映画健忘録:千と千尋の神隠し/宮崎駿
この猥雑な雑多な世界でも『大切なもの』『アイデンティティー』を知っていれば大丈夫だと教えてくれる
映画をほぼ毎日観ていたら価値観や思想・思考が変わり、かけがえのない友達になりました。えり(@errnzabesu2)の視点や感想をつぶやきます。こんな見方もできるんだ!映画って消費するだけなく学びに繋げられるんだよって伝えたい。
現代のひ弱な都会っ子が、神の世界に迷い込んでブタになった両親を救い元の世界へ帰るため、働き試練を乗り越えてたくましく成長する物語。
小さい頃から馴染みのあるジブリ。私も小さい頃から何度もテレビで観ました。
が、作品に込められた宮崎駿の想いを知って見直すと、また違う解釈と感性で楽しめます。
世界観や設定の意味
支配し搾取する湯婆婆 ー 湯婆婆の命令は絶対。奴隷のように働く従業員たち
自ら望んで働く(働きたいものには仕事を与える世界の決まり)自由契約と衣食住・十分な睡眠時間あるのでブラック企業ではないと思います。
神様の汚れを落とす、湯屋。
個別のお風呂しかないのは、性風俗をイメージしているからだそうです。(宮崎駿のインタビューより)
遊郭って堀に囲まれていたし、建造物や赤色など言われてみれば確かに。
昔は、貧しい家の娘が人身売買で売られてするお仕事でした。
名前を掌握されたら戻れない状態と、借金を返すまで抜けられない状態が似ています。
そこに迷い込んだのは、「お金があれば何とかなる」と欲にまみれた大人と子供に対してどこか冷たい母。
子供向けのアニメ作品なであれば家族団欒、優しくて笑顔の絶えない家庭なんてものばかりだが、表立って問題にならないにしても現代社会の家庭の姿というものを反映させてます。
砂金を手に入れるためなら何でもする貧民層と、大切なものをなんでも囲い本質を見ない富裕層。どちらも目先や自分の欲を満たすだけであり、そこに愛はありません。
そんなおかしな世界でも、美しい自然があり、信じられる仲間もできる。
わい雑な社会や人間の中に飛び込んだ千尋。
甘えん坊で気弱、とびきり可愛いわけでもない、どこにでもいるフツーの子。
物語の最初と最後は同じ場所ですが、強く逞しくなったのにトンネルを抜ける過程で最初と同じ行動です。「えっ、あの体験で得たものはどこへ行ったの?」と拍子抜けしてしまったんですけど、『一度経験したことは忘れない』髪ゴムが光るカット。
千尋は疑うことを知らない素直さと、信じること、思いやりを持っている。大切な人がいる、目的がある。それはお金では買えない。
それさえあれば、どんな世界でもやっていける「大丈夫だ」というメッセージが込められているそうです。
感想
この社会の中で、与えられた状況と自分の成し遂げたいことを持ち、夢や目標に向かって(或いは立ち往生して、迷って)日々生きている人が多いと思います。
大人になるに連れて世界が広がりできることも増えれば、制約や縛られた中で苦しんだりがんじがらめになったり。
かくいう私も、自分が叶えたい目標に向かって進めているのだろうか。絶えず不安と孤独と一緒に生活してます。これを書いている今もです。
カオナシは誰の心にもある、目に見える欲では満たされない深層心理(ニード)を表現しているのではないか。
自分の存在価値を認めてもらいたい。そのために騙して、金にものをいわせ、名声を手にして、もはや従わせようとしている。
千尋「あなたに私の欲しいものは出せない」これがカオナシの答えなのではないか。
私の欲しいものは、お金でもなく、何も起きない安定した生活でもなく、心身を使って生きること。(=感情表現とお芝居)
たくさんのことを学んで、できることを増やしたい。
他人と豊かな時間を紡ぎたい。
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