e-sportsが抱える八百長問題について
「eスポーツの八百長」で6名が逮捕、最大で禁固10年の可能性という事件
オーストラリアのビクトリア州警察が「eスポーツ競技のMatch Fixing(八百長)」に関する容疑で6名を逮捕したと発表しました。6名には最大で禁固10年が科せられる可能性があります。
Six people arrested re esports investigation
https://www.police.vic.gov.au/six-people-arrested-re-esports-investigation
Six people arrested over alleged match fixing | HLTV.org
https://www.hltv.org/news/27615/six-people-arrested-over-alleged-match-fixing
今回八百長が行われたのは、eスポーツタイトルで、FPSの中でも特に人気のある「Counter-Strike: Global Offensive(CSGO)」です。
Match Fixingは「試合の勝敗を意図的に調整する」というもの。
今回逮捕された6人は試合結果について事前に示談を行って賭けに臨んだとみられています。
子の八百長の影響を受けたのは計5試合、賭けは20以上にも上るとのことです。
ヴィクトリア州警察のニール・パターソン副総監は「eスポーツ産業に関係する犯罪捜査はヴィクトリア州では初」と述べ、「eスポーツは新興のスポーツ産業で、試合の結果に対する賭けの需要は高まっていくことが考えられます。
本件はeスポーツに関する犯罪に対して警察が真摯に取り組んでいくという姿勢を示すものです。
eスポーツに関する犯罪に対処するためには、警察だけでなく他の法執行機関やギャンブル産業と協力しあうことが大切です」とコメントしています。
アメリカで起きたeスポーツ賭博に関する逮捕者は初とされておりますが、eスポーツが盛んな韓国では、もっと深刻な問題とされています。
韓国でも違法ギャンブルとeスポーツ八百長が問題に
韓国では賭博に関するあらゆることが違法になっています。
そんな韓国でオンラインゲームと共に急成長したのが、オンライン上の違法カジノ&スポーツギャンブルサイトです。
射幸産業統合監督委員会によると、韓国における違法ギャンブルの市場規模は韓国ゲーム市場全体の1兆3千億円を遥かに超える8兆4千億円で、オンライン上で行なわれている違法のオンラインTOTO(スポーツくじをオンラインで賭けるサイト)だけでも2兆円を超える規模だそうです。
違法ギャンブルはスマホの普及以降に急激に成長して、現在は82.7%がスマホからのアクセスになっているといいます。
そしてオンラインTOTOの賭けの対象は、当然eスポーツも含まれます。
その結果、「Starcraft」や「League of Legends」などで、違法スポーツTOTOの運営団体と絡んで、組織的に試合の八百長に加担するチームやプロゲーマーの存在が大きな問題です。
スポーツ界でもプロ野球やプロバスケットボールなどで八百長が起きたりするが、同等にeスポーツ界でも大きな問題になっています。
なぜ選手が違法ギャンブルの八百長に手を染めてしまうのか?
例えば、Aチームが勝つと20倍、Bチームが勝つと2倍というオッズの試合だったとします。
Aを勝たせて20倍を的中させたい団体は、Bチームの選手に連絡を取ります。
「負けてくれれば何百万円渡す」といった内容で、八百長を持ち掛けます。
Aを勝たせたい団体は、20倍を的中させて、得た金額の一部を八百長に加担してくれた選手に支払うという仕組みです。
韓国のトップチームであっても、稼ぎがままならないことが多いeスポーツの世界。
選手たちはだめだと分かっていても、八百長に加担してしまったり、運営元からの八百長の加担命令に逆らえない場合が多いようです。
そして違法ギャンブルサイトが大きく成長する中、実際に韓国警察に捕まった違法ギャンブルサイトの規模は2,900億円程度、わずか3%にすぎません。
これだけ違法ギャンブルサイトの規模が大きくなっているにも関わらず、なぜこれだけしか捕まらないのでしょうか。
その背景には、圧倒的なニーズと、韓国内の法律の問題があります。
まず先述した通り韓国ではカジノが違法で、日本のようなパチンコや競馬などの合法的なギャンブルが一切存在しません。(これらが合法なのも甚だ疑問ではあるが)
このため、ギャンブルが好きな韓国人は違法ギャンブルサイトを利用する傾向にあるようです。
また、違法ギャンブルの運営元、共犯者、プレイしたものに対する処罰も軽いです。
運営者の平均の懲役は15.2か月程度ですが、これに執行猶予が付く場合がほとんど。罰金も50万円程度です。
