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第2話Part21

 ここはカプリシューズのアジト。最上階にある社長室で、ソンブルは主に跪いていた。
 彼の現主であるデザストルは、ソンブルの報告を一通り聞き終えると、ほぅ、と氷のように冷たいため息を吐き出した。

「なるほど、プリキュアと使者を捕らえ損ねただけでなく、新たなプリキュアの誕生も許してしまった、と。……私の耳にはその様に聞こえたのですが、それで間違い無いのですね」

 平坦で静かだが、その声は確かにソンブルをきつく非難していた。ソンブルは、冷水を浴びせられたようなその感覚に必死で耐えながら頷いた。

「は、はい。申し訳ございません。しかし!前回よりもスキホーダイの戦闘能力は上がって……」
「見苦しい言い訳は聞きたくありません。口を慎みなさい」

 唯一の成果も、彼の前では脆く崩れてしまった。ソンブルは俯き、きつく唇を噛み締める。デザストルはそんな彼の気持ちを知ってか知らずか、実に残念そうに肩を竦めた。

「……はぁ、しかし困りましたね。私はプリキュア等に構っている暇など無いと言うのに……モーヴェ、この任務、君に任せても構いませんか?」

 そう言って、デザストルは傍に控えていた金髪の女性──モーヴェに話を投げかけた。モーヴェはちらりとソンブル見やると、赤い唇の端をあげ頷いた。

「ふふ、もちろん構いませんことよ。あたしも、ソンブルがまさかここまで無能だとは思っても見ませんでしたもの、ねぇ?」

 モーヴェは頬に手を当て、煽るようにくすくすと笑った。ソンブルは悔しそうに顔を顰めると、勢いよく立ち上がった。

「くっ、お前なぁ!……デザストル様、今回は失敗しましたが、次は必ず仕留めて見せます! どうか、次回もこのオレにお任せください!」

 しかし、デザストルは首を縦には降らなかった。ソンブルを諭すように視線を下げると、ゆっくりと語り出す。

「お黙りなさい。今の君は自棄になっている。私は何も、君を解雇すると言っているわけでは無いのです。モーヴェは君の良き指導者となることでしょう。彼女から、良く学ぶように」
「……っ!はい、かしこまりました」

 有無を言わせぬ彼の佇まいに、ソンブルはそれ以上何も言えないようだった。モーヴェは静かになったソンブルを見下ろし、優越感で満たされた胸の前で、そっと手を組んだ。