緩んで生きる■□下田コラム□■vol.79
先日、千葉県佐倉市にある眼鏡のとよふくさんに行ってきました。
とよふくさんは小さな眼鏡屋さんですが、知る人ぞ知るとても有名な眼鏡屋さんです。
佐倉市という郊外にあるにもかかわらず、多くの芸能人、財界人、ビジネスマンがこぞって来店するお店です。
多くの眼鏡屋さんはショップに行き、その場で検眼し、レンズの度数を合わせ、フレームを選び、すぐに眼鏡が出来上がります。
格安なところでは、1本5000円や7000円でかかる時間も30分から1時間程度で眼鏡を作ることができます。
しかし、このとよふくさんは、メガネが出来上がるまでのプロセスがとても長いのです。
まず、完全予約制になっていて、いきなりお店に行くことはできません。
予約を取らなければいけないのですが、予約の電話も簡単には終わりません。
電話をすると、その場で問診が始まります。この問診が30分ぐらいかかります。
現在の目の状況だけではなく、どんな食べ物を食べているのか、子供の頃どのような生活をしていたのか、そんなようなことも聞かれます。
その後に予約を取ることになるのですが、この予約がまた簡単には取れないのです。
ほかの眼鏡屋さんであれば、仮に予約制であったとしても明日明後日の日程が取れるかと思います。
とよふくさんでは、大体2ヶ月ぐらい先を言われるのです。
私も実際に1月の頭に連絡をし、来店できるのが2月の末ということで、先日とよふくさんに行ってきました。
お店では、電話で問診された内容を基に、さらに詳しく色々な質問をされます。
そしてついに検査が始まります。
検査も一般の眼鏡屋さんよりとても細かく、色々な機械を使って行われ、目の使い方の癖なども見てくれるのです。
レンズも何度も何度も付け替えたりして、とても丁寧に細かく検査をしてくれます。
そして、私に合うであろうレンズを見つけてくれて、かけてくれます。
このレンズ選びが、とよふくさんの最大の特徴です。
なんと今までかけている眼鏡より度数が弱くなる眼鏡を渡されるのです。
とよふくさんは言います。
一般的に、眼鏡というのは、よく見えるように よく見えるようにという風にして作られる。
視力が上がるように矯正していくということです。
よく見えるということは、それだけ目に負担がかかるということなんです。
目に負担がかかっていけば、凝って目が疲れていき、それがさらに視力を悪くする。そのような悪循環になっていくといいます。
とよふくさんの眼鏡は全く逆で、度数を下げるけれどもふわっと見えるようにするのです。つまり、目が緩む眼鏡に仕上がっていくのです。
私もつけてみました。
瞬間、驚きました。
なんだか、見える景色が優しくなる感じがしたのです。
確かに細かいところは今つけている眼鏡より見えづらくなります。
しかし、全体が何か優しいものに包まれているような、そんな見え方になります。
とよふくさんで検査を受けていて特徴的だったのが、丸の切れている方向をみる検査でした。ランドルト環検査というやつです。
円のどちら側が空いているのか、「左側が開いてる」「右側が空いている」と答える一般的な検査です。
この検査の時、とよふくさんは「はっきり見えなくていいです。ぼやっと見てください。大体、どっちが開いてるのかで答えてください」と言います。
要するに、大体で答えて合ってたらいいというのです。
これはどういうことかと言うと、要するにその状態が目が緊張していない状態であるということ。
この目の緊張していない状態でどこまで見えるのかということが大事。
そして、そのように目をにずっと緊張を与えない状態でいると、目の力の無駄な凝りが緩んでいき、目が楽になっていくというのです。
「見よう、見よう」とする常識を覆される瞬間でした。
このとよふくさんのお話、何が言いたいのかと言えば、我々が常識だと思っていることが非常識だったということです。
一般的に、目はよく見えた方がいい。
そすると「見よう。見ようとする」
それはとても力んで毎日を過ごすことになる。
そうではなくて、体を緩ましてあげる。そして、一点を見ようとするのではなく、力の抜けた状態で全体を広く捉えようとする。
この状況が、人間にとって自然なことなのです。
今、人に勧められて「限りある時間の使い方」という本を読んでます。
この本も言いたいことは一緒なのかなと思います。
時間を効率的に使おうとして、いっぱい物事を詰め込む。
マルチタスクとして、同時に2つも3つのこともやろうとする。
それはビジネスマンとしては常識のことかもしれません。
ただ、一生懸命「見よう、見よう」としているのと同じことかな、と思います。
その先には、どんどん緊張が続く世界が待っています。
それを一瞬緩めてあげ、時間をマルチタスクに使おうとするのではなく、今この瞬間この瞬間を大切にしよう。
効率的にやり続けるということは、終わりのない緊張の世界に入ることと同じなのだ。
目の前の時間をゆっくり楽しもうとすることにより、そこに大きな味わいを感じ、大きな気づきを感じ、心身のリラックスを感じる。
心身のリラックスがあるからこそ見えてくる世界がある。
そんなことを教えてくれるのかな、という風に思いました。
とよふくさんの眼鏡。
実際に出来上がってくるのは2週間後です。
どんなふうになっているのか、自分自身でも今から楽しみです。
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