火曜サスペンス劇場的な場面に遭遇したら、どう振る舞うべきだろうか
先週金曜日、昔の会社の同僚Hから急に電話がかかってきた。
Hは飲食店で働くのが大好きで、すんごい美人ですんごい天然。
驚くほど他人ファーストでそれで身体をぶっ壊すことも何回か。
バイトだろうが正社員だろうが働くスタンスは変わらず、仕事に対する責任は人一倍。
でも、友だちに対してはちょい適当で、ドタキャンが当たり前だった。
働きすぎて疲れてぶっ倒れるので、休みの日の約束が基本実現しない。慣れすぎて、約束の場所に来たときはむしろ感動した。ちなみに今は返事が遅いだけでちゃんと約束した日は守る。
そんなH、今も3件ほど飲食店のバイトをしていて、「え?お前エリアマネージャーか?」ってくらいの仕事ぶりを話してくれた。
ただ、やっている内容がわたし的には「それはちょっと出しゃばりすぎじゃない?」って思ってノアで、「そんなにやりたいのなら、お前社員というか責任者になって動けよ」と言った。誰もがお前と同じ熱量で仕事できるとは限らない。
そんな彼女、1週間ほど音信不通になったことがある。
真面目の塊な奴から連絡が途絶えた
6年くらい前、わたしたちは同じ会社にいた。
ライターとして勤務していたわたしと、カスタマーサポートとして勤務していたH。
基本リモートワークだったのでやり取りはチャット。
マメなHのチャットがあるとき途絶えた。
1日くらいなら「今日はお休みかな?」で済むので、最初は気にならなかった。
1週間。
何も反応がない。
心配になった経理のお姉さんが電話するも反応がない。
「彼女の家に行こうと思う!」と言ってきたので、「いや、姉さん家知らんやろ。それに姉さんが行くよりわたしの方が近いから、わたしが行くわ」と言って彼女の家へ。
で、一応、最悪の事態を考える。
火曜サスペンスでよくある、「管理人さん、鍵あります?」ってやつ。
「あいつのマンションの1階管理会社の電話番号書いてたよな・・・万が一は
そこに電話して鍵あけてもらおう・・・」
ピンポンを押す。
そのあと、ドアに耳をくっつける。(怪しい)
音がしない。
もう一度、ピンポンを押す。
ガタッと音がする。
さらにピンポンを押す。
ここで「エス子やでーーー開けてーー」と名乗って、うるさい女がドアの前にいると近所の人に通報されても嫌だなと思い「あたし!!来た!!!」と玄関の前で(一応小声で)叫ぶ。
すると少しドアが開いて、チラッとHが顔を出す。
「生きてた!」と思って安心した。
「H〜〜あんな!」って話そうとするとドアが閉まる。
「ちょい待てや!」と開かないドアにツッコミ。
そしたら再度ドアが開いて「エス子どん」と言われて(彼女はわたしに「ちゃん」でも「さん」でもなく「どん」を付ける)中に通された。
目の光が失われた人の部屋
家の中に入るとよどんだ空気。
シンクから溢れそうな食器類。
お風呂の排水溝には髪の毛がごっそり。
ゴミ箱に入りきらないゴミ。
一瞬、足の踏み場に迷う部屋。
Hの性格上、こんなに荒れているって有りえない。
とりあえず、ゴミ捨てながら話かけて、窓を開ける。
Hの目には力がない。
相槌は打ってくれるけど、目を合わせてくれない。
11月だったので寒かった。
けど新鮮な空気が入ってきて「あーーー気持ちいい」って言いながら、話をした。
死んだ魚のような目に少しずつ光が戻ってきて、ポツポツと話し出すH。
連絡がなくなる前日、仕事を終えてベッドに腰をかけたらそのまま動けなくなったらしい。
それでもお腹は空くから、家にあるもので食いつないでいて、最後はぼんち揚げを食べていたとか。
実はその頃一緒に働いていた人が少し問題ありだった。
真面目でお客様のことを常にファーストで考える彼女とちょっと合わなかった。
儲かればいい、と無理やり売り込む人と
お客様のためにゴリ押しセールスはダメだという彼女。
会社はそりゃ利益を上げないといけない。
その葛藤の中で糸が切れた。
でも、糸はまたつながった。
生きるために働くの?働くために生きるの?
「お腹空いた」というので「ウーバーする?なんか食べに行く?」と聞くと外に出たいとちゃんと意思を示した。
まず風呂に入れとお風呂場に閉じ込め、食器類を洗って彼女を待つ。
寒い時期とはいえ、1週間風呂に入っていなかったので「エス子どんーー髪の毛がカピカピで洗えないーーー」と風呂場から声がしたので「何度でも洗えや!」と突き返す。
ちなみにHが最初少し開けたドアを閉めたのは、上半身裸のため服を着るために戻ったから、ならしい。(男ならどうしてたんだ・・・)
そのあと、焼肉を食べに行った。
ちゃんと食べていて安心した。
穏やかな雰囲気も束の間、「ママに電話しなきゃ!!」と電話しだす。
Hはホステスもやっていたんだけど、お店も無断欠席していた。美人な上に面倒見もいいので、人気があるのでママからは重宝され、黒服からも大切にされていた。
で、電話してお詫び。
そのあと急に出勤になる。
あとで罰金のことを聞いたら、もちろんあったけどだいぶ免除してもらえたらしい。
焼肉も早々に切り上げて、じゃあなって彼女の出勤を見送る。
何か目的のために働いていたのに、いつの間にか働くことが目的になって意味が分からなくなる。
なんてことは現代においてよくある話だと思う。
相変わらず、わたしはライターとして働き、彼女は飲食業をしている
彼女は相変わらず飲食業で働いている。
相変わらず連絡は遅い。
わたしは相変わらずライターをしている。
相変わらず彼女に「連絡遅いねん!」とつっこんでいる。
何歳から大人とか分からないけど、彼女とは大人の友だち関係だなって思う。
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