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【パノパナパパラッチ】予期せぬミスもトラブルも、シャッターを切れば最高の思い出に変わる。ファインダー越しにいつでも思い出すよ。

皆様、大変長らくお待たせいたしました――

2019/05/18のパノパナパパラッチ。ハイ。やっと。やっっっとこさ現像が終わりました。1ヵ月とまではいかないけど、でもまあそれくらいかかってるか。…長い道のりだった。人生初のライブ撮影。結論から言うと、最高に良いの撮れてたぜ。

待ちに待ったパノパナパパラッチには、本気のカメラで臨んだ。ここでちょっと愛機について。

高校入学後すぐ、写真部に入ろうと決めた。これはその際、父の知人から譲って頂いたものだ。この他にレンズ2種類。すごいんだよ、まず電気が通ってない。完全マニュアル。フィルムの巻き取りも何もかも、ぜーんぶ手動。オートフォーカス…何それ美味しいの?年代物だけど部品の欠損とかほとんどなくて、大切にされてきたんだということがよく分かる。この愛機(重たい)と楽しむライブはクセになる気持ちよさだった。こいつのシャッター音はクセが強い(パシャッじゃなくてガションっ!って感じ)から、音楽と合わさって独特の面白さがあった。

フィルムは現地調達で。新宿駅近くのヨドバシカメラはかなり感度の高いネオパンも置いてる。イルフォードの3200。当日の様子&ライブレポは↓

こんな高感度のやつ初めてだ。そもそも屋内での撮影って普段ほとんどしない。建物とか街並みを撮るのが好きなもんで。鉄塔とか廃墟っぽいとことか寂れたビル群とかね。だから今までの撮影条件はほぼ屋外の自然光だった。人を撮るようになったのは高校生活も最後の方になってから。ストリートミュージシャンに声を掛けて撮らせてもらうという。高校のときは「ああ、部活ね」って分かる制服の安心感に守られてたけど、今そんなことしたら「事案」かもしんないな笑

今回は感度の関係でネオパンにしたけど、コイツの本領発揮はカラーだと思ってる。参考までに↓。

加工とかはしてない。新しいカメラでは出せない色合いがたまらなく好きだ。身近に暗室があれば現像も自分でやっちゃいたいところではある。屋外で昼間ならカラーで撮れるんだがなぁぁ…フィルムの感度ももっと下げられるだろうし…

カメラの話はこれぐらいにしとこう。で、なんでこんなに時間がかかったかって?夢がパトローネに収まり切らなかったからさ(訳:不慮の事故っす)。これがなかなかドラマチックな現像劇になってしまったのだ。興味無い人はしばらくスクロール。

2019/05/19日夜、HUMAN PARTY tour finalから一夜明け仙台に帰還した。その時点でフィルムが2枚くらい残っていたのだが早く現像に出したかったため、適当にその辺の景色を撮影し、その場でフィルムを巻き取ってカメラから取り出した。カメラ屋に持ち込んだところネオパンの現像は東京の工場に送らないとできないらしく、1週間ちょっとかかると言われた。

して、受け取り予定日が来たので再びその店に行ってみたわけだ。初めての撮影条件、上手く写っているだろうか、光量はどうか、ピントは大丈夫か、前の人達のスマホしか撮れてなかったらどうしよう…など、期待と不安に胸を膨らませながら受け取りに行ったわけだ。ネガとL判プリントの入った封筒が渡される。しかし、確認のためその場でそれを覗き込んだ私が目にしたのは、予想もしていない光景だった。以下、そのときの封筒の中身。


………えっ………?

何これ。え、みじか…短くない?いくらなんでも短くない?36枚撮りだったと思うんだけど。というかL判プリント1枚て何。しかも、これって余りを使い切ろうとして撮ったその辺の景色じゃん。帰ってきてから最後に撮ったやつ。なんで?残りの35枚どこいった??「短尺フィルム」だ?いや確かに短いけどさ、これだけじゃなくない?もっと長くなかった?

