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Traveler's Voice#20|ビートさとし

Traveler's Voice について

Traveler's Voice は特別招待ゲストの方からエスパシオに泊まった感想をインタビューし、読者のもとへ届ける連載記事です。この企画の目的は”自分ではない誰か”の体験を通して、エスパシオを多角的に知っていただくことと、ゲストが日頃行っている活動を合わせて紹介するふたつの側面を持っています。ご存じの方も多いと思いますが、エスパシオは「いつか立派な観光ホテルになる」と心に誓った山口市にあるラブホテルです。この先どんなホテルに育っていくのか、まだ出発地点に立ったばかりですが、この企画を通してゲストの過ごし方や価値観を知り、計画にフィードバックしたいと考えています。インタビュアー、執筆、カメラマンを務めるのは「エスパシオ観光ホテル化計画・OVEL」を進めているプロデューサーの荒木です。それではインタビューをお楽しみください。


ゲスト紹介

Travelers Voice 第20回目のゲストはビートさとしさんです。他に類を見ない孤高のビートを操る新時代のFUNKバンドskillkillsのドラマーであり、他ミュージシャンのレコーディングやライブサポート、映画音楽、CM音楽など様々なステージで活躍されています。その他、自身の音楽活動と並行し防府市でドラムレッスンをプロからアマチュアまで幅広く指導しています。


サトシさんが泊まったお部屋紹介

サトシさんに宿泊していただいたお部屋は302号室です。大きなラグジュアリーソファが特徴のツインベッドルーム、エスパシオで最も広いプレミアムツインのお部屋です。


インタビュー

Araki:こんにちは、というかお帰りなさい。今朝の出発が早かったのでインタビューできず一度スタジオで用を済ませてから再びエスパシオへ舞い戻っていただきありがとうございます。昨晩のお酒はどこへやらでめちゃくちゃスッキリした顔になっていますね、回復力がすごい 笑。改めて昨晩は宿泊していただきありがとうございました。このインタビューでは「サトシさん」と呼ばせていただきますが、普段メディアに出るときのアーティスト名は決まっているのでしょうか。

Satoshi:こちらこそ楽しい時間をありがとうございました。メディア用の名前は特に決まっていなくて、ビートさとし、弘中聡ひろなかさとし、リズムキルス、色んな呼び方があるんですけど 笑、自然とビートさとしが定着しています。

Araki:それはおそらく”北野武効果”ですね 笑。サトシさんは防府市出身なので、もしかするとエスパシオのことはご存知でしたか。

Satoshi:ホテルの前面道路である国道262号線はよく利用する道路なので大きな建物があることは知っていました。ぼくは地元でホテルを探したことが無いので、山口県内のホテルはノーマークです。エスパシオを知ったのはドラムレッスンの生徒さんから面白い施設と人がいるから紹介したいと熱烈なラブコールをいただき先日はじめて訪問させていただきました。何の予備知識も持たないまま訪れたのでめちゃくちゃ衝撃でした。ぼくの頭の中にはYouTubeや映画で見る陰気なラブホテルのイメージしかなかったので、近頃のラブホテルはこんなことになってるんだと驚いたし、エスパシオの取り組みやハイセンスな空間が気に入ったのでインタビューをお引き受けさせていただくことになりました 笑。

Araki:現在のラブホが全てこんな感じ!いやいやそんなことないですよ 笑、その認識めちゃくちゃ間違っています。9割のラブホテルは映画で見るままの陰気な雰囲気爆進なのが現状で、エスパシオだけが特別なんです 笑。

Satoshi:そうなんだ、そこめちゃ重要ですね 笑。とにかく部屋のカラーリングやサービスすべてにセンスとホスピタリティを感じてしまって、防府に家を建てる前に出会いたかったです 笑。

Araki:大丈夫ですまだ間に合いますよ!スタジオ拡張とかあればご指名ください 笑。少しエスパシオについて補足すると、ここはインテリアデザイナーであるぼくだけで作ったのではなく、現代アート作家やミュージシャンに協力してもらいながら作りました。アートはGerman Suplex Airlinesというコレクティブが担当し、音楽はSatanicpornocultshopというバンドが館内BGMの楽曲提供や室内のレコードセレクトを行なっています。室内のスピーカーを組んでくれたのも彼らです。そうそう、そのときSatanicpornocultshopの現フロントマンであるvinylmanも言っていたけど、この部屋のボリューム感って音楽鑑賞という観点から見ると最適なんですよね。

