正解を捨てるということ■□下田コラム□■vol.52
先日、「強い組織ほど正解を捨てる」の著者、西坂勇人さんにお願いして、講演会&対話会を開催しました。
今世の中に存在する多くの企業が正解探しの経営をしており、従業員は、正解を探して働いています。
「正解」とは、学校で習った価値観であったり、世の中で刷り込まれた常識であったりします。
例えば、経営であれば、とある勉強会に参加していると、その勉強会の中で語られている「正解」があります。
その「正解」に沿うように自社を変えていかないといけないと焦り、「正解」に沿うことが経営の目的となってしまい、そこに盲目的に合わせようとしてしまいます。
従業員は、経営者の持っている信念に合わせて仕事をします。それに合致させることが仕事だと思っています。
そして、経営者の信念に合った仕事が正解であり、それを実行した人が評価されます。
それは、常に第三者を見て、第三者のために生きる人生です。閉塞的な世界に感じられます。
正解を捨てることで、分断をなくすことができます。
現在の世の中では多様性が求められていますが、多様性こそ、自分の中の正解を捨てることでしか実現できません。
「多様性とはこうあるべし」という信念があればあるほど、それは、自分の価値観にとらわれた世界の中で生きているということであり、自ら多様性からほど遠いところに身を置くことになるからです。
では、「正解」を捨てることはどうやったらできるのでしょうか?
それは、俯瞰する力を持つことです。
もう一人の自分が自分の中にいるような感覚でしょうか。
今自分が考えていることがあるとします。
何かの感情を強く持っていたとします。
その時にもう一人の自分が「自分はなぜ、そう考えるのだろう」「自分はなぜ今こんな感情に取りつかれているのだろう」と見ている感じです。
この一つの自問から、自分の感覚に意識を向けていきます。
内なる感覚、内発的な感覚に意識を向けていきます。
そうすると、「過去にこんな経験をしたらからだ」ということに気づくことがあります。
その経験は、同じシチュエーションでは毎回起こるものなのだろうか。もし、そうではないとしたら、一度の経験に自分の心はとらわれてしまっているだけだと気づきます。その瞬間から、先ほどまで「唯一の正解」と思っていたものが、まったく違う見え方になってきます。
そのようにして、自分の内なる感覚でとらえなおすと、受け入れられるものも変わってくるのです。
内発的な感覚に従うと、おのずと、変えていいものと変えてはいけないものが見えてきます。
例えば、変えてはいけないものは、働く人の幸福だとします。
しかし、幸福の価値は時代と共に変わってきます。
多くの場所で語られることですが、昔は、高級な自動車を買い、ブランド品を身につけ、出世することが幸福でした。しかし、現在の若い人たちは、そこに幸福を感じることはなくなってきています。
つまり、幸福の価値観が変化しています。
変えてはいけないものは「幸福」だとしたら、幸福の価値観が変わってきている以上、その追及のためのアウトプットは変化する方がむしろ自然になります。
そんな生き方を実践する方法が、西坂さんの考える「正解を捨てる」というあり方にあるのだと思ったのでした。
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