静かで、白くて、美しい。寒いのに、あたたかい
寒いのは苦手だ。
けれど、雪の世界は好きだ。
わがままだよね、わかってる。けれどやっぱり、寒いのに雪が降らない東京の冬は苦手だし、寒いけど雪が降る東北や北海道の冬は好きだ。
***
出張で旭川に行くことになり、日曜日がまるっと1日フリータイムになった。もう10年ほど会っていない旭川在住の友人に連絡をとると、その日予定をあけてくれると言う。
"何したい?"
という彼の問いに、
"美瑛に行きたい。"
とわたしは即答した。
"雪だよ?花とか咲いてないよ?真っ白だよ?"
"うん、そんな、冬の美瑛に行きたいの"
***
美瑛には一度、夏に来たことがある。
大学生の夏休み。当時は"彼氏"だった夫と、京都から北海道まで、そして北海道を半周、青春18切符での旅。その途中に立ち寄った、夏まっさかりの、花々が咲き誇る彩り鮮やかな美瑛。あの時は、自転車でへろへろになりながらまわったっけ(まだ電動自転車なんてなかった)。
今回は、友人の車で冬の始まりの美瑛へ。
静かで、白くて、美しい。寒いのに、あたたかい。
そんな冬の美瑛をおすそ分けします。
美瑛の駅前。石造りの駅舎のたたずまいのかわいさよ。
出発を待つ電車。ではなく、ディーゼル車。
駅前には、白い世界を鮮やかに彩るナナカマド
古い倉庫はおしゃれな道の駅に。
寒い時はやっぱりラーメン
そして美瑛の市街地から、山のほうへ。
道はどんどん白く。
青い池は、すっかり凍って雪が積もり、白い池になっていた。うっすら見える青が儚い。
青い池に注ぎ込む川は、ミネラルを含んだ青い水。上流で誰かが絵筆を洗ったんじゃないかと思うぐらいに、鮮やかな、青。自然の美しさは、神秘だ。
雪をまとって山は白く染まり
道も、丘も、全てが、白く白く。全ての音が吸い込まれていくような静けさで、深呼吸をするたびに身も心も浄化されていくような。
道端にまっすぐ凛と立つ白樺。
日が暮れた後のブルーアワーには、文字通り、世界の全てが青く染まる。
美しい。ただただ、美しい。
***
なんだか少し息苦しい時。行き詰まっているとき。体も頭もかたくなっているなあと感じる時。ふと、雪の世界に行きたくなる。発作みたいなものだ。
今、このタイミングで、冬の美瑛に来れてよかった。カメラと一緒に、来れてよかった。
静かで、白くて、美しい。寒いけれど、あたたかい。そんな世界に身をゆだね、全てを白い息とともに吐きだして、キンと冷えた新鮮な空気を体いっぱいに吸い込む。そうやっていろんなものをセットして、わたしはまた東京に戻る。
やっぱり雪の世界が、大好きだ。