Satoshi:そうだと思います。ぼくは旅行が好きでそれなりに拘ったホテルに泊まることが多いんですけど、室内にレコードプレーヤーやコーヒーミルがあればいいのになと常々思っていて、まさかここに求めていたものすべてが揃っているなんて考えもしなかったです 笑。ぼくに限らずミュージシャンはこういうホテル好きでしょうね。それともうひとつ嬉しいポイントが、ただ寛ぐだけのスペースではなくルームサービスも充実していて、エスパシオを”帰らなくてもよいレストラン”という位置付けで捉えると、飲み食いが大好きなぼくにとって新しい選択肢だなと思いました。ということもあって、昨日は絶賛飲みすぎてしまいました、すみません 笑。

Araki:朝まで飲んでましたよね 笑。使い方は人それぞれなのでオーベルジュ的に寛いでくれたようで嬉しいです。ホテルに詳しい人なら瞬時に理解してもらえるんですけど、この広さとロケーションが揃っているのはリゾートホテルや都市部のラグジュアリーホテルしかなくて、エスパシオをそのカテゴリーで捉えるとコスパ最強ホテルです 笑。ではでは、ホテルの話はひとまずこのくらいにして、音楽活動について教えてください。サトシさんは音楽と言っても様々なプロジェクトに参加しているので、職業を聞かれたらどのように答えているんですか。

Satoshi:ミュージシャンって表現すると伝えきれない部分があるのでストレートに「ドラマーです」と答えるようにしています。そこから話を広げるように個々の活動を説明するようにしているんですけど、まずはskillkills(スキルキルス)というバンドを主にしながら、サポートミュージシャンとして他バンドに関わったり、映画音楽・CM音楽の依頼も引き受けています。みんなが知っている映画だとNetflixオリジナルの「サンクチュアリ」や、佐藤正午さん原作(廣木 隆一さん監督)の「月の満ち欠け」でしょうか。

Araki:おお、めちゃ豪華キャストの映画ですね。サポートミュージシャンってレコーディングやライブの時に指名されるミュージシャンのことですよね。

Satoshi:そうです。ずっと長くお世話になっているのがドレスコーズというバンドで、単発で声をかけていただいたのがAwich(エイウィッチ)のライブ、あいみょん「君のこゝろ」のレコーディング、中嶋イッキュウ、菅田将暉、PUFFY、GOTCH、マヒトゥ・ザ・ピーポー、国府達也、色んなところに出没しています 笑。skillkills として呼ばれることもあるし、ドラマー個人として声をかけていただいたり、そのあたりは呼ぶ側の意向に合わせるようにしています。CMで参加したのが、花王ヘアケア、李錦記(リキンキ)、焼肉きんぐ、アサヒ樽ハイ倶楽部、中でも面白かったのが日向坂46の新メンバー募集CMです 笑。CMは個人的に好きなプロジェクトで、普段とは異なる短い時間軸での表現が新鮮なんですよね。

