LHTRPGオンラインセッション体験録 実践リプレイ ~CR1シナリオ「桜の樹の下で」part.1~

この記事はTRPG初心者でありました筆者が、オンライン環境にて「ログ・ホライズンTRPG(LHTRPG)」を遊んでみた記録です。​「ログホラ好き!」「エルダーテイルやってみたい!」「TRPGは知ってるけど何となく参加しづらい!」「オンセの雰囲気が分からない!」といった方々に、現場の様子を少しでもお伝えできれば幸いです。

※本編突入にあたりまして、今回以降「はじめに」「おわりに」の項は省略いたします。実際の時系列に沿った、ダイレクトな体験談をお楽しみください。また、完全なるLHTRPG未経験者さまにおかれましては、別途投稿済みの「初心者が語る」シリーズを事前にご覧いただくことをおすすめします(以下part.1へのリンク)。https://note.com/esca_rhmyamaze/n/nbd8463d8129a

〈実践リプレイ:本編前、舞台裏にて〉

どうも皆さん、カタツムリのNです。
お待たせしました。ついに本格的なリプレイが始まりますね。挨拶は手短に済ませつつ、今回もログを辿っていきますよぅ。ひあうぃごー。

雑談と共にぼちぼち進む事前準備。part.0でお送りしたキャラ折衝に引き続き、その日もDiscordにてセッション前の話し合いが行われておりました。最後に一つ、決めておかなければならないものが残っていたことに気づきまして。

N:HOと、PCと他諸々……あと決まってないの何でしょう。ギルド名?
まーさん:ですかね
(一同、再びの長考)

MMORPG〈エルダー・テイル〉において、PCたちが所属していたギルドの名前
HOをご覧いただいても分かる通り、今回のシナリオは「PCたちが同一のギルドに所属している」という状況設定を有しております。本編前に時間が取れるのならば、今のうちにギルドネームも決めておこう、という流れになりました。

何でもそうですけれど、名前を付けるのには時間がかかりますよね。命名方法はいくつかありまして、パーツの選択肢が並んだ「ギルド名決定表」を使い、ダイスを振って決める方法もあるそうです。しかし、当然ながら話し合いを通して普通に決めてしまってもOK。それも含めて暫し相談したのち……

なお:「パッチワーク」なんてどうかなぁ、と。ギルマスが縫ちゃんなのと、皆の絆を繋ぎ合わせていこう的な感じで
錦水仙:いいですわね
あっ良い
まーさん:おおおっ、とてもすてきなお名前です
なお:すごい凡庸なネーミングセンスなんですけど、それでもよければー。最終決定権はギルマスにお任せしますよ
GM:願いが込められたいい名前だなぁと思います
いやあ、折角のご提案ですしギルマス()的にも決定でいいと思いますよ。皆さんも好ましい反応でいらっしゃいますから

渡りに船なご提案を元に、当セッションにおける私たちのギルド名は「パッチワーク」に決定。何やら既にお嬢様口調の方がいらっしゃるのはさておき、参加者全員が納得する形での命名となりました。いぇーい。
ここに至り、必要な決め事は全て終了したことになります。あとは期日を待つばかり。お部屋の準備やコマ・チャットパレット作りなど、決めておいたデータを元にセッティングを進める一同。

そして、その日がやってきます。
セッション当日――新しい冒険の始まる日が。

〈実践リプレイ:プリプレイ〉

もうじき梅雨も終わる頃。夏の気配をかすかに感じつつ、オンセツールの一部屋に我々は集まりました。この季節、屋内だからといって油断は禁物です。体調よし。飲み物よし。パソコンの調子も問題なし。
ならば飛び込みましょうとも。さあ、セッションスタートですよっ!

GM:さて、揃いましたかね。点呼ー
なお:
錦水仙:1!

まーさん:
錦水仙:数えるやつじゃなかったですわ
あるある
まーさん:当方テキセのセッションの本格参加が初めてなのでドキドキが止まりません……
GM:皆さんいますね。それでは、はじめたいと思います。宜しくお願い致します
なお:よろしくお願いしますー
まーさん:よろしくお願いいたします
よろしくお願いします―
錦水仙:よろしくですわ

そして再びの軽い自己紹介。ここもほぼ同内容でしたので省きますけれど、以後、左記のお名前をPC名に置き換えたいと思います。そしてGMとPLの他にも、華音さんの自己紹介中に参加してきた御方がもう一人……いえ、もう一頭。

錦水仙華音「皆様ご機嫌よう。ソーサラーの華音と申しますわ。こちらは愛馬のメジロケンタッキーですの。メジロ”マック”イーンとは何の関係もありませんわ。あしからず」
メジロケンタッキー:「ヒヒーン」
まーさん律香:なんか鳴いたよ??!!
なおシュエットケンタッキーw
華音ぶっちゃけこれがやりたかっただけの一発ネタですわ
ファストフードってそういう……
GM:ハンドアウトは参謀。CR1で《ライトニングネビュラ》持ちということもあって戦々恐々としております。キャラの濃さもピカイチですね。宜しくお願いします。
シュエットよろしくお願いしまーす
よろしくお願いしますー
律香よろしくお願いいたします!

