝利の可能性がある対等めな存在として描かれていることからも、外面的天才性についてはサヴァン型とできるでしょう。一方コミュニケーションに関して言えば、わりと事件捜査指揮などについては傲慢ですが、あとは人に対して無関心そうな振る舞いが見られます。従って無関心型とエリート主義型の中間あたりと言えそうです。夜神月の方での言い回しに従えば、サヴァン-無関心/エリート主義型のようにできるでしょうか。
クールな天才美少女
以上のようにして、割と妥当かつ解析的な天才キャラ分類ができたものと思います。あとはこのキャラ分類からいい感じの点を拾ってきてキャラ作りをするだけです。では、同じノリでクールキャラについてもやっていきましょう。
クールとは? 感情の表出が少なめに見えるやつです。普通は外圧によって感情表現が減らされているキャラはクールではなく根暗あたりに分類されますが、簡単のためにそういう但し書きは省いておきます。天才根暗美少女は天ク美文脈で回収可能そうですし。
では、前セクションと同じようにキャラを作るに当たっての疑問を提示していきましょう。つまり、
・どういう行動を取るひとは感情表現少なめに見えるか?
・感情表現が少なめになるには、どのような人格が必要か?
の2点を考えていきます。
クール① - 外面的クール性
まず1点目、どういう行動が感情表現少なめか、すなわち外面的クール性を持つかについて、これは何らかの理由でクールキャラの真意を知る機会が無いか、あるいは知ることができないためにクールっぽく見える、あたりで考えれば良さそうです。但し、物語上では与えられた表現が世界のすべてなので、じつは表現していないけど隠された真意があるよ、といった作り方は許容されません。隠された真意があるなら隠されていることが匂わされている必要があり、従って読者へ情報開示してそうなのにじつは真意が隠されている、みたいなタイプは想定する必要は無いでしょう。
以上の発想で外面的クール性も3種類に分類してみます。1つ目に他者との関わりを積極的に避けるために他者に考えが知られないタイプ (陰キャ型) 、2つ目に他者へ表現することへの関心が無いために他者とあまり話さないタイプ (無表現型) 、最後に他者との交流はするものの真意を隠す素振りを見せるか、あるいは表現が下手なタイプ (ミステリアス型) 。これだけではクールではないキャラも巻き込みますが、まあクールキャラを造形する上でどういうタイプに分類するとやりやすいかなという話なのでいい感じに解釈してください。
ちょっとわかりづらいので突っ込んだ説明を付記しておきます。ハードボイルドに代表されるように、クールキャラというものはかっこよさを含むものです。ところで、わからないものはかっこいいです。従って、すべての情報が開示されてしまっているようなキャラはクールキャラとしての強度が低いものとなります。然るに読者代理キャラはクールキャラ適性が低く、読者から見ても霧の向こうに真意のあるキャラクターこそがクールキャラとして適任である、ということがわかります。そのようなとき、同じ「真意が不明」であってもその原理から分別可能なキャラクター造形はできそう、の気持ちで分類をしています。
クール② - クール人格
では2点目。感情表現が少なめになる人格を考えていきます。すなわち、表現の結果昔ボコボコにされて一部を除き表現の意志を失っているタイプ (トラウマ型) 、社会規範を (場合により自覚なく) 軽視し一般的な表現を行っていないタイプ (奇行型) 、何らかの理由で会話的表現能力の獲得がなされていないタイプ (未成熟型) 、自らの目的やイデオロギーのために表現しないことを選択しているタイプ (ハードボイルド型) あたりでしょうか。奇行型と未成熟型の違いは、奇行型の方は「普通」の表現ができるかできないかで言えばできるのに対し未成熟型の方は言われてもできない、というあたりにあります。
以上より、クールについても外面的クール性3分類とクール人格4分類の3×4=12分類により大まかに分類することができると言えるでしょう。以下、具体例を考えます。
クール③ - 実例
