家賃滞納をしたが故にできた彼女と結婚した1
「つきましては、ちゃんとした支払い方法を提示していただけない以上は、契約解除せざるを得ません。」
3月の終わり、私が大学2回生に上がる直前に管理会社から送られてきたメールである。
私はアパートに入居して以来一度も家賃を払わずに6ヶ月間住み続けてしまった。家賃を滞納して3ヶ月以降、催促の電話が週に何度かかかってきたがそれを鬱陶しく思った私は、着信拒否をした。
私の母が父にしたことを私が大家さんにするとは…
「金稼がないとなぁ。。。」
すでにアルバイトを掛け持ちしていたが、時給千円で働く大学生が22万返すにはもっと働く以外思い浮かばなかった。
アルバイト以外金を稼ぐ方法を知らなかったので、賄い+大学生っぽさを求めて飲食店に応募した。
面接をしてくれた男性は明るい髪の毛、細く破れたスキニー、金色のピアスと、私と正反対の人種だった。
「何曜日入れる?」
「いつでも入れます」
「月何万欲しい?」
「できるだけ多く」
「金に困ってるの?」
「実は家賃滞納してしまっていて…」
男性は何やら電話をし出した。
数分店内で待たされた後、店に入ってきた男性はいかにも「サッカー部上がりのヤンキー」のような身なりだった。大きなネックレスにハイブランドの洋服を身につけた男性は
「訳あり???」
と私に言った
「実は家賃滞納してしまい、金が必要なんです」
「君キャッチやる?多分向いているよ」
キャッチとは道ゆく人に声をかけて居酒屋や夜の店に連れていく迷惑な仕事である。
「やります」
条件も何も聞かない前に何をやるかもわからない仕事をやることを承諾した。
「金が稼げそうだった」という理由からだ。
その後男性に仕事内容と給料について聞いた。どうやら客を店に連れていくと会計金額の15% ~20%の金額がもらえるらしい。大体一人引いたら300円強である。
「居酒屋のお探しは〜」
飲食店面接の1時間後、私は「キャッチ」になった。
「居酒屋のお探しは〜」
「居酒屋のお探しは〜」
「居酒屋の…」
3時間ほど声をかけ続けた初日の成果は0人。歩合制のバイトだったため給料もゼロ。
時間と電車代を失っただけの初日だったが、社長の「30万稼いでいる人もいるよ」という嘘を信じてしまい私はやる気になっていた。
次の日も道ゆく人に声をかけた。
「居酒屋のお探しは〜」
若いサラリーマン3人組が立ち止まった。私が初めて引いた客である。
「安くしてよ」
「喜んで!」
会計の10%引きという条件を飲んで、店に連れて行った。ものの5分で1000円稼ぐことができた。
私はさらにやる気が出た。私なりに他のキャッチを見て、声の掛け方を変えた。
「1000円で飲み放題いけますよ〜」
もちろん1時間1000円+飲食代+お通しで2000円は超えてしまうのだが、立ち止まってもらわなければ、何も始まらない。
声の掛け方を変えたら急に客が引けるようになった。
初月の給料は10万。
悪くはなかったが、生活費と学費の支払いを考えると家賃滞納を支払うには足りなかった。
もっと金が必要だった。
私は社長に客の引き方を聞いた。
「俺、マッチングアプリから客引いたことあるよ」
私はすぐにマッチングアプリに登録した。
なるべくいけてる写真をトプ画にしキャッチとバレないよう、普通の健全な恋愛がしたいと偽った。クソである。
マッチングアプリで合コンを組み、私の指定した店に行ってもらう。私は用事があると5分で店を出る。クソである。
醜い金の稼ぎ方だが、それでも金になればいいと思っていた。それほど金がなかった。
マッチングアプリを使ううちに楽しそうな同年代の人を見て私も彼女が欲しいと思った。
合コンをするような活発な子より大人しく静かな子がいいなと思いマッチングアプリに登録している女性を選別した。
1回目、2回目と自分が想像した人とかけ離れた(いわゆる写真詐欺)人が来他ので3人目は慎重に選んだ。
「午後5時に金時計で待ち合わせね」
私は前回、前々回のことがあり先の到着した彼女を遠くから見た。写真詐欺されていたら帰ろうと思っていたからだ。心底クソである。
そこには後に妻になる彼女が待っていた。正直遠くからでは、
「なんか可愛いかも」
位しかわからなかった。
To Be Continued