華音さんは〈駿馬のオカリナ〉というアイテムを所持しておりまして、この子は当該アイテムの効果で呼び出せる召喚生物でございます。PC本人の濃さに加え、馬専用の立ち絵まで用意してらっしゃる気合の入りよう。へへ、おもしろくなってきやがったぜ(震)

さてさて、お次は初期コネクションの取得。PCたちの関係性はどんな感じなんでしょうか。

GM:縫さん→シュエットさん→律香さん→華音さん→縫さん、で初期コネクションをとっていきましょう。ダイスで関係を決めたい場合は、半角でKOYUと打てば、表が出ます。もちろん選択でもOKです。
シュエットはーい、シュエットはチョイスで「友情」を
GM:シュエットさんと律香さんは友達同士!
シュエットそう、お友達!
律香はい! おともだちですっ!
言ってましたものね。わたしは振ろう(コロコロ)
〈交友対象の英雄〉 あなたは、交友対象から英雄視されている。それは例えあなたが否定しても変わらない。
一体何をしたという……w
GM:さすがギルマス
律香輝く瞳で見つめられてるんだろうなあ
シュエットふざけて言ってる可能性が微レ存
わたし前回別の方からもダイスで英雄引いてるんですけれど

うーん、ミラクル。

華音「なにか」を感じ取ったんでしょうか
シュエット「ギルマスはねー、うん、かっこいい女の子だよー。でも僕のヒーローはゼル(恋人)だけだからなー」くらいのテンションで英雄視してるかとw
華音あ、わたくしは縫さんに「親愛」を
GM:愛されてるっ!
華音
「ちっちゃくて可愛いですわ」
縫:よーし立ち位置が見えてきたぞう(頭を抱える)
GM:あとは律香さんから華音さんに、ですね。ダイスでも、チョイスでもお好きな方で
律香了解しました。ダイス振ります(コロコロ)
律香〈交友対象の恩〉あなたは交友対象に恩を受けた。今度は自分がその恩に報いる番だ。
GM:参謀、なんかたすけてたっ!
シュエットまたいい感じのがw
律香恩、受けてそうだ……
華音多分戦場に乱入してネビュラぶっ放したんですわ。馬に乗って
GM:なにそれかっこいい
メジロケンタッキー:「ブルルッ……」
シュエットその時シュエットがいなくて律香ちゃんがピンチやったんや……
律香ピンチの時に助けてもらったんだろうなぁ。馬に乗って……
縫:助けた相手に馬上から声をかけるお嬢さま(男)

順調に関係性が定まり、会話の弾む参加者一同。時間の都合にも左右されますが、こうやってしっかり関係を掘り下げておけると非常に楽しいですよね。期待も膨らむ。そして消えない馬のインパクト。

次に、因果力チケット&プリプレイ特技の使用フェイズでございます。サブ職業と特技の組み合わせによっては、ここで食料やポーションなどのアイテムを手に入れることができちゃいますよ。ただ、今回はそうした特技は全員なし。CRが低いと特技の数にも限りがありますからね。

GM:因果チケットの使用1枚推奨です。使う人は宣言を
シュエットはーい、使いまーす
縫:一枚食べます
華音チケット1枚使いますわ
律香チケット使いますー
GM:で、今回CR1でちょっとPCにやれることが少ないのでEXパワーも配っちゃいます
律香(データを見て)おおお! 個別だ!!

ここで思わぬプレゼントが。
「EXパワー」とは、そのセッション限定で使えるボーナス能力みたいなものです。種類は考えうる限り無限大。回復、攻撃、ダイス目の増加など、キャラ設定やストーリーに沿った様々な特典を得ることができます。

今回いただいたEXパワーは5つ。各キャラ一つずつの判定強化能力と、パーティ全員で一度だけ使える疲労回復能力ですね。ここでは細かなデータは省きますが、どのように活用されたかはストーリー本編をご覧あれ!