Araki:なるほど、守備範囲がめちゃ広いですね。では少し遡って、その多様な活動に至るまでの経緯も教えてください。

Satoshi:高校を出てすぐに上京して、兄(Guru Connect)と始めたskillkills(スキルキルス)が前身となるバンドです。そこから何度かメンバーが入れ変わって今のskillkillsがあります。skillkillsでは兄(Guru Connect)が作曲とベースを担当しているんですけど、ぼくと同じく他バンドのプロデュースや楽曲提供をしています。skillkillsは今思えばうだつが上がらない活動を続けながら地道に道を切り開いていったバンドだと思っています。もともとの生活領域でもあった山口市はノイズミュージックやインプロと呼ばれる即興演奏が盛んな街として有名で、当時は防府の「BAR印度洋」に通いながらそのジャンルの人たちとよく交流していました。そこで先輩から受けたメッセージ「人と同じことはするな!」という言葉が呪いのようになっていて 笑、今でもその教えは創作の根幹を支える価値観になっています。インプロにハマったきっかけは、都内でたまたま立ち寄ったライブハウスでフリージャズを聞いてしまった衝撃が元になっています。あまりに感動してしまって、ライブのあと演奏者に駆け寄り「おれもこれやりたいんだけど、どうすればいいですか!」って相談したら「ワンカップ買ってくれたら教えてあげるよ!」って言われて 笑、そこから気がついたら数日後に無理やりステージに立たされていました 笑。ジャズ箱に入り浸っている前衛的なミュージシャン達と月に20本いろんな箱でライブする生活がここからはじまります。夜はライブ昼は下北のレコーディングスタジオでバイトしていました。レコスタのバイトは生活のためにしていたんですけど長く勤めているといろんな出来事があるもので、大ファンであったNUMBER GIRLのベーシスト中尾憲太郎さんがお客さまとして来られて、もちろんご本人であることは重々分かっていたけど、若さゆえの変なプライドが邪魔をして無愛想な接客をしたのを覚えています 笑。中尾さんはそんなぼくにも優しく接してくれて、徐々に打ち解け、ついには漫画の話で盛り上がった勢いに任せて大ファンであったことを告白しました 笑。そこからあれよあれよとCrypt City(クリプトシティ)というバンドを中尾さんと始める神展開になります。活動をはじめて直ぐに、ぼくの演奏はテクニックに溺れていることを見事に指摘されて、中尾さんからのその指摘がきっかけとなってテクニックには頼らないオリジナリティを追求した演奏を意識するようになりました。あの出会いがなければ今のぼくは無かったと思っています。そんな夢のような縁はなぜか広がるもので、浅草橋のホットミュージックスクールの校長から講師の依頼があったのも同じタイミングです。初めは教えることに躊躇していたけど、生徒と関わるうちに少しずつレッスンすることの楽しみや誰かの演奏を聴くことの喜びに気がつくようになりました。音楽って不思議なもので上手いから良いという世界ではないので、生徒から学べることって多いんですよね。

Araki:テクニックと表現が異なることはよく聞きます。デッサンめちゃくちゃ上手いけど表現としての「絵画」が描けない人って沢山いるようです。さとしさんもテクニックに溺れた時代があたっと聞きましたが、その辺りをもう少し深掘りしてもらってもいいですか。

Satoshi:インプロ(即興演奏)で習得した技術力と引き換えに人を惹きつけるための演奏ができなくて悩んでいた時代がありました。中尾さんとはじめたCrypt Ctyのおかげでそれは克服に向かうのですが、つまるところそれって魂や個性を音で表すセンスなんだと思います。演奏のプライオリティからテクニックをいったん外に置くと、生徒から受ける学びは沢山あって、これって解釈の多様性に触れる機会でもあるんですよね。今思えばレッスンを通して欠けていたものを手に入れることができたのかもしれません。レコーディングスタジオの店長をしながら、skillkills、Crypt Cty、講師、日々のライブ活動を並行する多忙過ぎる生活が、音楽に向き合うための心の構えを乱していたのかもしれません 笑。あのころは音楽すべてが作業のようになっていて、ライブ中に「寝てもいいよ」って言われたら眠れてしまえるほど刺激や緊張感のない時間を淡々と過ごしていました。Crypt Ctyやレッスンを通してこれはさすが良くないと思うようになって 笑、まずスタジオで働くのを辞め理想の形で音楽と向き合うための環境づくりをはじめることになります。そのひとつにハウススタジオを作ることがありました。結果的に地元である防府にスタジオを構えることになるんですけど、本当は都内で作りたかったんですよね 笑。見積りとったらあまりの高額にビビってしまって 笑、いろいろ考えた末、防府にたどり着きました。東京でのライブ活動から物理的な距離を取ることで、忘れかけていた「ライブが特別な体験であること」を思い出すための手助けにもなるだろうと期待していました。

Araki:大好きな音楽を日常の中へ置き過ぎてしまったんですね。好きなものと意識的に距離を取るって難しいことですよね、だって好きなんだもん 笑。

Satoshi:ほんとそうですよね 笑。でもあれなんです、スタジオ建設中にコロナがやってきたんですよ。東京から離れることでライブの特別感をとり戻すはずが、コロナによってライブはすっかり特別なものになってしまって、あれっ、引っ越す必要なかったのでは?と脳裏によぎりながらも引き返す術もなく防府のスタジオが完成したというのが真実です 笑。物理的な距離とコロナが相まってライブが想像していた以上に遠く離れたものになり、コロナ明けの初ライブは手が震えるほど緊張したのを覚えています。距離をとるのも程々にしないとダメだなというのもそこで学びました 笑。コロナ中は世界中のミュージシャンが迷走状態になったいましたが、skillkillsはコロナ禍は何もせず、今思えばサボり過ぎてしまったなと反省しています。そこから慌てて巻き返すように活動するようになって、ようやく最近になって本来のskillkillsに戻ってこれた気がしています。コロナのせいだと言いたくないけど明らかコロナの仕業です 笑。

