屈折率がゼロになる人知を超えたメタマテリアル:NZI材料とは
自然界に存在しない特性を持つ材料のことをメタマテリアルといいます。
このメタマテリアルは透明マントや完全レンズといった夢のような材料を実現するといわれています。
特に光に対するメタマテリアルは研究が進んでおり、電磁メタマテリアルなんて呼ばれたりするんですね。メタマテリアルのざっくりとした紹介は以下のリンクを見てもらえると嬉しいです。
今回はそんな電磁メタマテリアルの一つであるNZI材料について紹介したいと思います。
NZI材料とは
なにやら難しそうな名前ですが、名称はNear-Zero Index材料、つまり屈折率がほぼゼロになる材料ということです。(Indexというのが屈折率を意味します)
ただ、それだけかと思ってしまうような材料ですが、これが意外とすごいらしいんですよ。
そもそも屈折率とは
これだけでも、長い記事が書けるようなテーマですが、ここでは簡単に紹介したいと思います。
簡単な解釈としては屈折率は光の速さに関係する指標だと思えば大丈夫です。だいぶ雑な説明ですが、まあ問題ないでしょう
光は真空中でおよそ秒速30万キロメートルという想像を絶するスピードで進みます。これはすべての粒子の中で最も速いといわれています。
しかしながら、私たちの身の回りの光は空気中を進み、また水やガラス窓に入ると光のスピードが遅くなります。
この光のスピードを遅くするのが屈折率の影響です。
中学校の理科で習う、水面に棒を斜めに入れると折れ曲がってみるのも屈折率によるものですね。
NZI材料の中で何が起こる?
たいていの物質の屈折率は1程度です。
それに対して、屈折率がゼロになる物質では光に何が起こるのでしょうか?
まず初めに光は電磁波という波の一種です
屈折率がゼロになるNZI材料の中で光の波長が無限大になるといわれています。はじめは何それ?無限大?って思いましたが、確かに理論上つじつまが合います。具体的に例を挙げると分かりやすいです。
一般に屈折率が大きくなると波長は短くなります、そしてその分、光のスピードが遅くなるわけです。
それでは屈折率がゼロになったらどうでしょう?逆に屈折率が小さくなるので波長は大きくなり、最終的に無限大になってしまうのです。
波長無限大の光って何なんだ?とは思いますが、そこの深入りはやめておきましょう(私もまだよくわかっていません。)そんなものは存在しないという人もいそうなので、その時はNZI材料における解釈を教えてください。
とにかく、屈折率がゼロになると私たちの想像とはかけ離れた性質を持つことが予想できますね。
屈折率の議論はスネルの法則でググってみると数式としても雰囲気理解できます。
NZI材料で光を操る
この屈折率ほぼゼロのNZI材料を用いると、
斜めに入った光は屈折率の異なる界面(空気とガラス、空気と水など)を通過するとき屈折します。当然NZI材料でも屈折が起きます。
しかし上述のスネルの法則からもわかるんですが、NZI材料から出てくる光の屈折角はゼロになるため、光の方向がNZI材料の表面に沿った形になります。
それがどうした?というような性質ですが、確かにこれは普通ではない性質です。光の進行方向を材料の形状で制御できることになります。
ちなみに、透明マントには負の屈折率が必要なんて言われていますね。可視光の領域では、まだまだ先は長いですが、人類の科学技術の進歩を見れば、いずれ可能になるかもしれません。
最後に
今回は、屈折率がほぼゼロになるNZI材料の紹介をしました。
世の中には、不思議な物質がたくさんありますね。
おまけ
NZI材料の他にも誘電率がほぼゼロとなるイプシロンニアゼロ(ENZ)材料や透磁率がほぼゼロとなるミューニアゼロ(MNZ)材料というものもあります。
理系の人間はなじみが深いですがイプシロン(ε)とは誘電率を表し、ミュー(μ)とは透磁率を表します。
屈折率は比誘電率と比透磁率の積のルートで表されるため、ENZ材料やMNZ材料も特殊な性質を持つことが期待できます。
これらの光学材料は専門から少し離れて難しいので、また勉強したら記事にしてみたいと思います。