アイドルマスターシリーズより、 (初期の) 如月千早および四条貴音の2人について考えてみます。まず如月千早について、シリーズ初期の彼女 (14歳) は歌以外にまるで興味を示さないキャラクターでした。具体的には、初代アイドルマスター (アーケード/Xbox 360版) ではテンションなる概ね高ければ高いほど良い値があり、彼女以外の全アイドルは衣装を変えたり新曲を用意したりすることで上昇し嫌なことがあると下がるのですが、彼女だけは曲を用意する以外でテンションが上がらず、テンションが関わる他のだいたいすべての行動でテンションが下がります。そのぐらい歌一辺倒なキャラ付けがされていました。当然表現も歌以外に無く、極めてストイックな感じになっています。以上からすると無表現-未成熟型とするのが妥当だろうと思えます。
次に四条貴音 (18歳/アニメ版準拠) について、彼女は彼女に関するかなりちょっとしたことについての質問であっても「とっぷしぃくれっと」と返す、そういう人です。実際、ゲーム版でもプレイヤーに対してはアイドルものとして公開されている身体情報 (身長体重など) を除けば情報が開示されていませんでした。かぐや姫みたいなものですね。というわけで、彼女はミステリアス-ハードボイルド型とするのが妥当だろうと思えます。何らかの理由で彼女自身に関する情報をひた隠しにし、またそれは彼女自身の意志に依っている、ということが随所からうかがえるためです。
……ところで、ここからは単に私の性癖の話なので次のセクションまで飛んでいただいても構わないのですけども、私は「表層的にぼんやりとした明かりしか見えないのにその内に激しい炎を持つキャラ」が大好物でして。上記の分類で言えばミステリアス-ハードボイルド型がジャストでしょうが、とにかく内部にクソデカ意志があればもう好きなのでなんならクールでなくとも良く、クールだとなお良いという感じで。
要するに、クソデカ意志であらゆる障害を薙ぎ倒して目的に達するキャラは、「「「良い」」」。そこにトラウマか何かを一個仕込んでおいてでかい歪みから精神に大地震を起こさせたりしても楽しいですね。
美少女 which 天才クール
さて、天才とクールと同じノリで美少女について解析的にやっていく……のは、ちょっと難しいところがあります。この文脈での美少女は単に美の少女というだけに留まらず、二次元キャラ一般を指す名詞としての意味を持っているためです。二次元コンテンツ一般に対する分析はわりと議論が蓄積されているやつで、そのようなとき先行する議論の確認をサボって優越するものを論ぜられるとは思えないので、なんとか回避したいところです。
とはいえ何も定義しないわけにはいかないので、ここでは簡単に二分してしまうこととしましょう。すなわち、ゼロ意味である場合と文字通り美しい少女である場合です。ゼロ意味とは、それが二次元女性キャラであることを指す以外の意味を持たない場合 (e. g. 美少女戦士セーラームーン) で、オタクが陰キャを自称することと大差ないと思ってもらえれば良いかと思います。ゼロ意味であるとき、そのキャラ造形に対する影響を考える必要は無いでしょう。
では、ゼロ意味でないときはどうなるでしょうか。ゼロ意味のときキャラ造形に対する影響を考えたので、ここは「顔が良い」という美少女性と天才性およびクール性の間の連関を考えればよいかと思います。ゼロ意味の方が都合が良い場合、このあたりのセクションでの考察は飛ばして考えてください。
顔の良さと天才性/クール性
簡単のため整形などを考えないこととすると、顔の良さというものは先天的ですから、顔が良いことは人格から影響されず、人格に影響のみ与えるもののはずです。というわけで、顔が良いことに対して周りがどう反応するかを検討してみます。
顔が良いと、基本的に周りからの評価が上がります。良い顔があると相手の感情が若干改善されるので、普通のことをしても良いように思われやすく、やらかしても許される範囲が広くなります。その結果醸成される性格の要素を考えてみると、 (1) コミュニケーション相手に負荷をかけることを厭わない (傲慢性) 、 (2) だいたい成功体験が積まれている (自信家性) の2点あたりが軸にあればしっくり来そうに思えます。コミュニケーションの基軸が自分側の天才性のみに依拠していれば強く傲慢性が現れているとできますし、めちゃめちゃ相手に合わせるようであれば強く自信家性が現れている、と見ることができます。なお、これを反転させることも可能でしょうが (僻まれて否定され続けたとか) 、面倒なので反転しないものとして続けます。