韓国は基本的にどの罪に対しても罰金や処罰が弱い国で、ギャンブルにおいてもそれが当てはまります。
根本的に韓国では違法ギャンブルを無くすことは難しいとされています。
日本も他人事ではありません。
今回のような八百長ではありませんが、日本の国際大会でも実際に不正行為が行われた大会がありました。
8月12日開催の荒野行動Championshipでチーミングに関与したチームが
2019年8月12日に行われた、荒野行動Championship-荒野王者決定戦-は、日本国内では最大級とも思える賞金総額2,500万円の大会でした。
後述しますが、日本では法律に抵触してしまうため、高額賞金の大会は開催されづらい傾向にあります。
そんな中で運営元であるNet Easeが賞金を出すことで実現した今大会で、勝つためにチーミング行為を行ったチームがありました。
それが「Digital gate Gaming(DgG)」と呼ばれるクランで、このクラン元から「DgG team ZWEI」と「DgG team EINS」という2チームが大会に参加していました。
全5試合のキルポイントと生存ポイントで優劣を競い合い、最終的に優勝チームを決めた今大会での最終試合の5試合目で不正は起こりました。
4試合目の時点で「DgG team EINS」の順位は13位、「DgG team ZWEI」の順位は3位。
この時点で優勝の見込みが薄い「DgG team EINS」を、4試合目時点で1位だった「ちーむえーけー!!」の降下ポイントを合わせて、潰すように運営元から指示が出されました。
そして優勝の可能性がある「DgG team ZWEI」には本来予定していた降下ポイントへの降りの指示が下ります。
不正行為は選手の密告によって発覚、最終的にDgGに所属していた両チームの賞金がはく奪されました。
韓国やアメリカのように賭博のために八百長した不正行為ではありませんが、日本国内でも賞金が絡んだ試合での不正行為が起こっています。
今後のeスポーツの国内の発展を願うには、今からしっかり啓蒙していくことの他に、きちんとした法整備の問題が残されている。
先述した通り日本では3つの法律に抵触するため、高額賞金の大会を開くことが出来ない。
それは、「刑事賭博罪」「景品表示法」、「風営法」の3つです。
このうち今回の八百長とも関係する「刑事賭博罪」について解説していきます。
日本では刑法賭博罪に抵触するため賭博はおろか高額賞金大会も開催不可能
刑法賭博罪(刑法185条)によると、「賭博をしたものは、50万円以下の罰金または科料に処する。ただし一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りではない。」とあります。
「大原則として日本ではギャンブルは禁止されているのですが、すべてのギャンブルは禁止ではありませんよ。」ということです。
気になる「ただし一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」という一文だが,これは一般的に「一万円程度以下の日用品を賞品(賞金ではないことに注意)として提供する場合」「その場ですぐに消費される飲食店などの支払いを賭けた場合」とされている。
よって,例えば「じゃんけんに負けた人は飲食店の支払いを全部持つ」といった行為は賭博とみなされない可能性が高いです。
またもうひとつ,「そもそも賭博とは何か」というポイントがあります。
刑法賭博罪は「賭博をした者」を対象としているので,そもそも「賭博とは何か」が問題になってくるというわけです。
これに対し木曽氏は,賭博の定義には以下の3要素があると解説します。
(1)偶然の勝敗により
(2)財物・財産上の利益の
(3)得喪を争うこと
このうちどれか1つでも“当てはまらない”ものがあれば,その行為が賭博として罪になることはない,ということになります。
だが(1)については,ことゲームに関して言うと,事実上回避不可能であると木曽氏は指摘する。というのも「偶然の勝敗」とあるものの,実際には完全情報ゲーム(偶然が関与しないゲーム)である囲碁や将棋ですら「偶然の勝敗によるもの」を満たすとされるからだ(つまり賭け碁・賭け将棋は賭博に当たる)。
となると,例えば「参加料を徴収して開催する賞金制のゲーム大会」が賭博とならないためには,(2)か(3)で攻めるしかないということになります。
これを踏まえて,(2)財産・財産上の利益ということについて見てましょう。
昨今のゲームにおいて,「財産・財産上の利益」に「ならないもの」の代表例は,「プレイヤー間のアイテム交換機能がないゲームにおけるレアアイテム」です。
レアアイテムは,プレイヤーにとっては間違いなく価値があるが,構造的に流通しない(=交換機能がない)となると,これを財産として認定できなくなる。このため,こういったゲームにおいてレアアイテムを賭けたり,あるいは賞品として大会を行っても,これは違法にはなりません。