Araki:ぼくはコロナが来た時期に湘南でホテルの開業を迎えていて、開業と同時に観光が終わる悪夢を体験しました。あれほど強い体験をしたはずなのにもうすでにコロナ禍の雰囲気を思い出すことができなくて、忘却の機能についてあれこれ考えてしまいます。skillkillsの4枚目のアルバムリリースもコロナと同時だからショックが大き過ぎたのかもしれませんね。そうそうskillkillsはお兄さん(Guru Connect)が作曲担当なんですよね。THE SHERE HOTELSの「KAIKA」で行われたライブをYouTubeで見たんですけど、Guruさんめちゃ格好いいですね。

Satoshi:ありがとうございます、喜ぶと思います。兄(Guru Connect)はskillkillsの活動をしながら、作曲家としてDAOKOへ楽曲提供したり、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤さんと共作した曲「Heaven」をリリースしたりしています。他には鎮座DOPENESSやCampanellaや凌平にも楽曲提供していて、最近ホットなもので言えば、九州の「ばってん少女隊」というアイドルグループに提供した曲「でんでらりゅーば!」がバズっているようです。ずっとUSENのチャート入りしていると自慢していました 笑。CMではi-phoneが有名なのかなあ。

Araki:なるほど、メジャーな方を作曲家としてサポートしてるんですね。skillkillsではお兄さんがどのくらいの割合いで作曲されてるんですか。

Satoshi:3rdアルバムから兄がすべて作曲するようになったんですけど、2ndアルバムまではメンバーがスタジオに篭ってああだこうだと険悪なムードになりながら作曲していました 笑。そんなあるとき兄がSalyuの作曲をしている国府達矢さんから影響を受けて、国府さんのようにすべてをひとりで事細かく作曲するスタイルに変わり今のskillkillsがあります。そこからはスタジオ内の空気がピリつくこともなくなって 笑、以前より質を高めた創作ができるようになりました。もちろんメンバーの意見が反映されない訳ではなく、正確な設計図をもとに更なるアレンジを加えることができるようになったという感じでしょうか。スタイルを変えた結果としてそれが一番良かったことだと思っています。

Araki:ああ、それめちゃくちゃ分かります。デザインで例えるとちゃんと設計図がある現場とそうでない現場の違いですね 笑。図面のない現場は大荒れします。でもあれなんですよね、現場に図面がないことが好きな人がいたり、図面用意した上で現場で何度も考え直そうとする人もいます。犠牲者を出さずにクオリティが上がればどの手法を取っても間違いではないんですけど、できることなら穏便に事は済ませたいですよね 笑。では、スクールについても少し深掘りしますが、防府に戻ってからは個人でドラムレッスンしているんですよね。

Satoshi:今は個人的にスクールを開いています。東京のホットミュージックスクールで講師をしているときにKing Gnu勢喜(せき)さんから「個人レッスンしてほしい」とインスタのDM経由でオファが来て、それが個人的にレッスンをはじめるきっかけになっています。実は勢喜さんからDMが来るまでKing Gnuの存在を知らなくて、YouTubeで「白日」を検索したら、えげつない再生数にびっくりしたのを覚えています 笑。情熱大陸の放送でレッスンの様子が0.1秒くらい映ってますよ 笑。当時の勢喜さんは独特の手癖を持ったドラマーでした。ぼくから見るとそれは失ってはいけない個性だと感じたのでその大切なものを壊さないようにレッスンしたつもりです。今は教師と生徒という関係ではなく仲の良い友人というか、山口にもよく遊びにきてくれます。ぼくはテクニックが先に身について個性を獲得するのに苦労したタイプだけど、彼はその逆でもともと強い個性があった。音楽って結局のところテクニックだけで乗り越えられる表現ジャンルではないので、あの若さでオリジナリティを獲得できていたのはやっぱり凄いとしか言いようがありません。彼の他にもマカロニえんぴつやNEEのドラマーにもレッスンした経験があり、技術を伝授した人たちの活躍の場を見るのは自分ごとのように誇らしいです。