では、まず顔の良さと天才性の連関について見ていきましょう。上述の傲慢性・自信家性が天才性の特徴にどのように作用するかを考えます。これはコミュニケーションする際の特性ですから、天才性の中でもコミュニケーション能力の方に注目してやっていきます。「天才② - コミュニケーション能力」では、ざっくり4つにコミュニケーション法別に天才キャラを分別しました。攻撃性を昇順に並び替えてみると、聖人型 → 無関心型 → エリート主義型 → 鬱屈型の順になります。この軸上にキャラを配置したとき、傲慢性はキャラを右に、自信家性は左に動かす要因となります。再び夜神月を例に取ってみると (彼は公式でイケメンなので男ですが議論上特に問題ありません) 、彼は生来の天才性から傲慢性と自信家性のバランスが取れていたところ、デスノートという道具に蹴り飛ばされて一気に傲慢側に傾いていったものと解釈することができます。
顔の良さとクール性の連関についても見てみましょう。天才性の方でやったように、「クール② - クール人格」から類型を取り出してみます。今度は感情表現をできない / していないことの自覚性で降順に並び替えてみましょう。すると、これはトラウマ型 / ハードボイルド型 → 未成熟型 → 奇行型の順になります。さきほどと同様に、傲慢性により右に、自信家性により左に傾くことになりますが、トラウマ型およびハードボイルド型はその基準による区別ができないので未成熟型が中央に来ます。加えて、トラウマ型なのに自信家性? と思われるでしょうが、これは顔の良さに基づくコミュニケーションの成功体験として一般に現れる評価のちょっとした上昇を指しているものである、という点から正当化できます。
天才かつクール
最後に、天才性とクール性の連関を考えてこの天才クール美少女分解手引セクションを終わりにしたいと思います。とはいえ、12×12=144パターンを網羅するわけにもいかないので (やってもいいですが) 、ざっくり天才かつクールだとどうなるかを天才セクション・クールセクションと同じ感じにやってみましょう。
天才かつクールだとどのような印象が人々に与えられるか。これは大げさに言えば「畏怖」、小さく留めれば「よくわからないけどすごいらしい」ぐらいでしょう。天才性という「すごい」感を、クール性というコミュニケーションの減衰によって包んでいる印象です。崇めるような勢いでも、主人公を天ク美に対し気さくに行かせる感じでも、どっちでもいけると思います。
天才かつクールだとどのようなコミュニケーションを行うか。こちらは頭脳ぶん回していろいろ考えられるところをクール性が消極的コミュニケーションに限定しているわけですから、考えを回しすぎたり必要以上にコミュニケーションを断ったりする精神的引きこもりから、圧倒的傲慢性を身に着けている自称上位存在あたりまでの幅を持ちそうです。
ツンデレ ←これをわかろう
さて、前セクションまでで天才クール美少女を各属性に分解し、さらに各属性が取りうる幅とその相互連関まで簡単ながら考えてみました。これで今度から私が天才クール美少女を書くにあたってはこれを参照すればとても楽ちんという寸法です。
ところで、7500文字ほど前に記述していたこと、覚えていますでしょうか? そう、「属性がデレの添え物すぎだろ……」という主張です。7500文字かけて天才クール美少女がどういうものであるかを検討したことによって、デレに頼らない属性の強度も十分確保可能であることは示せていると思います。
では、ツンデレを読者代理/プレイヤー代理/視聴者代理にデレさせまくること無しにキャラクターとして強度を確保するにはどうしたら良いのでしょうか? そう、ここまでやってきたようにツンデレのツンの部分について考えていけば良いでしょう。というわけで延長戦入ります。
なお、デレの部分については私がよく分かっていないため書きません。各々いい感じにやっといてください。
ツンの部分
ではツンデレのツンの部分について考えてみます。ツンとは? 他者に対し軽微な攻撃的態度を取ることです。天ク美の方と同様に、
・このような態度はどういう風に見られるか?
・どのような人格からこのような態度が導かれるか?
