映画健忘録:わたしは光をにぎっている/中川龍太郎


映画を毎日観ているフリー女優のえり(@errnzabesu2)が、作品の何を見てどう感じたのかを視点をシェアする健忘録です。
社会派作品が好き。世界や過去を知って自分の人生の学びになればというスタイルで鑑賞しています。2020年123本目


今あるものの尊さに光を当てた作品


上京した主人公が社会や人に馴染めない中、祖母の言葉を胸に自分の中にあるものを見出し、成長していく物語。


冒頭の祖母のセリフでこの作品の見方を示しているかのように、視覚と聴覚から訴えたい情に、フワッと心に入り込んでいくような感覚作品です。男性監督なのに美しい画と耳障りの良い音が、柔らかさを生んでいます。
(女性監督では往々と見られる傾向だと思うのですが、男性では珍しい)
セリフは少なめですが、登場する人間が生臭くリアリティがあるので、フワフワ浮いてはいない。

川が流れるように終始ゆったりしてますが、時折うずまき曲がりで速くなったり。テンポが遅いとは感じず流されているかのように、心地良く世界に浸れます。

路地裏、商店街、銭湯。そこにいる人の営みや距離感は昭和を感じずにいられないんですが、過去があるから今がある。築き上げてきた現在あるもの、人生経験で自分の中にあるもの。
この主人公、心を閉じ気味なんですが、暗いとか内向的という訳でもありません。作品の方向性が示されており、モヤッとするとは思いませんでした。
再開発と新しい人との出会いは刺激にもなるが⇔傷つき壊れる時もある。その中で大切なものは何か


専門学生の頃から7年間働いた、夫婦で経営してる居酒屋のアルバイトを思い出さずにいられませんでした。
30年近く続いたお店は、地域の会社帰りのお父さんの拠り所です。常連しかきません。人付き合いがとても苦手だった私が、マスターとママ、常連さんに助けられ友達より会う、笑い合える知り合いになりました。
お店が一つのコミュニティであり、拠り所であり、いろんな年上の人に育ててもらいました。

新しいスタイリッシュなカフェより、個人経営の古綺麗な喫茶店の方が断然好きです。
塗り替える・上書きするんじゃなくて、共生する方が手間は書かれど豊かであると思います。


私は、感じろ系作品って「何言ってるかわからない」で終わってしまうことが多いんですが、この作品は光に影があるように、美しさの裏にあるものも映していると感じました。
この作品を見て銭湯に行ってきました。年季が入った床板や剥げたタイル→そこで息づいてきた人々や過去とつながるような気がしました。
監督が30歳と歳が近くて親近感が湧きました!




似てる作品

今泉力哉『パンとバスと二度目のハツコイ

似てると感じるところは、同じ男性で、柔らかい画。
誰にでも経験のある日常の目に見えない人間関係のやりとりを、多くないセリフと演出で可視化する。
人間がフワッとしてるんですが、背景(設定や現実味がある)、セリフの意図や間がリアルで情報量が多いです。



途中の階でエレベーターを乗り換えたり、売店があってパンも売ってたり。テーマパークかと思うような何号も棟が独立してる高級集合住宅より、階段で行き来できるオートロックも無いマンションでいい。ペニンシュラホテルよりニューオータニの方が好き。


ブログもやってます!
今日は何の映画を見ようかな。



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