技術書典で爆死しないために
技術書典5にサークル参加する皆さん向け、特に技術書典経験の少ないサークルさん向けの記事です。
技術書典で爆死しないために、被チェック数の読みかた、印刷部数の判断の仕方、告知の仕方などをまとめた記事です。ただし、当記事では印刷部数と頒布部数について確約できるものではありません。皆様ご自身のご判断でよろしくお願いします。
追記: また、この記事の意図は、印刷部数の判断ということに慣れていない人に、ある程度指針を示すことで、原稿自体に集中できる環境に持って行ってもらいたいという点にあります。enjoyする為に情報をまとめ上げたわけですね。
被チェック数
マイページに、被チェック数という数値が書かれている事にお気づきでしょうか?これは参加者の人達のチェックリストに、貴方のサークルが加えられた数で、当日来るモチベショーンの高い人の数であり、サークルカットから情報を読み取れる、もしくはSNSでの宣伝力の表れでもあります。
これは2大ラスボスサークルの1つmochikoAsTechさんで技術書典5でもトップクラスの被チェック数です。皆が公開してるわけではないですが、被チェック数でRealTime searchしてる限りだと9/12 9時現在で20以上だと多めという印象です。
ちなみにmochikoさんは1500部、印刷するかどうしようか検討中だそうです。
雑に言っちゃうと9/12午前の時点で20以上のサークルは印刷部数200を検討しても良いでしょう。それ以下のサークルも、サークルカットを描き直すなど挽回のチャンスはまだまだあります。
理由についてはこれから詳細に解説していきます。
技術書典での頒布数
サークル出展するときにどうしても悩ましいのが印刷部数です。コミケではほぼ大半のサークルでは頒布実績が50部未満なので、コミケだけで考えるなら印刷部数200というのはDive into KIYOMIZU的な狂気を持った数値です。
ただし、技術書典はコミケとは異なる性質のイベントです。技術に興味を持った人しか来ません。そして高い技術書になれて財布のヒモが緩くなった人が大量に押しかけるイベントでもあります。
来場者数をサークル数で割った数を「サークル係数」と呼ぶとして、普通の小さな同人イベントは2〜5程度です。コミケでも10ちょい。技術書典4では来場者数6380人で246サークルなのでサークル係数は四捨五入で26でした。
来場者の平均購入数は6.2冊なので、愚直に26*6.2を計算すると、160.7という数値が出ます。公式発表での新刊売り上げは、平均100部、最頻値 60部、中央値100部です。
次に見るべき数値は完売率とその時間です。完売率は78.3%で、「14時までの3時間で全体の60%のサークルで頒布物がなくなっており」残り半分の3時間は頒布物が無い状態になっていたということがわかっています。
ある程度以上しっかりしたサークルであれば100部は普通に12時〜14時で完売すると思って大丈夫です。被チェック数が現時点で20を超えるサークル(が順調に伸びてたとえば当日チェック数が100を超えている)なら、100部は午前中完売も決して夢ではありません。
技術書典5は、来場者数が公式予想で8000〜10000人で469サークルなので、サークル係数は17〜21だと考えられます。
ただし、床面積が3倍に増えて会場に余裕があり前回よりもスムーズに人が流れるため、来場者数は本当に10000で収まるでしょうか?もちろん天気が荒れて、技術書典3のように台風直撃とかになると来場者は圧倒的に減るというリスクもあります。
じつのところ今回は不確定要素が多い為、どっちに転ぶかわからないイベントだと言えます。そのため、リスクをどうやって押さえ込むかの勝負なのです。
印刷費のはなし
技術書典公式からリンクされている印刷所、日光企画とねこのしっぽの、それぞれの印刷費を表にしたものです。これで見る限り100部は単価がとても高いことが読み取れるでしょう。
印刷費はページ数に比例するので、いったんここでは100ページとしていますが、ご自身の本のページ数に合わせて計算しなおしてください。ページ数が少なければ当然価格は下がります。
印刷部数300以下を考えていて9/15に間に合うなら、日光のオンデマンド50%オフがコスパが良いでしょう。この場合、仮に頒布価格を1000円に設定するなら、100印刷時は36部頒布すれば印刷費をペイできます。同様に200なら53部、300なら74部ですね。
印刷部数300以上ならオフセットです。9/19の日光オフセット早割に間に合うなら、300で77部、400で90部、500部で107部、600部で123部、700部で136部…。そう300刷るならオンデマンドとほとんど変わりません。品質や締め切りを考えるとオフセットの方が良いでしょう。
さて、これらはどういうことか?仮に100部売れるサークルなら、400部刷っても赤字にはならないということです。200部売れるサークルなら、当然110冊分の黒字で、300部売れるサークルなら210冊分の黒字というになります。(なお参加費その他はいったん忘れる)
まずは、自分のサークルなら何部出るのか?印刷費や他費用をみたとき、その部数で赤字にならないラインがどこかを計算してみましょう。
ちなみに表紙は絶対にフルカラーを推奨します。モノトーンとフルカラーでは如実に売り上げの差が出るからです。コミケのようなイラストは必ずしも必要ありません。
