Apple Carが描く、Appleの未来とは?
こんにちは、エルーカです。
先日、Appleの年に一度の祭典であるWWDCが開かれました。
そこでは大きな話題にはなりませんでしたが、ここ数年、確実に来ると言われつつ、その全貌が見えてこないAppleのモビリティ事業。Apple Carと呼ばれていますがその名前すら見えていない状況です。
今回は、Appleのモビリティ事業がこれまでたどってきた道筋を中心に、今後Appleがどのような方向に向かっていくのか、まとめて行きたいと思います。
Project Titanのこれまで
AppleのApple Carに関連する研究プロジェクトはTitanと呼ばれ、2014年頃に始まりました。2011年にスティーブ・ジョブズが逝去する前から自動車プロジェクトに大きな興味を持っており、2008年にテスラがEV車をリリースしてから議論が本格化したと言われています。その後、CEOとなったティム・クックが次の大きな柱として立ち上げた一大プロジェクトであり、フォードやメルセデス・ベンツなどから従業員を引き抜き、一時は1000名を超える研究者、技術者が在籍したとされています。当時は「2020年頃に市場にApple Carが投入される」という話が多くのメディアでされていました。
しかしプロジェクトは予定通りに進まず、2017年に数十人〜百名規模の解雇が行われました。
それでプロジェクトが頓挫するかと思いきや、その後も開発は続けられ、多くの特許とともに、自動運転の走行距離を2018年に飛躍的に伸ばしました。
自動運転プロジェクトの進捗はDMV(アメリカの車両管理局)が公的に出している自動運転の走行距離を見るとある程度明らかになりますが、Appleの走行距離は2017年の838マイル(約1,350キロ)から2018年は7万9,745マイル(12万8,400キロ)となり、100倍に近い走行距離を達成しています。しかしその翌年の2019年では7000マイル程度と10分の1になっており、進捗が迷走していることが伺えます。
迷走の理由
Titanの迷走の理由を一言で表すならば「どこまでを自社内で開発するのかの迷い」に尽きるだろうと考えられます。スマートフォンの数十倍のパーツが集まってできている車は、数年ですべてを企画〜開発〜製造まで行うことがかなり難しいです。
その上、中核となる自動運転の特許はグーグル傘下のWeimoが握っており、自動運転研究においては明らかに後塵を拝しているといえます。事実、2019年には1000万マイル(1億6000万キロ)の自動運転に成功しており、圧倒的な差が伺えます。
そのため、当初はすべての設計を自社内で完結させるため、1000人以上の従業員を雇ったが、技術的ハードルの高さゆえ、自社内での開発を諦めたのではないでしょうか。その後、2019年に自動運転開発企業Drive.aiを買収して いおり、自社内ではなく別企業からの技術転用を目論んだ、ということではないでしょうか。
Appleがもつ特許
では、Appleが持っている特許はどのようなものがあるでしょうか。
例えばセンサーのメンテナンスに関する特許。経年劣化でセンサーの精度が落ちた場合、向上ではなくソフトウェアで自律的にセンサーをメンテナンスすることができます。
方向転換に関する特許や通気性に関する特許も持っていますが、持っている燃料を補い合うことができる技術やドライバーの見えない部分をARで補う技術など、車に乗る人のUXを大きく変えうる特許を取得しているのも、Appleの特徴です。
自動運転に関する特許はあまりありませんが、車に乗ることの利便性を高める特許を多く取得しているのがAppleであると言えます。
Apple Carの現在地
現在公表している限りでは、AppleはCarPlayというプロダクトを提供しています。これはカーナビでiPhone機能をふんだんに使うことができる機能であり、マップはもちろん、オーディオやメッセージなどの機能を車とシームレスに繋ぐことができます。
最近では、車のロックをiPhoneで開けられるようになったり、エンジンを掛けられるようになったりと、徐々にできることが増えている印象です。
すべてを変えたiPhoneを、Apple Carは再現できるのか
iPhoneは既存の概念をガラリと変えました。それまで家で楽しむものであったウェブや映画を人々の手に収め、それによってYoutubeが隆盛し、経済が生まれました。タッチパネルで楽しむことでアプリの利便性が飛躍的に高まり、年間何万というアプリが作られるようになりました。iPhoneは単に電話とブラウザを1つにして手元におけるだけでなく、10年前では到底考えられなかったエコシステムを世界中に創り出しました。
それと同様の事象が、Apple Carで起こるでしょうか。
トヨタは巨大企業ですがそれ自体が大きなエコシステムであるため、次の時代で作れるのは「自動運転の市場」であり、革新的な市場が生まれることは有りません。それはBMWやフォードなど大手車メーカーはほとんどがそうでしょう。
Apple Carは違います。車につながるあらゆるエコシステムを変えうる可能性を秘めています。近い概念で行けばマップに表現されるリアル店舗のエコシステム、より進めば保険や広告、居住空間など、途方も無い経済空間を一変する可能性を持っているといえます。
プロジェクトは右往左往し、現在明るみに出ているプロダクトは殆どありませんが、Appleがモビリティ業界を席巻し、まだ誰も予想できないマーケットを切り開く数年後を心待ちにしたいと思います。
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