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第5話Part22

 翌日。まつりはいつになく上機嫌で教室の扉を開けると、軽くステップを踏みながら席へと向かっていった。

「まりあさんも無事プリキュアになれたし、レザンも元気になったし、何よりも新しい必殺技が使えるようになった! 最近調子いいこと多くて嬉しいね、ゆらちゃん!」
「ええ、そうね。これからも頑張りましょう」

 そう言ってまつりの様子を微笑ましそうに見つめながらも、ゆららの頭には、昨日のレザンとの会話の断片が色濃く残っていた。
(ソンブルの事、やっぱりまつりにはまだ言えないわ)
 ひとつ、隠し事が出来てしまった。でもこれはきっと必要なことなのだ。そう割り切ることにし、ゆららも席につこうと鞄を下ろした時、クラスメイトの四葉と悠花がこれまた楽しそうな足取りで二人の方へと駆けてきた。

「ねぇねぇ、まつり、ゆらら! 2人とも聞いた?」
「え? 何を?」
「あのねぇ、中等部1年に、すっごく美人な転校生の女の子が来たんだって!」

 プリキュアとは関係の無い、日常を彩る話題に、まつりは飛びつくようにして声を上げた。

「え、何それ! 見てみたーい!」
「何でもね、外国のお姫様みたいに品が良くて、可愛い子らしいよ~! 」

 四葉がうっとりと首を傾げて呟く間にも、まつりの頭は転校生に関する想像で埋め尽くされていく。どうやって友達になろう、そんな事を考えながら、まつりは再び友人の話に耳を傾けた。

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「今日は皆さんに転校生を紹介します」

 ここは1年B組。時期外れの転校生の登場に、クラス内には期待と不安が入り交じっていた。教壇に立っているのは、二つのお団子が特徴的な少女、カプリシューズのリーラだ。

「皆さん、初めまして。私の名前は紫音みづきです。私はずっと外国で暮らしていて、日本にはこの間来たばかりなの。分からないことも沢山あるけど、頑張って覚えるので、仲良くして貰えたら嬉しいです。よろしくお願いします! 」

 人懐こそうにそう言って、リーラもといみづきはぺこりと頭を下げる。その奥ゆかしさにクラス中が安心を覚えたのだろう、誰からともなくあたたかい拍手の音が鳴り、それはすぐに教室内に広がった。その音の中、みづきは誰にも聞こえないように口裏で嗤う。

「ふふ、プリキュアのあなた達も、ね?」

 新たな物語の幕が、今まさに上がろうとしていた。


第一部『伝説の戦士編』完結