花のない花屋
私が好きなお花屋さん、
ジャルダン・デ・フルールというお店がある。
このお店を初めて知ったとき私は鬱病だった。
突然ダークな話で申し訳ない(笑)
その当時は、自分が鬱だとは信じていなかったが
(認めたくなかったのだと思う)
世界に取り残されてしまったような…
"誰からも必要とされていない"
という烙印を押された気分だった。
とても孤独だったのを憶えている。
誰とも関わりたくなく、
病院帰りに本屋さんや図書館に立ち寄り
本をたくさん読み漁り、
一人の世界に入ることが唯一の癒しであった。
そこでフラワーアーティスト
東信さんの本に出逢う。
植物図鑑という本だ。
500ページほどもある分厚い植物図鑑だが、
ページを開くと東さんの魅せる
美しい花と植物に目を奪われる。
"枯れゆく姿まで美しい"
どのページも本当に凄かった。
もともと花や植物は好きだったが、
アート作品として
吸い込まれるように見たのは初めてのことだった。
それから数ヶ月たった頃、
NONFIXという番組で
「花のない花屋 注文する客 それぞれの事情」
という東信さんの特集番組を見る。
東信さんのお店"ジャルダン・デ・フルール"では、
注文に合わせて花材を仕入れ、
世界でひとつしかない花束を作り上げる。
オートクチュールのお花屋さんである。
花束を贈りたい人の気持ち、
花束を受けとる人のイメージ、
それぞれ唯一無二の物語がある。
その人だけに贈られる
世界でひとつだけの花束。
花束を受け取った方は、
今までにない幸福感を得るのではないだろうか。
"私はあなたに愛されていたんだ"
"ちゃんと私を見てくれてたんだ"
という何にも代え難い気持ちを。
東信さんの書籍で
「花のない花屋」という本がある。
花束を贈る人それぞれの
様々なストーリーが記載されている。
これもオススメである。
東さんのさまざまな経験と想いがあり、
捨ててしまわれてしまうお花
(仕入れして売れなかった花材を処分)
をなくしたいという想いで
完全オートクチュールにし、
唯一無二の花束を作ることにしたそうだ。
「お花屋さんってお花たくさん置いてあるけれど、あれって顧客の需要がなければ
廃棄処分されるのか…」
「そりゃコンビニのお弁当だってそうだもんな…」
当時の自分の
なんとも言えない気持ちがリンクした。
花や植物にも深い愛があり、
生きているものに寄り添える
素敵な方だなと思った。
―私もそんな寄り添える人間になりたい―
ネガティブだった考えがポジティブに
少しずつだけれど変わり始めた。
AMKK(東信果樹研究所)のチームの皆さんの
素晴らしさを知れたのも、
偶然ではなく必然だったんだと心から思えた。
それからまた数年たった2019年、
道を歩いていたら偶然
「AMKK」の文字がついたパラソルを発見する。
(東さんのお花屋さんでは?と急いで駆け寄る私)
「Flower Shop KIBOU」というプロジェクトでAMKKの方が路上で生け花をされていた。
神様って本当にいるのかと思った。大袈裟だが(笑)
書籍でしか見たことなかった世界に
偶然でも巡り逢えたことに感動した。
でも私はその日、予定があったので20秒ぐらいしか見ていられなかったのだ…悲しい。
お家に帰ってから「Flower Shop KIBOU」の
インスタグラムを見てみた。
そこには花とともに写った
美しい笑顔の写真の数々。
なんて素敵なんだろう。
そして2020年の春、誕生日を迎えた私に
遠距離恋愛中の彼が会いに来てくれた。
ジャルダン・デ・フルールでオートクチュールのお花をサプライズでプレゼントしてくれたのだ。
世界でひとつだけの花束
彼がくれた花束はとても暖かく
ジャルダン・デ・フルールの(AMKK)方々と
彼の愛がたくさん詰まっていた。
"枯れゆく姿まで美しい"
命の最後まで
お友達のように声をかけながら
お花を眺め、愛でる毎日は幸せだった。
書籍でしか見たことない憧れの人に
自分だけの花束を作って頂けて本当に嬉しかった。
彼は私にはない思いやりと優しさがあり、
愛がたくさん詰まった人だ。
誰からも必要とされていないと思っていた私に、
必要なんだよと愛を教えてくれた
彼に感謝です。
死ぬまで一生忘れないだろうな。
―世界でたったひとつの花束―
当たり前の毎日で
すぐ目に見えなくなるけれど
愛はどこにでもある。
人間でなくとも花や植物に触れることで
たくさん愛はもらえるのだ。