ただしそのゲームがアイテム交換機能を持っていた場合は「難しい」ことになり,「『△』または『?』と言うべき状態」になると木曽氏は指摘します。
例えばゲーム内の機能として,プレイヤーが手に入れたアイテムを現金で売買できるようなシステムを持つような場合,これは相当に「危ない」(=賭博と見なされる可能性が高い)とのことです。
さらに難しいのは,第三者市場を利用し,アイテムを金銭で交換できる場合だ(いわゆるRMTはこれに該当する)。これについて,木曽氏は「分からない」としていました。
「公式な規約では禁止しており,プレイヤーが勝手に第三者市場を利用して金銭でアイテムを取り引きしているだけ」という方便が立つかどうか判断できないというわけです。
「分からない」とはいえ,リスクがあるのは間違いなく,木曽氏としては「やめたほうがいい」という案件となります。
ちなみにこの取り引きにおいて「現実の通貨を使うのではなく,仮想通貨であれば問題ない」と言う人がよくいるそうだが,2016年の改正資金決済法により「仮想通貨は準通貨である」と定義されています。
このため仮想通貨を使っているからOKという逃げ道はもはや存在しないと木曽氏は指摘しました。
ともあれ,実際に賞金が動いてしまうとなると,これは否定しようもなく「財産・財産上の利益」であり,(2)を回避して「参加料を徴収して開催する賞金制のゲーム大会」をクリーンに成り立たせるのも不可能ということになります。
となると最後の望みは(3)の「得喪を争うこと」である。そしてここにおいて,打開点はちゃんと存在しています。
「得喪を争う」とは,プレイヤー同士が獲得と喪失を争うものであり,そこには相互性が必要であるとされています。
簡単に言えば,自分が得をしたら対戦相手は損をし,自分が損をしたら対戦相手は得をするという構造です。
従って,もし「参加費無料で,第三者から賞金が出される」のであれば,参加プレイヤーは得をしたとしても損はしない(=得喪を争っていない)のであるから,「相互性」が崩れる(囲碁や将棋の賞金制大会はこれに基づいて行われている)。
また,たとえ参加費を徴収したとしても,参加プレイヤーから適切な金額の参加費を徴収し,それを大会の運営費用として使う,つまり参加プレイヤーが「そこでプレイする」というサービスを得るための対価を払っているのであれば,これも参加プレイヤーが損をしたことにはならず,同様に「相互性」は崩れる。ゴルフの賞金制大会は主にこの方式で,賞金は別途第三者であるスポンサーから提供されます。
つまり後者の方式に則れば,「参加料を徴収して開催する賞金制のゲーム大会」は問題なく開催できるということになります。
しかし,だからといってすべての「参加料を徴収して開催する賞金制のゲーム大会」がOKということにはならない――参加費を徴収して,その参加費から賞金を出すことになれば,「得喪を争う」状況が成立するため,アウトとなるわけです。
eスポーツと八百長についてまとめ
こういった賭博罪に関する法整備が整わない限り、日本国内におけるeスポーツは発展しません。
eスポーツをやるにせよトッププレイヤーがは食うに困ってしまうなら、犯罪に手を染めて稼ぐか、興行自体が廃れるしか道はありません。
賭博が横行してしまうことによってみるコンテンツとしてのeスポーツがつまらなくなってしまうというものです。
eスポーツ業界がさらに活況になるための法整備と、不正行為が行われないようにするための第3者機関、もしくは法整備が急がれるのではないでしょうか。
参考・抜粋サイト
Gigazine"「eスポーツの八百長」で6名が逮捕、最大で禁固10年の可能性"
https://gigazine.net/news/20190826-esports-match-fixing/
4Gamer.net"[CEDEC 2017]日本で高額賞金のe-Sports大会を開催するには? 刑法賭博罪・景表法・風営法による規制が解説されたセッションをレポート"
https://www.4gamer.net/games/999/G999905/20170901121/
GAME Watch"韓国eスポーツ人気を支える違法ギャンブル問題。現役のプロゲーマーが八百長に手を染めるどうしようもない世界"
https://game.watch.impress.co.jp/docs/series/koreagame/1185798.html
GAMEWATCH"「荒野行動」の決勝大会でチーミングによる不正行為が発覚"
https://game.watch.impress.co.jp/docs/news/1201840.html
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