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16「塔」✵闇を切り裂く聖なる雷(いかずち)

前回のカード「悪魔」では、自分を縛り付けている欲望や存在悪魔があることを知ることになりました。

今回のカード「塔」の対応惑星は「火星」です。
火星は、空に赤く輝く姿から連想されるように火や熱を表し、怒り破壊や攻撃闘争心や衝動性などを象徴しています。「塔」は、それらがこれでもかというくらいに詰め込まれた絵になっています。

ドーン⚡️

暗雲を切り裂き現れる、全知全能の神ゼウスの稲妻。稲妻や雷(いかずち)は神の怒りを表します。
(※実は、このゼウスの稲妻は始まりのカード「0 愚者」でも描かれています。)

この物語の主人公(?)サトゥルヌスの旅は、ゼウスに稲妻によりギリシャから追い出されることから始まっています。神の怒りさえも全然へっちゃらそう。

旅のはじまりから登場していた砂時計が、「塔」では雷の一撃で衝撃的に崩れ去ります。

ゼウスの元からは離れた(王権をゼウスに奪われた)のに、なぜ再びこんな仕打ちを受けることになったのでしょう?ゼウスから制裁を受けることとなった理由を、絵から辿っていきましょう。

偽りの砂時計と王冠

「愚者」のカードで能天気ピュアな愚者が手に持つ真新しい砂時計とは違い、「塔」では、長年の時を経て積み重なった岩のような、ゴツゴツとした硬いフレームに変化しています。また、中の砂も、愚者での生命力を感じる澄んだ緑から、すっかり変色してしまっています。

砂時計は、もう時を刻むことがなくなった遺跡と化したのでしょうか? それとも、誤ったものを詰め込んで、本来の砂時計とは違う時を刻み始めたのでしょうか?

これがゼウスの怒りを買ったのでしょうか?

他の部分に目をやると、理由はこれだけではなさそうです。砂時計の頂にあった、王冠のような飾りが雷によって吹き飛ばされています。

王冠は、「皇帝」のカードでも描かれたように、権力や力の象徴になります。「塔」の対応惑星である火星が、占星術では牡羊座を支配することからも、「皇帝」と「塔」は深いつながりがありそうです。

「皇帝」の王冠は黄金色に輝き、神から地上にある社会を統べる立場を与えられたことを表しています。しかし、「塔」の王冠の色はくすみ、ギザギザとしたヒイラギがあしらわれた「偽りの王冠」です。

皇帝の王冠は豊穣を願うブドウ柄。一方、塔の王冠はキリストの受難をも象徴するヒイラギの柄にしてみました。

神が住まう天にも届きそうな高さでそびえ立つ砂時計の塔は、まるで天と地の両方の時を刻むことを誇示するかのようです。

「自分こそ神に代わり、すべてを統べる存在」

そのような偽りの王を、かつてサトゥルヌゥスを玉座から引き下ろしたゼウスが許すはずはありません。おごり高ぶった行動や考え、あるいは、時を重ねて凝り固まった思い込みや欲を、ゼウスは見過ごすことができなかったのです。

神の残り火

放たれた雷からの残り火が舞う中で、二人の人物が砂時計の塔から落下しています。(小さくて見えにくいけど)これみよがしに宝石があしらわれたティアラを着けた女性と、赤いマントを着けた男性です。この二人は、この塔を築いた本人だったのでしょうか、あるいは囚われの身だったのでしょうか。

男性の方は、落ち行く瞬間に神の雷の残り火の中に「種」を見つけ、何とか手にしようとしています。「種」は「愚者」の砂時計の中に入っていた、純粋な生命のエッセンスです。この窮地の最中に、神の思し召しをハッと思い出したのでしょうか。しかし、この後に残り火を手にできたのか、そのまま落ちていくのかはわかりません。

恩寵の雷

背景に目を移すと、この砂時計の塔は真っ暗な闇の中にあったことがわかります。愚者でのはじまりは生命の豊かさを目指していたにも関わらず、ここは草ひとつ生えず生命の温かさなどない場所なのです。その中でゼウスから放たれた雷は、唯一の光となっています。闇から抜け出す一筋の光です。つまり、「塔」のカードの雷は、誤った方向へ進もうとしていることへの危険を知らせるゼウスからの「警告」でもあり、かなり手荒い「恩寵」ともなっています。

また、対応惑星の「火星」の象徴には、先ほど挙げたもの以外にも「前進する」「切り開く」力もあります。たとえすべてを失ったように見えても、私たちの中には前に向かって一歩を踏み出す力がまだ残っていることも表しています。

こうして物語は、まだまだ続きます。

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