PL一同:ありがとうございます!
GM:
今回の難易度はノーマルですが、EXパワー使用ということで、ハードと同等のGM因果いただきました。さて、これでプリプレイ終了です!

〈実践リプレイ:オープニング〉

さあ、ここからがお待ちかねの本編ストーリーであります。まとまったロールプレイが見られたシーンには、たまーにカットインを挟んでみたりしています。お気軽に覗いてみてください。

GM:今回は大災害経験前シナリオということで、まだ皆さんは画面の前。エルダーテイルをゲームとして遊んでいるところからのスタートです。それではよろしくお願いします。
縫:よろしくお願いしますっ
シュエットよろしくお願いしまーす
律香よろしくおねがいしますですー
華音よろしくですわー
GM:というわけで、15分後に大災害が起きますので、それまでRPどうぞ!
律香(字面で笑っている)

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それは、ゴールデンウィークの一夜だった。
20年もの歴史を持つMMORPG〈エルダー・テイル〉。空前絶後の規模を持つこのゲームの人気は衰えを知らず、日本人だけで10万人以上――世界中で2000万人を超えるプレイヤーが存在する。彼らは各々のキャラクターを操り、作中世界〈セルデシア〉の大地を思いのままに冒険していた。

「二分の一サイズの地球」とも目される広大な世界だ。当然、現実の日本列島を模した地域も存在する。〈弧状列島ヤマト〉なるその地域の北端には、ちょうど札幌以南から青森県にあたる〈ライポート地方〉と呼ばれる地があった。ここはその一角、桜の街〈ヒロサキ〉。名物である月夜見の大桜を前に、四人のプレイヤーが集まっている。

「ふふん、我ながら良いアイデアだったんじゃない? ゲームでお花見ってのも乙なモノよねー」
「お花見……! みんなでお花見……!」

総勢10名の小さなギルド〈パッチワーク〉。彼らは新しいメンバーの歓迎会も兼ねて、ゲーム内での花見を試みていたのだ。ボイスチャットからはメンバー同士の会話に加えて、ポリポリとお菓子を食べる音も漏れ聞こえてくる。

「ぷっはー! やっぱ花見に酒は欠かせねぇですわ!」
「映像とはいえさー、やっぱ綺麗だよねー」
「時間見て少しは自重しなさいよアンタら……言い出しっぺあたしだけど」

呆れ気味な声の主は、ギルドマスターにして〈武闘家〉の縫。視線の先には、既にして酔いが見られる〈妖術師〉華音、狐尾を揺らして無邪気に駆け回る〈森呪遣い〉シュエットがいる。構わず「わはー」と走り去る姿を見ると、彼女の呟きは届かなかったらしい。華音のほうも相変わらず、お嬢様風の見た目からは想像できない声を出しつつ酒を呷っていた。
今回の主賓である新人〈吟遊詩人〉の律香も、似たり寄ったりな勢いで「最近手に入れた地酒あるんですよー!」などと言っている。それを見て縫は諦めた。誰に見せるでもなく苦笑すると、小柄な身体で歩き出す。

ゲーム内の時刻は日中であるが、現実は既に深夜だった。
あと数分で日付が変わる。大型アップデート〈ノウアスフィアの開墾〉を目前に控え、この時ばかりは全員が花見を楽しんでいたのだ。

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華音:「んっくんっく、ぷへぁ。……もろともに 我をも具して 散りね花 うき世をいとふ 心ある身ぞ、でしたかしら。西行も勿体ないことを言いますわね。極楽には曼珠沙華しかありませんのに」
GM:とかやってると、縫さん縫さん
縫:おっと
GM:貴女に念話(ゲーム内で使えるボイチャ機能)がかかってきます
華音:「まぁわたくしには関係ありませんわ! そーれ三本目! プシュッ」
縫:「ん、待って。ちょっと着信」取ろう
華音:「んぅ?誰からですの?」
GM(トウカ):「ギルマスごっめーーん。〈妖精の輪〉入り損ねたー。トウカ他5名、次のタイムテーブルで飛ぶから着くの遅れます!!」

念話の主はトウカさん。ギルドメンバーということで登場しました、GMからのゲストキャラです。設定としては女子大生の〈吟遊詩人〉で、カレーアイドルを自称する濃い御方。このギルドすごいのばっかだなぁ(遠い目)

