第6話Part12
「え……?」
この状況で、どうして笑っていられるのか。動揺するリーラに向かって、あすなは更に目を細めた。
「みづきちゃんにはあすながついてますから! みづきちゃん、一緒に校舎の中に戻ろう!」
「それなら安心ですわね。りんね、行きましょう」
「ええ!」
力強いあすなの声に安心したのか、リーラが再び引き止める間もなく、りんねとまりあはスキホーダイの方へと向かってしまった。
(こいつ、余計なことを……!)
リーラは悔しげに拳を握り締める。だが、あすなはそんな彼女に気づく様子もなく、相も変わらず笑顔で接してくる。
「急に怪物が現れてびっくりしたよね。あすなも、怖かった。でも大丈夫。絶対無事に帰れるから、ね!」
「……わかったわ。ありがとう」
繋がれた右手に、忘れかけていた温もりを感じたリーラは、はっと目を瞬かせる。
(手が、あたたかい。こんな風に握ってもらったのは、久しぶりだわ)
「行こう。向こうは安全だよ」
その言葉が、リーラの心の奥に閉じ込められていた懐かしい記憶を少しずつ鮮明にしていった。そういえば、王国のいた頃は、こんな風に手を繋いでくれた人が、たくさんたくさん、いた気がする。
(私、プリキュアの敵であるはずなのに。少しだけ、泣いてしまいそうになったのは、何故?)