FANBOXなどの同人物品販売におけるAIイラスト関連物品の出品停止に関する考察 ー イラストAIは翻案装置(ソフト)と見做された? ー
はじめに
最近、「イラストAI」と総じて呼ばれる装置(ソフト)(以下、単にイラストAIという)によって作成されたイラスト作品を含む物品販売が各同人物品販売サイトから、排除されつつある。その原因について様々な憶測が流れる中、個人的に考察し、原因を探ってみた。結論
まずは、私個人の結論を簡単に言うと、現状使用されている「イラストAI」が、翻案装置(ソフト)と見做された可能性が高い。仮に、翻案装置(ソフト)と断定された場合、翻案で得られた二次著作物を使用するには、一次著作者に許諾を得なければ、翻案権の侵害と見做される。FANBOXなどの同人物品販売サイトを運営する企業の知的財産部が、以上のような判断を行い、AIイラスト作品を排除した、と思われる。ただし、「AIイラスト作品が著作権法上、グレーの状態だから、一時的に排除するに至った」ということも考えられるケースではある。企業としては、「安全性に配慮し、疑わしきを排除する」スタイルも有りだと思うから。
以上は、私個人が考察して出して結果なので、当然、間違っているかもしれない。翻案装置(ソフト)とは
「既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的な表現形式を変更して新たな著作物を創作する行為」を機械的に行う装置(ソフト)。
「翻案」という言葉の意味のイメージが判り難ければ、「翻訳」をイメージすると良い。例えば、翻訳装置に英語の一次著作物を入力し、日本語の二次著作物として出力したとする(辞典も著作物と考える)と、日本語の二次著作物を使用するには、一次著作者の許諾を得る必要がある。イラストAI装置(ソフト)とは本質的に何か?
ここで、問題となってくるのは、「イラストAI」と呼ばれる装置(ソフト)が本質的に何か?、ということになる。名前に入ってる「AI」というキャッチーな言葉に惑わされるのも困る。そこで、比較のために以下の3つの装置(ソフト)を挙げてみる。
(1) 画像入力文字パターン認識翻訳装置→OCR翻訳装置
(2) 画像入力オブジェクト(物体等)パターン認識翻案装置→イラストAI装置
(3) テキスト入力物語パターン認識翻案装置→カーディナル・システム(小説・アニメ「ソードアート・オンライン」より)
(1) については、多くの人が知っているだろう装置だと思う。文字通り、画像データに含まれる文字(特徴)情報を抽出し、パターンに照らし合わせて認識させ、翻訳用辞書を参照しつつ、翻訳結果である文字列を出力する装置。
(2) については、後述する。(3) については、オタク諸兄が知るであろう「翻案」の例として挙げてある。確か、カーディナル・システムの翻案機能に関しては、作中でも、キリトくんが語っていたと思うが、「ネット上にアップされた民間伝承や伝説を集めてきて翻案し、SAOのゲームストーリーに組み込んでいる」というものだったと思う。ここで、重要なポイントは、民間伝承や伝説の殆どが作者不明、あるいは、遥か昔に亡くなり、権利も継承されていない、ということだろう。だから、カーディナル・システムは、著作権法上の問題をクリアしていることになる。
そして、(2)の「画像入力オブジェクト(物体等)パターン認識翻案装置」は、私がイラストAIに関して、内部構造を類推した結果として出たものである。
ちなみに、(1)~(3)まで、AIを組み込むことが可能/既に組み込まれている装置に出来る。各システムにおけるAIの役割を「自己を特定のルールに従って書き換える辞典」として考えている。故に、イラストAIの代表的な二つのインタフェースである(a) パラメーター入力方式は辞典を索引で引く行為、(b) ユーザ画像入力方式はパターン認識(パターン認識させる時に辞典を引くこともある)させた後に辞典を引く行為に相当すると思う。
本来、(1)と(2)に関しては、類推でも良いので、ブロック図を描いた方が判り易い(イメージし易い)と思うが、私個人としては、時間が欲しいところなので、ここでは描いていない。それに、私の考察が合っているという保証もない。(3)は、ブロック図を描くには難し過ぎるので、絶対に、描かない(描けない)w。著作権法 第三十条の四について
この条文の「目的」の対象が何として解釈されているかが、問題な気がする。つまり、対象が「AIを含む装置(ソフト)」なのか、「装置(ソフト)に含まれるAI部」なのか、曖昧さを残し過ぎている気がする。前者であれば、「装置(ソフト)がユーザに最終的なデータを出力する」が達成した目的なのだから、「イラストAI」と呼ばれる装置(ソフト)の場合、その最終的な出力データに関して「思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる」ことになるのではないだろうか?。また、「イラストAI」と呼ばれる装置が翻案装置であるなら、当然、「思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させる」ものだろうと思う