どういう本なのかを、表紙からぱっと見で情報がわかる、スッキリしたデザインが望ましいです。フリーの画像とかをうまく使って、おしゃれっぽくスッキリした表紙を、パワポやKeynoteで作成しちゃってもいいでしょう。
もちろん、デザイナーに依頼してもいいですが、依頼する場合は早めに!!です。
締め切り的にあかん人や、二冊目を検討してる人は、是非ねこスパークを検討しましょう。10/3締め切りで、日光早割よりはすこしお高めですが、それでも十分安いといえる金額です。
印刷費と機会損失と在庫リスク
技術書典4では「特に14時までの3時間で全体の60%のサークルで頒布物がなくなっており」当然のことがら大きな機会損失です(注意:最初74%とか書いてました。すみません、60%です)。印刷費が赤字にならない設定であれば、完売できなくても在庫リスクにしかなりません。
コミケに参加するサークルさんならコミケに回せばいいですし、50部未満ならComicZINにダイレクト入庫という手もあります。また、同人界隈では最強と言えるPixiv BoothのBooth倉庫に委託するという手もあります。
あと、これはとても重要なことですが、20冊くらいは手元に残しておきましょう。同人誌は名刺代わりに使えます。
知り合いに配ったり、家族に見せたり、自分で見たり、勉強会で配ったり、カンファレンスで景品にしたりと活用方法がいっぱいあるので、最低でも10冊は残しておかないと後悔する可能性があります。
また、完売しないギリギリ位がベストだと考えられています。この理由はサークルのポテンシャルを見極められるからです。完売してしまうと、サークルのポテンシャルがどれくらいなのかがわからないままになってしまうのです。
ここから追記(2018/09/12 23:44)
これはこれで一理あります。在庫を抱えるのが辛くなってしまわない程度の数に抑えるべきではあります。
ちなみに紙の部数を安全ラインに抑えておいて、電子版のカードを多めに刷っておいて、紙の方が完売すれば電子版を頒布するという考え方もあります。
ここまで追記
そこで、印刷費・価格設定と、実際にどれくらい売れるのかをひたすら考え抜て、どれくらいのリスクを背負うのかが大切になります。そのためには被チェック数とは何かを説明する必要があります。
被チェック数は何を表す数値なのか?
みなさん、サークルリストをごらんになりましたか?
469サークルあるということはもし全サークルをいちいち見るとすれば、1サークル1分で見ても、469分、つまり8時間弱かかってしまうという計算であり、青田買いをしようとしている出版社や企業の担当者でも無ければしないでしょう。
つまり、何らかの形で足切りが行われるはずです。サークルカットが未登録のサークルは論外です。少なくともそういうサークルはチェック数は伸びないでしょう。(もちろんSNSからの流入とかでガンバルなら話は別です)
誰向けのどういう本かという情報が読み取れないサークルカットも、おそらくクリックされる可能性は低いでしょう。
被チェック数とは、大ざっぱに言うとサークルカットという第1の壁を乗り越えた人+SNSでダイレクトに流入した人の数と言えます。
サークルカットはいつでも差し替えられるので、被チェック数が少ない、伸び悩む場合は、できる限り速やかにサークルカットを描き直しましょう。
・色を活用しよう
・文字ばかりの人は削ろう
・小さい文字は読めないから大きくしよう
・誰向けなのかのメッセージを込めよう
・情報を絞り込もう
技術書典5ではサークル数が増えすぎたため、サークルリストのトップからの流入はそれなりに大変なので、公式もSNSなどを使った告知が重要だと言っています。
SNSや他メディアによる流入の重要性
TwitterやFacebook、勉強会、カンファレンス、色々な告知のチャンスがあります。あなたの本を、本来読むであろう人が、本が出ることや内容について、まだ知らない可能性は大いにあります。
今回の技術書典5では告知をどれだけするかで、頒布部数は大きく変わるでしょう。
告知においてもっとも重要なことは読者にとって自分のための本だと思わせることです。中身がちゃんとした本であれば、目次リストやお試し版PDFはとても強力な武器になります。
爆死しないために
最後に、爆死しないために必要なことを列挙します。
・対象読者を設定する
・本の売りを明確にする
・対象読者に、本の売りが届くように告知をする
・色を使った情報の読み取りやすいサークルカットを描く
・サークルページ(うちならここ)へのリンクを積極的に張る
・ブログを書いてる人なら、ブログを書く
・登壇できる人は、登壇する
・そもそも本をちゃんと完成させる(これは絶対必須の大前提です)
・情報を読み取れる表紙を作る・依頼する
・目次リストを公式サイトの頒布物に登録および、ブログで告知する
・お試しPDFを公式サイトの頒布物からリンクを張る、SNSやブログ経由で頒布する
・技術書典公式ブログをチェックする
もし、何かわからないことがあったら、技術同人誌を書こう!アウトプットのススメを読むか、Twitterで #技術書典 のハッシュタグを付けてつぶやいてみましょう。
重ねて書きますが、当記事では印刷部数と頒布部数について確約できるものではありません。皆様ご自身のご判断でよろしくお願いします。
追記: まぁ極端な赤字とか出なければ爆死とか考えずに、楽しんだ者勝ちではあります!情熱を本にたたき込むんだ!!