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喪失感新婚旅行 [5] 盛岡 観光案内激圧ゲストハウス

盛岡まであと1時間くらいのところで、
今日の宿泊先のゲストハウスのオーナーさんから、Gメールが届いていた。
「もし、チェックイン前に盛岡に到着していたら、ゲストハウスの駐車場に車を停めて良いですよ。」
とのこと。何たる気配り。
ゲストハウスによっては近隣のコインパーキングを利用してくださいというところが多かったり、チェックインまでの時間も別のコインパーキングに車を停めたりと、地味にお金がかかってしまっていたから、とてもありがたかった。

私たちはそのお言葉に甘え、ゲストハウスの駐車場に車を停めさせてもらい、近くのスーパーの敷地内にレンタサイクルがあるのを発見したので、自転車に乗って街中を探検した。

天気も良く、盛岡の綺麗な街並みと、澄んだ空に癒された。 
どこを目がけて行くわけでもなく、私たちは盛岡の街並みを楽しみながらひたすら自転車を漕いだ。
ただ、私たち夫婦の体格差、運動能力の差により、私は何度も夫に置き去りにされそうになった。もう、無我夢中で夫の背中を追いかける。盛岡の美しい景色の中、必死で夫のことを追いかける妻。なんてシュールなんだろう。こんなレンタサイクルなんて馬鹿馬鹿しいわ!と苛立ちながらも、知らない土地で迷子になるものかと、必死になってペダルを漕いだ。
後ろを振り向きもせず、ぐんぐん前に進む夫。周りの景色に夢中なのは良いが、少しは妻のことも気にしてくれ。

信号待ちで夫に追いつき、もう、へとへと宣言をしたら、夫がカフェを探してくれた。また引き離されそうになる。スパルタだ。やっと見つけたカフェらしきお店で少し休憩して、ゲストハウスにチェックインした。
とても綺麗な木造の建物で、ほっとするような温かな空間だった。
話せば話すほど人柄の良さが伝わってくるオーナーさんが、盛岡の観光案内をたっぷりとしてくれた。とにかくたっぷり。
正直、1日では吸収できないくらいの情報量で目が回るほどだった。それに、自転車の漕ぎすぎにより、疲労も溜まっているので頭に入ってこない。
でも、親切なオーナーさんの盛岡への情熱は止まらず、テレビをつければ盛岡の特集や、盛岡を題材とした物語のことが流れていた。情報量の多さがとにかく衝撃的だった。
普通のテレビ番組が見たい。そう思った。

沢山の情報の中から幾つか行きたいお店を絞り出し、夜、私たちは飲みに出かけた。
まずはクラフトビールを取り扱うお店。
次に海鮮居酒屋。
自転車の漕ぎすぎにより、とてつもなく疲れていたから酔いが回るのが恐しく早かったのを覚えているし、ここから帰るのにも歩きだったので、下半身が疲労で崩壊寸前だった。
くったくたになりながらゲストハウスに帰ると、オーナーさんが1杯飲みませんか?と誘ってくれたので、最後の晩酌をすることにした。正直なところ、シャワーを浴びて寝たいところだったが、せっかく誘ってくれているのだから…断れない。どいつもこいつも、スパルタなんだよ!と心の奥底にいる私が叫んでいた。
オーナーさんが、いぶりがっこに、チーズを添えて用意してくれたおつまみが最高に美味しかった。
いぶりがっことは、燻製にした沢庵の名称だけど、人類で初めて沢庵を燻製した人は天才すぎる、食べるたびに思ってしまう。
そして再び、盛岡についての愛を、オーナーさんが語ってくれた。いろいろと、もう、お腹いっぱいである。くどい、と言えばそうである。

この日は布団に入った瞬間、入眠した記憶がある。
翌朝、ゲストハウスのラウンジでコーヒーを飲みながらゆっくり過ごしていた。
オーナーさんは散歩に出掛けているらしく不在だった。
家のように一人でゆっくりと過ごせるラウンジは、最高に居心地が良かった。

チェックアウトと一緒に、じゃじゃ麺のお店と、パン屋さんを勧めてもらったのでそこに行くことにした。

じゃじゃ麺は盛岡の郷土料理で、初めて食べる味だった。ジャージャー麺とは異なるそう。
じゃじゃ麺のお店に入り、
「じゃじゃ麺2つ下さい」
とお店の人に伝えると、早々に謎アイテムがテーブルに置かれた。
「こちら、ちーたんの卵です。」
…ち、ちーたん?
誰かのあだ名のようなこちらのちーたん、一見普通の生卵だ。
おいおい、説明してくれよ…!

どうやら、じゃじゃ麺を食べ終えるちょっと前のどんぶりにこの卵を割り入れて混ぜておくと、お店の人がスープにしてくれるシステムらしい。
これをチータンタンと呼ぶそう。で、縮小されて、ちーたん。ということなのだろうか。

言われた通り、じゃじゃ麺をちょい残しして、チータンタンを作ってもらった。
疲労に染み渡る、ほっとする味で、とても美味しかった。
生きてて知らないことって沢山あるんだなぁ、チータンタンをすすりながら、しみじみ思った。

最後に寄ったパン屋さんで買った、コッペパンを頬張りながら、
秋田県秋田市へ車を走らせた。

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