もうパニックだ。「あ…え…?」状態の私に気付いてくれた店員さん。「…ぇ……少々お待ちください。」

どうやら、店員さんにも状況がよく分からないらしい。店頭に出ている人が現像の工程そのものに関わっているわけじゃないからな。工場から送られた何かの書類を一生懸命確認してくれた。

「…入ってないですね…」店員さんの手には分解されたパトローネ。綺麗に空っぽだ。つまり、この中にも入っていなかったということになる。…何なのマジで。フィルムどこへ消えた!しかも最初に出てくるはずのベロ側が無くて一番後ろの方だけ残っているってのはどういうことだ。イリュージョンか?ホラーじゃんか。「なくした一眼レフ」ならぬ「なくしたモノクロフィルム」。なくすか普通?しかも一部だけ。どーいうことだ!!


「…恐らく途中で千切れてしまったんだと思います。その後カメラの中は確認されましたか?」と店員さん。チギレル…フィルムガ……?マンガとかでよくある「感情」や「ココロ」に接して狼狽えるロボットみたいな、抑揚のない反応になってしまった。で、手元にわずかばかり残っているネガを凝視する。確かに、「スッパリ両断」というより「頑張って頑張って粘ったけどアカンかったわ」みたいな断面。…送り穴が千切れてる…?ということは、業者さんが暗室でフィルムを引き出したときじゃない。事故が起こったのはカメラの中、恐らくはフィルムを巻き取るときってことだ。言われてみれば、巻いてるときやけに(軽いな…?)って感じはあった。でも、フィルムを取り出すとき確かにこの手でカメラを開いてる。そのとき、千切れたフィルムなんてものは目に入らなかった。

兎にも角にも、カメラの中を確認してみるより他に無い。パノパナパパラッチの後は使っていなかった。良いんだ、カメラの中に入ってればそれはそれで。…もしそこにも無かったら、それは今度こそ本当のホラーだ。怖すぎる。映画化待った無しだ。

ビクビクしながら帰宅。気が気じゃなかった。まず中に入ってるかどうかが心配だし、入っていたとしても1回は蓋を開けちゃってるわけで。見つかったところで、感光して全部ダメになってるなんていう最悪の結末が待ってるかもしれない。

我がアパートのお手洗いには窓が無い。キッチンの電気を消して扉を閉めれば、ほぼ暗室と同じ環境を得ることができる。カメラを開くならここが一番適しているだろう。意を決してカメラを開き、恐る恐るスプール付近に手をやる。カサっと軽く何かが手に触れた。どうやらカメラ内部からちょろっとはみ出しているらしいそれを、そっと指の腹で摘まむ。やけにツルツルとした感触。ゴミなんかじゃあない。私は、この感触をよく知っている。

……もうこの夏一番のホラーだぜ。稲川淳二も真っ青だよ。…いやだなー、こわいなーってね。そぉーっと触ってみたら…あるんですよ。フィルムが……千切れてるの。

実際にそれが手に触れてなお、俄かには信じられなかった。だってフィルム本体は既に取り出しているんだ。自分の手でカメラを開けて。フィルムをセットする部分がパカッと大きく開くんだから、千切れて残っていれば視界に入りそうなもんだけど…巻き取り終えたっていう思い込み。フィルムが千切れるなんてっていう先入観。人間の目なんて信用できない。大切なフィルムはカメラの右端で小さく丸まって助けを求めていたのに、それに気付いてやれなかったのだ。私はなんて非道い奴なんだろう。

こうして無事(?)フィルムは見つかった。希望は消えていない。あの日カメラを開いたのは夜の屋外だった。ゴミが入らないように開けるのは一瞬で済ませたから、フィルムにはさほど光が当たっていない可能性が高い。であれば、このままフィルムを光に当てないようにして現像できれば望みがあるのだ。しかし、今回使用したフィルムのISO感度は3200。暗い場所でもしっかり光を捉えるということは同時に、ごくわずかな光が当たっただけでダメになるということも意味する。50:50だ。せめて内側の数枚だけでも無事でいないか、賭けてみるより他に無い。