と、会話に登場しました妖精の輪(フェアリー・リング)とは、各地に点在するワープゾーンのことです。攻略サイトを見ないと把握できないほど複雑なタイムテーブルが組まれていますが、時間を間違えなければ行きたい場所に一瞬で飛んでいけます。しかし、どうやらトウカさんたちは乗り遅れてしまった様子。

縫:「そ。残念だけど仕方ないわ。もう遅いし、あんま遅れないでよね」みんなに伝えよう
華音:「どうかしましたの? 縫」
縫:「他のギルメンから。リング入り損ねて遅れるらしいわ」
シュエット:「そっかー、じゃあアプデ後にみんなでお花見だねー。……はっ、ここ登れる!」キャラが木を登っていく
華音:「え、マジですの?! お待ちなさいシュエット! わたくしてっぺんで花見酒したいですわ!」追いかけて登っていきます
律香:「アップデート、0時でしたっけ?」
縫:「そうね。確か、ノウアスフィアの……って、そこ二人。あんま無茶な挙動してると、まーたポリゴンめり込むわよ」
シュエット:「登れるから大丈夫だもーん。スタックしたらワンクリックで抜け出せばいいんだよー」
縫:「……ま、いいか。アプデで位置情報もリセットされんでしょ」

うはははははこの人たち自由すぎる(震)
そんなこんなでロールプレイが積み重なっていく中、いよいよアップデート直前を迎えます。誰からともなくカウントダウンを始める我々。

シュエット:「5ー、4ー、3ー……」
華音:「ツヴァーイ、アイーン……」
律香:「何語ですかそれっ!?」
GM:そして、ゼロを縫がそっとつぶやいた瞬間。……皆さんの意識は、ホワイトアウトしました。

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「あれ?酒回った?」

華音の呟きに答える声は無かった。
それどころではない。さっきまで、僕は 私は 何を していた?

どこまでも深い闇。
圧倒的な黒色の世界で、揺らめく炎が異郷の文字を形作る。
意識は無い。感覚も無い。記憶は断絶し、抵抗は叶わず、ぼんやりと、ただ魅入られるように「自分」という存在が溶けてゆく。
最後に見えたのは……海、だっただろうか。ふと零れ落ちた虹色の欠片を、セルリアンの煌めきが包んでいた――。

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GM:皆さんはゆっくりと目を覚まします。知らない、いや、どこかで見たような風景。風、匂い、光、見える世界は……RPどうぞ
縫:目をしばたたかせつつ「何、よ。これ」
シュエット:「んん……? っておわぁ!?」危うく落ちかける
華音:「っん、なんだぁこりゃあ……!?」一気に酔いとロールが醒める
律香:「うん、うーーん……桜……???」頭を抱えながら呆然と桜を見上げる

さーて、御多分に漏れず大混乱。そりゃそうです。なんせ、目の前にあるのはどう見てもあの桜。〈エルダー・テイル〉で画面越しに見ていた、そっくりそのままの風景なのですから。
木の上にいた男性二人()と、下にいた女性二人は、アバターそっくりなお互いの姿に顔を見合わせます。

華音:「よし、落ち着け。ここは誰でわたしはどこだ」
シュエット:「高い! めっちゃ高い! わぁー桜綺麗だなー!!」大混乱
華音:キョロキョロとあたりを見渡して「ん? シュエットじゃん」
シュエット:「皆いる! けど! 降りれない!」枝にしがみつき中
華音:「てかたっか! タマヒュンするわ!」
華音:「ん?」体をまさぐる「タマ……無くね?」
シュエット:「やーいタマなしー!」
華音:「やかましい!」

縫:「ええと、とりあえず……リツカ、よね。そのアバター」
律香:「は、はい、わたし律香です……って、縫、さん???」
縫:「待って、頭痛くなってきた。それならあっちで騒いでんのは」

ここでようやっと合流する2グループ。遠目にも見事な桜の木の上に、エンドレベルのベテラン二人が呆然と佇んでいます。

縫:「ひとまず降りなさいそこ二人!」
シュエット:「無理☆」
華音:「つったってどうやって降りろってんだよー!」
GM:では、華音は、あれ、これくらいの高さなら飛び降りられるのでは? と思いました
華音:「……ん? 待てよ? これくらいの高さなら……おいシュエット、ちょっと飛んでみないか?」
律香:「えっ、えっ……? それは――」
シュエット:「マジで言ってんの? えぇー……。じゃあ、せーのでね」
華音:「そりゃあ!」
GM:体操選手も顔負けの動きで着地を決める華音とシュエット。どうやらこの身体は、驚異的な運動神経をもっているらしい。
華音:「来いッ! ケンタッキー!」
メジロケンタッキー:「ヒヒーン!」
華音:「よし、どうにかなったな」乗ったまま
シュエット:「おわー」2頭身の生き物がくるくる回って落ちてきてスーパーヒーローチャクチを決める

