第6話Part18
空に夜の影が落ちる頃、あすなは一人校舎の中へと駆けていった。彼女の視線の先には、こちらを向いて佇んでいるみづきの姿がある。
「みづきちゃん! 無事で良かった!」
「あなたもね、あすな」
「うん。……さっきは、ありがとう。ごめんね、一人にしちゃって」
少しだけ気まずそうに目を逸らすあすなに、みづきは小さく息を吐いて肩を竦めた。
「気にしてないわよ。だって、私が行きなさいって言ったんだもの」
そう、みづきは、リーラは、あすなを逃がした。そのまま留めておくことが出来たのにも関わらず、だ。
「大丈夫、そばにいるからね」
「……ううん、もういいわ。行って、あすな」
「え?」
目の前にある驚いた顔と同じくらい、みづきも内心自分の言葉に動揺を隠せないでいた。だが、今ここで彼女を逃さなければ、これから先ずっと後悔してしまうような気がした。
「だって、あなた、やらなきゃ行けないことがあるんでしょう?私のことは気にしないで。皆のところに、行ってあげなさい」
「……! うん、ありがとう……!」
あすなは、大きな目を更に丸くした後、向日葵のようにあどけない笑顔を浮かべて去っていった。弾むように揺れるその背中を見て、リーラは何故だか微笑まずにはいられなかった。