そのままカメラごと写真店に持ち込むのが良いと知り、近場の店を探した。念のため、事前に電話で事情を説明。やはり1週間程度かかるそうだ。巻き取りに失敗したこと。中のフィルムはおそらく現像液に浸すのに十分な長さがあること。確認は光の入らない場所で行ったこと。でも1回千切れていることに気付かずフツーに開けちゃったこと。それは夜の屋外だったから内側だけでも無事でいないか、希望を捨てたくないんだということ。多少の光線被りは気にせずプリントしてほしいということ。伝えたいことを次から次へと説明したら、電話の向こうの声はそれを全部真剣に聴いてくれた。

千切れたフィルムを暗室で取り出さなければならないので、カメラごと預けることになった。1週間後に迎えにくるからね。それからはあまりこのことを考えずに過ごした。期待し過ぎず、でも希望は捨てずに。この間、気のせいかもしれないけど仕事に家事に身が入ったと思う。

数日後、1本の留守電が入っていた。「プリントが終わりましたので、ご都合の良いときにご来店ください。」

「プリントが終わった」。「現像が終わった」じゃなくて。一気に目の前が明るくなったような気がした。この際数は少なくても良い。いくらかでも、写真紙に焼くところまで行ったならそれで良い。受け取りカウンターでネガとインデックスを見て、はしゃいでしまった。


何だこれは……めちゃめちゃ撮れてる。やはり蓋を開けた際に光が入ったようだが、駄目になったのはほんの数枚ばかり。店員さんも「良かったです~!」と言ってくれた。もうあの写真屋さんの方角に足を向けて寝られないのであった。

自分用の覚書も兼ねて。3200で60分の1。これぐらいで丁度良かったみたい。照明の感じによっては120分の1くらいにしても大丈夫そうかなあ。ネオパンなら荒さもそんなに気にならない。立ち位置は迷ったんだ…LIQUID ROOMは広くて、後ろの方が1段高くなってる。全員を一気に視界に入れるなら、あえて後方に陣取るって手もあったけど…やっぱりライブはなるべく前の方で聴きたい。自分の中での最優先事項はシャッターチャンスより音と熱気だった。

次にまたこういう機会があったら、最初から望遠を付けて行くこと。そして、厚底のスニーカーを手に入れること。あと2㎝でも高ければ、随分と視界は変わるはずなんだ。浪越さんと夢希さんはレンズに捕らえるとか以前の問題だった。見えなさすぎて。タノさんはなんとか撮影を試みたものの、やっぱり難しかった。そりゃそうだよな。パパラッチ甘く見てた。みんなのスマホがよく見えるぜ!!…というわけで、ほぼ岩渕さんしか撮れてない。

結論:被写体良ければ全て良し。撮影楽しければ全て良し。現像キレイで更に良し。言うこと無し。


以上、私なりの切り取り方をした人間のお祭り、いかがだったでしょうか。#人間集会、最高のタグです。素敵な写真・動画ありがとうございます。この先、パノパナパパラッチはまた開催してほしい。何度でも何度でも撮りたい。本当に。お願いします。聴くのも観るのも撮るのも楽しすぎるよ。

して、もしこの先、ライブ撮影にフィルムカメラで臨んで、巻き取りをしくじって、突然の「短尺フィルム」宣告を受けて途方に暮れる人がいたなら。[ライブ撮影][フィルム][千切れた]で検索だ。大丈夫。フィルムはまだカメラの中で貴方を待っている。信頼できる写真屋さんに持ち込むんだ、カメラごと。諦めるのはまだ早い。このnoteに書いたことが、いつかの誰かのテンパりと絶望を救うことを願って。

最後となったが、フィルムが千切れたときの的確な対処法を調べてサポートしてくれたS氏の全面的な協力に、この場を借りて改めて感謝の言葉を届けたい。本当にありがとう。

予期せぬミスもトラブルも、シャッターを切れば最高の思い出に変わる。ファインダー越しにいつでも思い出すよ。写真っていいね。

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