凄まじい運動能力。これがゲームの身体、ということでしょうか。二人の常人離れした動きを見た縫は、意識を凝らすと眼前にウィンドウが開くのに気づきます。ゲームだった頃と同じ、メニュー画面の表示ですね。

GM:見慣れたメニューウインドウがならびます。そして一つだけ使えないログアウトボタン。その横で、念話ありというウインドウが点滅する。
GM(トウカ):「ギルマス、ギルマスーー、生きてるー? ぶじーーー?」
縫:「ん、これって……念話?」取りましょう
GM(トウカ):「よかった、通じたぁ」
縫:「トウカ、そっちも来てたのね。っていうか、よく使えたわね念話機能」
GM(トウカ):「うん、いまみんなでいろいろ試してたの。シブヤで6人PTでいるんだけど……〈都市間転移門〉も止まってるみたいだし、シブヤにはギルマス達いないみたいだったから、念話してみたんだ」
シュエット:「おー?」突然虚空に向かって話し始めた縫ちゃんを見て首を傾げる
華音:「念話……のようですわね」
縫:「そ。ひとまず全員無事なら安心したわ。こっちはまだヒロサキよ。主賓の新人ちゃんも、フリーダム二人も一緒」
GM(トウカ):「あちゃー、でも、ギルマス達もシブヤ経由で移動してたよね? 《帰還呪文》は使えるみたいだよー」
縫:「そうなの? それならひとまず帰ってから、になるかな。ありがと」

《帰還呪文》はエルダーテイルに備わっていた機能で、最後に訪れた大きな町にワープするコマンドです。原作では、ゲームからログアウトする前に拠点まで戻っておく……というような使い道が示されていましたね。
今の我々はゲームの世界に入り込んでしまっておりますが、幸い《帰還呪文》は生きているようです。それで一気に「シブヤ」および「アキバ」まで戻れるかもしれない、というお話に。現在、PC一同は本州最北端にいるわけですからね。この異常な状況下、まずは拠点に戻るべきでしょう。

縫:「アンタたち、トウカから念話」
華音:「彼女からはなんと?」
縫:「出遅れ組はまだシブヤらしいわ。何を置いても、まずはあっちに戻ってからになるわね。それと、《帰還呪文》は使えるみたい」
シュエット:「んじゃ帰ろー」
律香:「そうですね、まずは何が起きてるのか、少しでも多く知りたいです……!」
シュエット:「よーし、じゃあ《帰還呪文》は、と……」メニューから選び出す

《帰還呪文》を選択すると、ゆっくりと詠唱がはじまります。ゲームだった頃に見慣れたエフェクトが一行を包み、ひゅっという軽い浮遊感と、先ほど感じたようなホワイトアウト。そして、四人が目を覚ますと……

GM:……桜が、目の前にありました
華音:「あ、あら?」
シュエット:「機能してないねぇ……?」
縫:「……おかしいな。トウカ、さっきは確かに使えるって」
GM:状況を調べると気づきますね。エリア情報の欄に、《レイドゾーン 桜が封じし迷宮(シールオブチェリーブロッサム)》と、表示があります。

登場しました原作用語、レイドゾーン。超高難易度のコンテンツ「大規模戦闘(レイド)」が行われるフィールドで、24人ものプレイヤーが連携しなければ全滅は必至という鬼畜ゾーンです。さらに、帰還呪文で逃げることも基本的にはできません。何それ怖い。
そして、現在地がそんなレイドゾーンに設定されているということは。

シュエット:「……なるほど、だから《帰還呪文》が効かなかったんだ」
華音:「レイド……?! こんなところにレイドゾーンなんか…」
GM:以前はありませんでした。しかし……
シュエット:「アプデの影響じゃないかな? よくあるでしょ、追加マップ」
縫:「ちょっ、割と問題じゃない? 〈妖精の輪〉で戻るにしたって」
律香:「そもそも〈妖精の輪〉って、たしかタイムテーブル複雑なんですもんね……」
GM:と、皆様が頭を悩ませていると。
GM(???):「きゃーーーーーっ!」
華音:「なんですの?!」
GM:女性の悲鳴が桜の反対側からきこえます

ここでハプニング発生!
さあ、変わり果てた世界で〈パッチワーク〉はどうなってゆくのか!?

To be continued……

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