Araki:誰もが認めるメジャーな人たちをサポートしてるんですね、凄い。噂によるとASIAN KUNG-FU GENERATIONのフロントマンである後藤正文さんとも交流があるんですよね。

Satoshi:そうなんです、後藤さんは若手の活動を応援してくれる頼り甲斐のある先輩です。実は防府のスタジオ建設中に足を運んでくれて、そのときのエピソードが神がかっているから是非とも書いてほしいんですけど 笑、スタジオに設置したいマイクプリアンプという高価な機材があって、欲しいけど高くて諦めざるを得ないことを相談をしたら「じゃあその機材を買うためにぼくが個人的に1曲リリースするから、その収益でその機材買おうよ」とさらっと言ってくれて、そこでリリースしたのがGotchのシングルアルバム「Stateless(feat. YonYon)」です。ボーカルは後藤さんとYonYon、ドラムはぼくが叩いています。曲もさながらジャカルタで撮影されたPVも格好よくて、その結果としてぼくのスタジオに立派な機材(マイクプリアンプ)が存在します。頼り甲斐あり過ぎませんか 笑、ほんと頭が上がらないです。

Araki:うおーすごい先輩っぷりですね!そんなマネタイズがあったとは 笑。Gotch格好いいですよね。ASIAN KUNG-FU GENERATIONはあまりに有名だから今更説明することはないけど、Gotch個人としてリリースしている音楽も素晴らしいですね。ぼくは世代的にレディオヘッドにハマった時期があるので後藤さんとトムヨークって重なる部分があって、彼の持っている音楽の探究心というか実験センスがとても好きです。それにしてもこうやって聞いていると強い固有名が連発していますが 笑、Awich、King Gnu、あいみょん、Gotch、YonYon、NUMBER GIRL、ドレスコーズ、Crypt City、日向坂46、DAOKO、鎮座DOPENESS、Campanella、菅田将暉、PUFFY、マヒトゥ・ザ・ピーポー、国府達也、i-phone、サンクチュアリ、ぼくにもっとメインカルチャーを深掘りする能力があれば話をうまく広げることができるんだろうけど、読者のみなさまお役に立てず申し訳ありません 笑。

Satoshi:業界内でskillkillsを面白がってくれるミュージシャンが多くて、やりたい音楽を曲げずに突き詰めることを彼らが評価してくれているのは明らかだから、どこまでこのスタイルでいけるのか、それがskillkillsの挑戦でもあります。と頭では分かっているけどレーベルからの圧がないことの弊害もあって、油断するとサボっちゃうというかマイペースになっちゃうんですよね 笑。

Araki:なるほど俗に言う”締め切り問題”ですね 笑。ではでは、ドラムについても聞いてみたいんですけど、同じ打楽器の中にはマリンバやタブラといった音階を持ったタイプもありますが、サトシさんはメロディーについてどのように考えていますか。

Satoshi:メロディーは好きでもあるし音楽にとって必要不可欠な要素だと思っています。単純に一番耳に入る音域でもあるから、メロディーがより良く聞こえるように気をつけて叩くようにしています。

Araki:YouTube見てたらドラムだけでライブもしているから、アンチメロディーなのかと思っていました 笑。

Satoshi:ひとりのリスナーとしてもメロディーのない音楽は好んで聴かないです。いやどうだろう、もしかすると太鼓の音がメロディーのように聴こえているのかもしれません。ドラムの音を記憶する感覚もぼくの中ではメロディを覚えることと似ているし、、、単にドラムの叩き過ぎで認識がバグってるだけかもしれませんが 笑。

Araki:声域や肺活量に捉われないメロディーを感じているのかもしれませんね、凄い。ドラム以外の楽器を演奏することに興味はありますか。

Satoshi:コンガにハマってます 笑。昔はドラムへの愛が強かったけど最近はその執着心が薄れてきて、もっと広い視点から音楽と関わりたい欲望が芽生えてきました。なので今はスタジオのドラムセットがスピーカーに置き換わっています 笑。バスドラムの位置にウーファーを置きドラムセットを組むようにスピーカーを配置して、色んな音を収録しておいたサンプラーを叩いてそれぞれのスピーカーから音を出しています。こうすることで今までやってこなかった自分でメロディーラインを作ったり、自分では演奏できない楽器の音や環境音をMIXできるようになりました。技術が進歩してくれたことで何でもひとりでできるようになったので、今までドラム演奏に使っていた時間を作曲に割り当てることが増えたような気がします。なのでもしかするともうドラマーではないのかもしれませんね 笑。