を考えてみます。
ツン① - 外面的ツン性
ツンデレのツンの部分の本質は、 (読者代理) キャラに対しどのようにツンツンしてくるかだろうと思います。これは概ね3つに分けることができそうです。すなわち、ツンツンしている段階では普通に評価が悪いのでけんもほろろに扱うタイプ (マイナス評価型) 、何らかの理由でキャラに対し距離を取って警戒しているタイプ (ゼロ評価型) 、好意などの真意を隠すために攻撃的態度を取っているタイプ (プラス評価型) あたりに分類できそうです。
ラノベの10巻にもなってようやく好意を示すようなタイプは、1巻においては間違いなくマイナス評価型でしょう。それが時間の変遷とともにプラス評価型へ変化していく、と解釈できます。わりとこの時間感が無いと個人的には面白くないと思っているので、最初からプラス評価型になっている、換言すればちょっとツンケンしてるだけで実際には最初から普通に好意が漏れているようなタイプはあんまり好みでは無いな……と思っています。
ツン② - ツンに至る経緯
ツン①の方で、どのようなツン形態があるのかについては論じられました。しかしながら、そもそも警戒するにしても面従腹背するとか他の方法もありえます。ツンケンするということは拒絶的態度を取るということですから、どのようにその態度が導かれるかを分類することができそうです。すなわち、過去に (読者代理) キャラもしくはその属性に対してマイナス印象の事件があったタイプ (不信型) 、疲弊などからコミュニケーションコストをかけられない状態になっているタイプ (単純拒絶型) 、不安を攻撃性に変えているタイプ (代理型) あたりでしょうか。
もっとも、天才クール美少女の方と異なり、私はツンデレについて深めの考察をできるほどツンデレ実例を拾い集めてきたわけではありません。というかツンデレ自体いまでは冒頭に述べたようにデレの添え物に過ぎないような状況になっていて、そうでなければ古い例しか無い、というような状況です。ですが、上述のツンに関する分析を用いれば多少はデレに頼らないキャラ作りもできるでしょう。
デレの部分
わかりません 終わりです
おわりに
ここまで10097文字もかけてしまったらしいです。ひどいですね。長ったらしくぐだぐだと書いてしまったものをここまでお読みいただいて本当に恐悦至極の気持ちです。
さて、以上の記述によって天才クール美少女の天才の部分、クールの部分、美少女の部分についてそれぞれ詳述した上、議論を水平展開してツンデレのツンの部分まである程度造形するためのパターン分類が可能になったことかと思います。十分に細かく分類されていれば、そこへ繋がるバックボーンや取られる行動なども自然に定まるものです。ですから、これだけ詳述できたこと自体がデレさせることに頼らないキャラ作りの根拠になるのではないでしょうか。少なくとも私はこの記事を利用してキャラ作りをするつもりがあります。
書いた小説を振り返る
宣伝になってしまうのですが、私が直近に書いた小説『ロロロモク』では、ヒロインを天才クール美少女として造形しました。この記事を書く前に造形したのでちょっと甘いところがあるのですが、とにかく傲慢さを強調すべく性癖をぶちこんで煮たので、まあまあ満足行くものになっています。
では、この記事に照らしてこのヒロインを見てみましょうか。ちなみに名前は付けてないので全編「彼女」で通しています。
まず天才性について。傲慢さを強調するなら、というわけで完全無欠-エリート主義型になっています。とにかく傲慢ですから、主人公の前に立ちふさがっては主人公の努力による成果物を潰していく。圧倒的な差があるのだからどうしようもない。この顔と腕の良さで全部解決してる天ク美がよ……の気持ちで作ったやつです。
次にクール性について。こちらはちょっと弱いです。結局のところ、真意を主人公が受け入れてないだけで単純な事実を割と最初から表明しているのですから。ですがクール文脈に乗せてみれば、これはミステリアス-奇行型になるでしょう。主人公にちょっかいを出して、これが普通に主人公の戦闘キャパを余裕で超えるのでグワーッ! となってるだけなんですよね。
最後に美少女性について。こちらはゼロ意味です。一応天ク美ですから美人ということは暗に言っているようなものですが、作中での表現はしていません。まあこれだけ傲慢に振る舞えるということは、それ自体が成功体験の積み重ねによることであるという暗示がありはします。それを支えるのが見てくれの良さ、というわけですね。
以上、実際にこの記事を踏まえずに書いた天ク美文脈のキャラクターについてもこの記事による分析が適用できることが示されました。これはこの記事による分析が適正であることを示す証拠の一つとなるでしょう。
この記事を参考にしたりしなかったりして、みなさんも天才クール美少女を描きませんか? 天才クール美少女は何人いてもいいですからね。
最後に、「いやお前これに言及してないのに天ク美とかアホか?」とか「ここ意味わからん、なに?」とかみたいなのも含め、感想をTwitter (@Esqrt2) などでお待ちしております。ぜひご感想をお寄せください。
明日の記事
明日 (13日) の記事は17th inさんの「脳筋!微分方程式!」です。お楽しみに!