見出し画像

喪失感新婚旅行 [10] 石狩 北海道を旅立つ日


結局、富樫さんのお家に4〜5日間くらいお世話になってしまった。
申し訳ないくらい自由に過ごした。本当に本当にありがたい数日間だった。
富樫さんの奥さんのゆかさん、生後8ヶ月くらいの娘さんのゆきちゃんともとっても仲良くなった。それから数年経った今、今度は女子だけでお出かけしたいなと思ったりもしている。
もう、すっかり北海道が気に入ってしまったから、帰ることをやめて、春が来るくらいまでゆっくりしていたいし、家も職も無いから移住も良いなと思った。ふわふわな状態の私たちの可能性は今、無限大だ。しかしながら、そろそろ本州に戻らねばと帰りのフェリーのチケットの予約をした。
帰りは、小樽から14時間くらいかけて新潟県に到着するというフェリーだった。
船酔いが心配だったけど、行きで乗ったフェリーで案外余裕だったから、14時間の船旅はきっと最高に良い思い出になりそうだ。
しかも、船内はお値段にしては豪華。ちなみに、行きのフェリーは雑魚寝で、個室はあるものの、レストランなどは無かった。
今回チケットを取った帰りのフェリーは、シャワールーム付きの個室で、レストランもあり海を眺めながら食事を楽しむことが出来る。素敵な船旅になること間違いなしだ。

帰りのフェリーのチケットを取った日に、富樫家の皆んなに帰ることを伝えると、
「なに〜、もっと居てくれていいのに。」
と言ってくれた。嘘でも嬉しい。
でも、私たちがずっと居るのは、富樫家の皆んなに迷惑がかかってしまうのだ。

翌朝、ゆかさんが作ってくれた朝ごはんを食べて、帰りの準備をした。
その日の北海道は雪予報で、チラチラとアラレのような雪が降っていた。
「北海道の雪は息をフッて吹きかけると舞うくらい軽いのに、今日の雪は湿気が凄いよ。」と、ゆかさんが教えてくれた。
ゆかさんは、幼いゆきちゃんのお世話もしながら、私たちに料理を振る舞ってくれたり、何から何まで至れり尽くせり過ぎて、申し訳ないくらいだった。
ゆきちゃんは、私に抱っこされるのを全く嫌がらず、毎日抱っこするのが楽しくて愛おしくて仕方がなかった。

少し雪が積もっていたので、車に積もった雪もどうにかせねばと帰りの支度をしながら思っていたら、富樫さんが外でせっせと雪かきと、私たちの車に積もった雪も取り除いてくれているではないか。
もう、もう、何故そんなに尽くしてくれるのか!ちょっとくらい苦労させてくれ!と思ってしまうほど、富樫さんはいつでも清々しいほどに良い人だった。

「また来てよ!」
富樫さんはそう言って、車に乗り込む私たちの写真をパシャパシャと撮っていた。
玄関にはゆきちゃんを抱っこするゆかさん。
窓辺には飼い猫のコタロウとコジロウ。
素敵な家族だった。また来られるのはいつになるだろう。
でも、絶対に恩返ししないと、そう思った。

富樫家を出発して、私たちは小樽へ向かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?