Araki:ドラムは楽器の中で最も身体と一体化しているから、身体性について人並みならぬ拘りがあると踏んでいたので意外だったけど、期待値を超える素敵な話をきけて嬉しいです。それって目的と手段の話でもありますよね。

Satoshi:もちろんドラムは今でも大好きだしそれがベースになっているのは疑いようもありません。けれども音楽はそれぞれの要素が束になって奏でられるものなので、全体を意識できるようになったことは大きな一歩だと思っています。生音ならではの倍音の魅力はこの先も残っていくだろうけど、デジタル化されたドラムセットのスピーカー化は”音楽”をつくる上でとても理に適っています。そして何より楽しいです。

Araki:なんだか話を聞いているこちらがわくわくしてきます。さっき聞かせてくれたGotchの「Stateless」を叩いている姿が目に浮かぶようです 笑。この記事を書いている今、実は「Stateless」をDAC通してループ再生しています。ゴッチの丸くて低い声の上でYonYonの透きとおる声が踊り、波のように揺れるキーボード、鳥のようにさえずるマンドリン、ジャカルタで軽やかに踊る人々がサトシさんのキレの良いビートと絡み合う。音の高さ低さ、速さ遅さ、硬さ柔らかさ、潤い乾き、その全てが溶け合いグルーヴすることでStatelessというタイトルにたどり着く、素敵な作品だと思いました。そんなこんなですっかり旅の気分になってしまったので質問の方向を変えますが、旅行はよく行かれるんですか。

Satoshi:両親が元気なうちに家族旅行したいと思うようになってから、かなりの頻度で色んな土地に訪れるようになりました。せっかくの旅行なのでホテルも拘るようにしていて、福岡ではリッツカールトンに泊まったり、別府では老舗の温泉宿に泊まったりしています。その経験をもとに言わせていただくと、エスパシオはリッツカールトンより勝っている部分があります。うまく言葉にできないんですけど、この感動の在処っていったい何処にあるんでしょう。凄いの作りましたよね 笑。

Araki:リッツ超えた 笑、嬉しいです。それってぼくの理解ではこうなるんですけど、効率的に物事を作ろうとすると失われる個性というものがあって、エスパシオは効率性から極端に距離をおいたプロジェクトだから自然なかたちでオリジナリティが創出されているんだと思っています。この敷地の広さで21室しかなかったり、そもそもこのスペックでなぜ山口市に建っているのか、マーケティングの結果から導き出そうとしても決して得られない価値があります。それがおそらく個性というもので、さっきのドラム演奏の話とも通じますが、サトシさんはそこに魅力を感じたのではないでしょうか。もしそうであれば、ぼくも同じ思いです。そうそう、エスパシオは観光ホテルになることを目標にしていて、上層階にロビー、レストラン、カフェ、チルアウトルームなど、山口にはまだ無いパブリックスペースを計画しています。週末はミュージシャンが素敵な音楽を奏でてくれたり、、、などなど妄想はつきないんですけど、実現したらライブお願いしますね 笑。

Satoshi:おおーそれ凄いですね、ぜひ参加させてください。実はぼくたちも同じような取り組みを行っていて、吉祥寺の飲食店に協力してもらってライブハウスを音楽鑑賞だけに留めないように「レストラン化」するプロジェクトを実施しています。料理の提供だけではなく日本酒のペアリングもしていて、これってライブ体験価値をアップデートする取り組みなんですよね。もしここが観光ホテル「OVEL」になったらライブやらせてください 笑。

Araki:ぜひぜひ 笑。それにしてもその吉祥寺のイベント楽しそうですね。ミュージシャンが企画までやっているところがユニークだし、演奏する音楽にペアリングされたお料理やお酒という発想もGoodです。なんだか話を聞くことでskillkillsを応援したい気持ちが倍増しました。今後のご活躍に期待しています。ではでは、長い時間インタビューにお付き合いいただきありがとうございました。たくさん素敵な話をきけて充実した時間でした。またいつでも遊びに来てくださいね!それと今度スタジオ見せてください 笑。


day of stay:June 23, 2024


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